106話 少女の涙と、ヒーローの条件
西側の観光も順調に楽しんだけど、西側の端の方まで来てしまっていた。
「この辺りは住宅街かな?」
「そうだね、もう少し中央側に戻ろうか」
「うん」
主要な道から外れた脇道を歩いていたら、突然10歳ぐらいの女の子が走って来て、私達の前で立ち止まった。
「ん? 何?」
マニカが女の子に声をかけたけど、下を向いて何も喋らなかった。
すると今度は男の子が走って来て女の子の手を掴んだ。
「マイ、駄目だって言っただろ。 さあ帰るぞ」
「でも・・」
男の子は私達に頭を下げた。
「ごめんなさい。この子が言った事は気にしないでください」
そう言って、女の子を連れて帰ろうとした。
何も言ってないけどね?
「待って」 リアが少し屈んで女の子に声をかけた。
「私達に何かお願いがあったのでしょう?」
「内容にもよるけど話だけなら聞いてあげるよ?」
でも慌てて男の子が断ってきた。
「いえ、本当に大丈夫です。 僕達には報酬を払うお金がありませんので」
「大丈夫よ? 話を聞くだけでお金はもらわないから」
すると、女の子はボソッと呟いた。
「お、お母さんを助けて欲しい」
そう言って、女の子は泣き出してしまった。
その文言は、私にとって絶対に無視出来ない言葉だった。
私は女の子を安心させる為に抱きしめた。
「わかった。私が何とかしてあげるから詳しく教えてくれる?」
女の子は頷いて喋りだした。
数日前に母親が目の前で連れ去られた事。
街の治安を治める騎士の支部で助けを求めたけど「調査中」から進まない事。
冒険者に助けを求めたら「報酬(お金)がいる」と言われた事。
そして昨日、東側で悪い男をやっつけていたマニカとリアを目撃した事。
それでマニカを見かけて思わず走って来たのね。
それにしても、この街の大人はクズばっかりだね。
「うん、わかった。じゃあ、先ずはその悪い奴らの場所を突き止めないとね」
「場所はわかります」
「え? そうなの?」
女の子はコクリと頷いた。 町中を探し回っていたら、母親を連れ去った男を見かけたので後をつけて行ったとの事。
危ない事をするね。 見つかったら大変だったよ?
「そっか、よく頑張ったね。でも危ないから後は大人に任せてね?」
「うん」
「お姉さんは……」
「私はユイ。冒険者で魔法使いだよ」
「ユイさん。話を聞いてくれてありがとうございます」
「でも私は報酬を払えないから」
私は頭を撫ぜてあげた。
「子供を支えるのは大人の役目、その事に報酬は求めないよ?」
「私の町では、私自身がそうやって支えてもらっていたから」
「それに悪い奴はやっつけないとね?」
「ありがとうございます。私はマイって言います」
「うん、マイちゃんね。 じゃあ、その場所を教えてくれる?」
「はい、ついて来て下さい」
私達は住宅街を30分程歩いてその場所に向かった。
「あの角を右に曲がって正面の建物です」
「わかった。じゃあ先にマイちゃんを家に送るね」
「大丈夫です、1人で帰れますから」
「ユイ!」
マニカが私に向かって警戒の声をかけた。
「マイちゃん、こっちに隠れて」
私達は物陰に隠れながら正面を確認した。
数人の男達が荷台を引きながら左側から右方向へ通り過ぎていった。
「荷台には縛られた女性がチラっと見えてたね」
「うん、でもあの状態で街の中を走って捕まらないっておかしいよね?」
「もしかして、この街の騎士や領主達がグルなのかな?」
「ありえるね」
「今、通り過ぎた集団の先頭でバンダナをしていた大男が、お母さんを連れて行った人です」
「じゃあ、やっぱり当たりだね」
「マイちゃん? 本当に一人で帰れるの?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ家で待っていて。お母さんは必ず連れて帰るから」
「はい、お願いします」
「気を付けてね」
「はい」
マイちゃんは足早に来た道を戻って行った。
いつも読んでいただきありがとうございます。
私事で大変申し訳ありませんが、今後の投稿(更新)間隔に関する予定を活動報告に記載しておきます。
また今後の展開について。R15に収まるように調整はしていますが、残酷な描写や、少しHな描写が入ってきます。この事を不快に思ったり、苦手な方はここで閉じていただき、続きを読むのは控えてください。
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