18-7. 帝国のいちばん短い日
もしかしたら、これは仕組まれたシナリオなのかも知れない。
何処の誰が、何を目的にして組んだのかは、サッパリ分からないけれど。
私は、クーデターに成功してしまった。
衝動的に勢いだけで実行して、何故こんな巨大イベントがアッサリ成功するのか?
私に天下取りの才能なんて無い。前世では、寺で焼き討ちされたしね。
理由は単純で、地下戦艦が強力過ぎたのだ。
防衛省に乗り込んで、サーバーに地下戦艦AIをインストール。
ちょっとだけとは言え、苦労したのはここまでだった。
ITインフラを手に入れた地下戦艦AIは、国内主要機関にサイバーアタックを決行。
次々にこれらを陥落し、重要データを人質にとって行った。
国立騎士隊など物理的な敵は、アルティメットクリーナーが強制クリーニング。
もっとも浄化すべき邪悪な存在は、私だと思うのだが。
正義も悪も、それは判断する者の主観次第。
地下戦艦の主観が誰に依存しているのかと言えば数子なのだから、邪悪こそが正義。
邪悪なる鉄槌を下されたのは、善良なる国民達の方だった。
しかも、ニャア様会に、ミーナ姫会が、揃いも揃ってポンコツな事に、私のクーデターを支持してしまった。
困った事に、彼らの親達は、この国の重要人物ばかりなのだ。
ついでに、雑魚騎士組合まで、そこに乗っかって来た。
ほんの数時間で神聖カワサキ帝国は私の手中に収まったのだった。
「困ったわね。国家なんて要らないんだけど」
「衝動買いしたオモチャに、すぐ飽きたみたいなノリだなー」
私のぼやきに、数子がそんな例えツッコミをするけど、まさにそんな感じ。
こんなん、思ってたんと違う。そもそも、欲しがってすらいない。
「お姉様! ついに成し遂げられましたわね!」
「親分、わやへるのう」
「いつかこういう事をやらかす人だと思ってた」
地下屋敷へ帰還すると、待っていたのは子分達の賞賛。いや、罵倒?
ちなみに、防衛省と地下屋敷を繋ぐ地下道が発見されたので、それを使って安全に帰還した。
「要らんもんなら転売すればええじゃろ?」
私の心情を察したニャアが、そんな提案をしてくれた。
「国家って、メルカリで売れるのかしら?」
「オークションの方が、いいんじゃない?」
もちろん、国家はメルカリやヤフオクで転売可能な代物ではない。
私は、出張買取を依頼した。
「あのー、一体おいくらなんでしょうか?」
買取業者は、近衛騎士隊だ。
隊長自ら屋敷まで出向いて来た。
なお、彼女達は「王女殿下は永遠なり」などとぶっこいて、未だに近衛騎士隊の名称を維持している。
「うーん。50兆円くらい?」
「はぁ…、概ね適正な価格かとは思いますが。そんな巨額、誰が出せるんですか? ちなみに、我が国の年間予算は1兆円前後です」
「えー? ガールズにゃんこクライのDVDーBOXも付けるわよ?」
「せめてブルーレイにして下さいよ。だいたい配信で観るからいいですよ」
「分かってないわね。オーディオコメンタリーは必聴なのよ?」
付録CDにも価値はあったけど、配信でも聴ける様になってしまった。
ただし、オーディオコメンタリーが楽しめるのは円盤だけなのだ。
DVD-BOXでもいいじゃん。メルカリで間違って買っちゃったのよ。
ブルーレイBOXを購入出来たから、DVDの方はもう要らないんだけど。
「だから50兆円も出せないって話なんですけど。ちゃんと聞いてます?」
「だったら千年ローンでもいいけど?」
「そんなローン、何処が監査出来るんですかね? それに、クーデターに、賛同した連中が同意しないでしょ」
買取交渉は決裂してしまった。
落としどころが見つからなかったのだ。
「ん-、合衆国ならバー、買い取ってくれるカモー?」
アオイが仲介してくれれば、それも可能かも知れないけど。
「51番目の州に組み込まれちゃうのわなー」
「俺、あのドロンパの腹みたいな国旗好きじゃないんだけどな」
「ドロンパのお腹って、むしろ東側諸国に見えない?」
「ワシは嫌いじゃないが、合衆国の国民になりたいワケではないのう」
私だけでなく、姉妹達もその案には反対だった。
他に何か、手立ては無いだろうか?
今回ばかりは、広げた風呂敷が無駄に大き過ぎる。
このままだと、世界征服しちゃいかねないんだよなー。
仕方ないので、この国を統治する事にした。
という夢を見た、っていうオチが次回あるといいなー、と思いつつ私は昼寝した。




