117話 愛と裏切りの果てに
私はマニカ達が視界から消えるのを待って、反対方向へ歩き出した。
そして、一人ベンチに座っていた『彼』に声をかけた。
「久しぶりね? 随分と探したわよ、ジベル」
「!!」
彼は驚愕の表情で私を見た。
「リア!」
「今度は逃がさないわよ?」
「わ、わかってる」
「お前一人で俺を探していたのか?」
「ええ、そうよ」
「私は今すぐ、あなたを殺してあげたいのだけど?」
「ま、待ってくれ。ちゃんと話すから」
「ここでは、あれだから場所を移してもいいか?」
「どうぞ」
彼が先導しながら街はずれを歩いて行った。
「リア、お前はもう戦いはやめたのか? 何も武器を持っていないし、可愛い恰好をしているから」
「ええ、今は普通の女の子として生きているわよ?」
私は警戒されない為に嘘をついた。
私の言葉を聞いて、彼は「そうか」とつぶやいた。
安堵したような、値踏みするような目つき。昔と変わらない。
人通りは少なくなり、スラム街みたいな場所を更に奥へ進んだ。
「あまり聞かれたくない話だからな、場末の酒場で話そう」
そう言って入って行った建物は、酒場というより、盗賊のアジトの様な建物だった。
テーブルがたくさんあったけど、柄の悪い男たちばかりで酒臭かった。
私達は隅のテーブルに座って、彼は酒を頼んで飲んでいたけど、私は何も飲まなかった。
「それで、あなたは私にどうやって償ってくれるのかしら?」
「ああ、まずそれなんだが誤解を解かしてくれ。信じられないだろうが、あの時の俺は金が無かったから、お前を養う金を稼ぐ為に街を出ただけなんだ」
「そのわりには、一度も街へ帰ってきてないみたいだけど?」
「簡単に帰れなかったんだ」
「正直な話、汚い事にも手を染めて稼いでいたから。それにある組織に入っていたし」
「じゃあ、そのお金をもらって私は街に帰るわ」
「あ、ああ、わかっている」
「稼いだ金は全部、リアに渡す」
その時、隣で飲んでいた男が私達のテーブルに来た。
「よう、ジベル。また女に貢いでいるのか?」
「黙れ、向こうへ行け」
「どうせまた逃げられるだけだろ?」
その言葉に店内にいた男達はゲラゲラと笑い出した。
そして他の男が彼へ話しかけた。
「ジベル、いつもの所も空いてるぞ?」
「ああ、わかったから向こうへ行け」
男達は再びゲラゲラ笑いだした。
「すまんリア、こいつらは酔っぱらってるだけだから」
「ええ、気にしないわ」
まあ、でも本当の事なんでしょうね。
「そ、そうだ。 こいつらが、うるさいから移動しようか?」
そう言って彼は立ち上がって奥へ進んで行った。 私もついて行ったけど、案内された場所はカーテンだけで仕切られた扉の無い部屋だった。
カーテンで部屋の中は全く見えないけど、これだと声はまる聞こえだね。
「リア、椅子は無いが適当に座ってくれ」
部屋に入った瞬間、彼の意図が見え見えだった。部屋の中は簡易のベッドがあるだけだったから。
まあ、彼は昔から、これの事しか頭になかったからね。
私も確かめたい事があったから、素直に部屋に入ってベッドに腰かけた。
彼は私の横に腰かけて、私の肩を抱き寄せた。
「お金は、**『この後』**必ず払う。 家を買えるぐらいはあるから。な? だからいいだろ?」
私は抵抗する事無く、彼を受け入れた。
これが最後。私の未練を断ち切るための、儀式として。
それが終わると、彼は服を着ながら冷たい声で部屋の外に向かってこう言った。
「おい、こいつを売るぞ?」
「……ジベル? これがあんたの答え?」
「ああ、そうだ」
「バカが、のこのこと武器も持たずに俺らのアジトに入って来たのが運の尽きだ」
「この女は上玉だ。高く売れるぞ」
「そう……でもこれで心置きなく、あんたを殺せるわ」
「はっ、武器も持たずにこの人数を相手に何を言ってるんだ?」
彼が立ち上がって部屋を出ようとしたことろに、男達が部屋に雪崩れ込んで私に迫ってきた。
私はアイテム袋から、ユイに作ってもらった**「二刀」**を取り出した。
ザシュッ!! 先頭の男が崩れ落ちた。
「なっ!」
「やりやがったぞ! 全員でやっちまえ!」
全員が武器を持って襲い掛かってきたけど、私の敵ではなかった。
今の私は**「闘神リア」**。ただの女の子じゃない。
ものの数分で、彼以外に動ける者はいなくなった。
「ま、まってくれ~! 俺が悪かった。許してくれ~!」
私が無言で近づくと、ジベルは腰の袋から大量のお金を取り出して私に投げてきた。
「それが全財産だ! 家ぐらいは買える金額だろ? だからそれで許してくれ!」
はあ、本当にどうして彼は、こうなったのだろう。
昔はもう少しマシな嘘をついていたのに。
さらに近づいた所で、彼は隠し持っていたナイフで私を刺そうとした。
「死ねぇぇぇ!!」
「バレバレね?」
私はナイフを持つ彼の右手を斬り落とした。
ズバッ!
「ぎゃあああああああ!!」
叫びながらも私に向かって突進して来ようとしたから、更に左手首と両膝も斬り落とした。
ズバババッ!!
男はわめきちらしているけど、私は無視した。
「そのまま、苦しみながら死ねばいいわ」
私は、その建物から出て歩いて待ち合わせの場所に向かった。
冷たい風が頬を撫でる。
でも私は、自分の本当の気持ちに気づいてしまった。
私は、昔の……優しくて、人の温かさを初めて教えてくれた彼が好きだったんだ。
だから今回、アレが終わったら……彼は謝罪と求婚をしてくるかもと、心のどこかで期待していた自分がいた。
「バカね、私……」
でも、やっぱり彼は最後で、また私を裏切った。
復讐しても達成感なんて全く無かったし、彼の悪夢から解放された喜びなんてものも無かった。
けど、これで少しは前に進めるかな? ユイやマニカの元へ帰ろう。
私を本当に大切にしてくれる人たちの元へ。
そう自分に言い聞かせ、涙をぬぐって無理やり納得させた。
いつも読んでいただきありがとうございます。
私事で大変申し訳ありませんが、今後の投稿(更新)間隔に関する予定を活動報告に記載しておきます。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
最後に投稿へのモチベーションを維持する為にも、コメントや評価、ブックマークをして頂けると執筆を続ける励みになりますので、どうぞよろしくお願いします。




