121話 番外編IX ~ジベルの回想:嘘つきな道化の最期~
俺の名はジベル。
冒険者になって10年目にして、先日やっとランクCになる事が出来た。
これで冒険者として安定して生活が出来るから、恋人に結婚を申し込むつもりだ。
その日は、仕事が早めに終わって、普段はあまり行かない場所を目的も無く歩いていた。
そんな時、前方で気配を感じたので気になって見に行った。
そこでは、少女2人が素手で組手をしながら鍛錬をしていた。
俺はそれを見て思わず心を奪われた。
二人とも基本を知らず我流で鍛えているのだろうけど、とんでもない才能を感じる動きをしていた。
俺は居ても立っても居られず、声をかけた。
当然、最初は俺の事を疑っていたが、毎日通い続けて指導をするうちに信用をしてもらえるようになった。
二人は、俺が教えた事は直ぐに吸収してモノにし、信じられないスピードで成長していった。
また俺も教える事が楽しくなり、教えれる事は全て教えた。
もしかしたら、ランクAもしくはそれ以上になるかもしれないと思える程の天賦の才を持っていた。
それが「俺の教え子」だってわかったら、俺の評価も上がるかも知れないって期待もあった。
それから約2年がたった。
この頃になると既に実力は俺より遥かに強くなっていた。
だから俺に出来る事は冒険者としての心構え等、実技以外の知識を中心に教える事が主になっていた。
そんな時、突然二人は冒険者ギルドで登録をしたと言って来た。
「また突然だな? 言ってくれれば一緒に行ったのに」
「ええ、私達もまだ、そのつもりは無かったのよ?」
「でも、突然街中で女の人に声をかけられて『冒険者にならない?』って言われたのよ」
「は? 何かまたトラブルでも起こしたのか?」
「失礼ね、何もしてないわよ」
「じゃあ、何でだ?」
「彼女が言うには、私達を見て**『ダイヤの原石を見つけたから』**って言われたのよ?」
「何だそれ?」
「彼女は冒険者ギルドの受付嬢だったけど、説得されちゃって、結局登録したの」
「!!!」
「まさか、ビオラさんか?」
「あら、知っているの?」
「ああ、王都でも有名な受付嬢だが、何でこの街にいるんだ?」
「何でも仕事で数日間、この街に滞在してるみたい」
「それで、ビオラさんが色々世話を焼いてくれるって話だから二人で登録したのよ」
あのビオラさんが二人を見出だしたのか?
しかも世話を焼く? しかし、これで確定だな、二人は最低でもランクA以上になる逸材って事だ。
これなら冒険者を引退しても、俺の「指導者」としての箔が付くな。
「そうか、彼女は王都でも有名な人だ。彼女が助力してくれるなら間違いないだろう」
「そうなんだ、わかったわ」
「ありがとう」
だが、これが大きな間違いだった。
リアとマニカはビオラが厳選した依頼を順調にこなした。
そして経験不足や、実戦の勘を養う完璧な指導の元、たった1ヶ月ちょっとでランクBにまでなった。
ランクAが見えてきた頃には、一目おかれる冒険者になっていた。
しかし、まわりから聞こえて来るのは**「ビオラが育てた冒険者」**って事だけ。
俺はその話を各地で訂正してまわった。 「彼女達を育てたのは俺だ!」と。
しかし、誰も信じてくれなかった。
俺は彼女達にも、俺が師である事を言ってくれと頼んだが、「そんな事をする必要はないでしょう?と断られた。
その頃の俺は冒険者としての限界を感じていた。
Cランクになってからと言うもの、依頼の失敗が続き、余程のPTメンバーに恵まれなければ、俺の実力でCランク冒険者としては、やっていけないとわかったからだ。
期待していた指導者としての道も閉ざされ、冒険者としてもやっていけず、食うものにも困る生活になっていた。
それから俺は、横から俺の功績を奪って行ったビオラと、恩を仇で返したリアとマニカに恨みを募らせるようになった。
そんなある日、リアとマニカは、あと数回の依頼達成(恐らく2ヵ月程)でランクAの昇級試験を受ける噂を聞いた。
俺はそれを聞いて、試験に失敗するように邪魔をする決意をした。
そして、リアが俺に好意を抱いているのは気づいていたから、今回はそれを利用する事にした。
読んでいただきありがとうございます。
基本は一週間ごとに更新するつもりです。
ただ状況によってはきりのいい所まで連発で投げるかもです。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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