142話 番外編X 森の賢者ヘスティアの回想:規格外の人族
「ん? この町に誰か入ってきたのう。 まあ、妾の所までは辿り着けんだろがな」
妾はこの森の管理者ヘスティア。
このベデンド村を拠点として精霊達の居場所を守っている。
ベデンド村は森の中央にあるが、別に存在を隠しているわけではない。
迷い人や地図を持っている者が興味本位で訪れて来る事がある。
しかし、ベデンド村に一歩でも入ると、妾の結界内に入り幻覚を見る事になる。
本来は、私の存在は勿論、精霊の存在にすら気づかずに単なる廃墟と思い直ぐに出ていく。
しかしこれは・・・
「ほう、妾の存在に気づいたのか? 最短ルートで妾の所まで進んできておるの」
妾の家に入って来たのは人族の娘が2人だった。
そのうちの一人は、妾の幻術が全く効いていなかった。
しかし、幸いな事に妾に対して敵意は無い。
この森の害になる事は無いと感覚的にわかった。
聞けば精霊を使役したいと言って来たので了承した。
何か面白い事が起こりそうな、そんな予感がしたからの。
まあ精霊の召喚魔法は教えた所で人族には扱いが難しい。
ただの魔法ですら使える人族は殆どいないというのに、自然の力を使う召喚術の習得は不可能に近い。 ただ運良く、気まぐれな精霊に懐かれた者で素質があれば、人族でも召喚術を使える者が稀にいる。
それなのにじゃ!
このユイと言う人族の少女は、精霊に懐かれていないのに召喚魔法を完璧に使いこなしてしまった。
しかも、たった1日で!
ありえない。これは本当にありえない事態だった。
精霊と話ができるエルフ族ですら、召喚魔法が使えて1人前と言われるぐらい難しい。
しかも召喚術の習得には数日かかるというのに。
ただ残念な事に、ユイに精霊は懐かなかった。
ユイも残念がっていたが、妾は別の方法を試す事を提案した。
もしかしたら、勝負に勝てなくても、強き精霊の気を引ける何かをするかもしれない、そう思ったのだ。
妾は転移魔法を使い、強き精霊達が多く住む場所に移動した。
そこで妾は精霊達に声をかけて相手をしてくれる精霊を募集した。
「へえー、ヘスティアの幻術を見破ったの?」
「面白ろそうだね? 私が行くよ~」
「そうだね、私達の手助けなしで召喚術を習得するなんて面白いかも?」
「私も出るわ」
「クスクス、じゃあ私も」
「楽しそうね、私も行こうかしら」
「うふふ、誰が選ばれても文句なしだよ~」
「では、準備が整ったら呼びかけるからよろしく頼むのじゃ」
ユイが順番を指定して来なかったから、妾の呼びかけに応じてくれた順番で呼び出す事にした。
まあ、ユイが勝つことは無いから順番なんて無意味だけどの。
ユイには黙っていたが、今回集まってくれた精霊達は全て**「上位精霊」**で、その中でもかなりの力を持つ精霊達なのだ。
そして試合が始まった。
水の精霊はウォーターボールを連続で放った。
予想通りユイは防御しつつ後退した。
「ほう、人族が無詠唱魔法を使うとは驚きじゃ」
水の精霊もビックリしておるから、後少し楽しませれば契約をしてくれるかも知れないの。
そう思った矢先、水の精霊は早くも遊ぶのを止めて勝負を決めに来た。
「もう終わらす気か? 早すぎるが仕方がないのう」
「これは人族にはどうしようも無いの、もう少し遊んでくれれば契約出来たと思ったんじゃが」
しかし、ユイは妾や精霊達の予想を覆す魔法を使った。
「なっ!?」
水精霊の使った圧倒的な水量の魔法を全て凍らせてしまった。
しかも、氷の耐性がある水の上位精霊までも凍らせて、それを一瞬で砕いてしまった。
ユイは水属性特化の魔法使いだったのか。
それにしても、本気では無いとはいえ、人族が上位精霊に勝った? ありえない。
数千年以上生きているが、こんな事は初めてじゃ。
興奮冷めやらぬまま、次の試合が始まった。
あの氷の魔法は他の上位精霊にも脅威だと悟ったのだろう、風の精霊は開始と同時に風属性の中位魔法をいきなり放った。
しかし、驚くべき事にユイも同時に同じ魔法を放っていた。
魔法同士がぶつかって魔力での押し合いが始まった。
風の精霊が少し勝っているが、ユイは魔法を維持したまま炎の魔法を混ぜてきた。
「大したものじゃ、しかしユイは水属性特化では無いのか?」
しばらく拮抗した時間が続いたが、ユイは風の中心から炎の魔法を爆発させた?
結果がわかっていたのだろう、ユイはそれと同時に防御壁を何重にも展開していた。
その誘爆でユイはHPを大きく減らしたが障壁のお陰で生き残った。
しかし対策をしなかった風の精霊は消滅し敗北した。
だが、これで皆がわかった。
まぐれの勝利では無く、ユイの異常なまでの実力が。
いつも読んでいただきありがとうございます。
私事で大変申し訳ありませんが、今後の投稿(更新)間隔に関する予定を活動報告に記載しておきます。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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