セナ対エール
双剣が赤く光る。エールの姿が歪む。
違う、もう目の前にいる。
「っ!」
「まじか。」
危機一髪で躱し、後ろに下がる。
遅れて大きな音が聞こえて、後ろの樹がばっさりと切れる。
切れたところはすぐに塞がっていき、赤い花が咲く。
「今のを避けられるのは、俺の勇者の名前に傷がつくな。」
「いや、俺には見えてなかった。何か来ると思ったんだ。」
「そうか、じゃあもうちょい速くするわ。」
エールは再び構えの姿勢に入る。
先手を打たなければ斬られてしまう。
「飲み込め、万物よ、滅星!」
黄色い球体を生み出し、それを投げつける。
エールはそれを瞬く間に斬り落とした。
「なんだ?あれがお前の魔法か?たいしたことないな。」
真っ二つに割れた球体は地面に落ち、斬られた断面が地面にくっつく。
地響きが鳴り始め立っていられないほどの揺れになり、俺たちは手を地面についた。
「んぐががが、がぁ!な、なんだこの魔法は!」
「これで対等だ。あれ以上の速さは対処できないからな。お前が馬鹿正直に斬ってくれて助かったよ。」
「だが、お前も俺と同じ状況じゃねえか。俺は速さだけじゃねえんだよ!」
この状況で双剣の片方を投げてきやがった。
ただ揺れているだけじゃなく、重力も加わっているので、普通動くのがきついはずなんだが、こいつに普通は通用しないってわけか。
しかも投げた剣がまっすぐ飛んでくる。
まるで意志をもっているかのように、それにこの滅星の効果を受けていないだと!?
「まずい。うわっ!」
肩を掠め、血が飛び散る。
「なんて奴だ。勇者ってのはとんでもないな。」
「まだだぞ?」
後ろに飛んでいった剣は樹の壁に当たり軌道を急に変え、こちらに再び飛んできた。
反射壁か?どうなってんだこの壁は。
鋭い剣先が俺の右足に突き刺さる。
痛みは勿論、出血も酷く、おまけに痺れも感じた。
「でも、これでお前の剣は一つだけだ。乾け、万物よ、緋星!」
赤い球体を投げつけた。
それは、俺とエールのちょうど真ん中らへんに落ち、爆発した。
とんでもない高温の熱風を浴び、俺とエールは干からびた。
俺はまた起きて、状況を確認した。
滅星は緋星によって消滅した。
足に刺さっていた剣は燃え尽き、俺の身体は再生していた。
「っがは。」
「は?」
ありえない。そんなはずは絶対にありえない。
この緋星を生き延びた?馬鹿な。
「...はぁ、流石に苦しいな。...魔王の時を...思い出すぜ。」
剣で身体を支えてはいたが、死なずに生き延びやがった。
「おいおい、こりゃとんでもないな。この緋星が破られるとは。」
連続で使ったせいで疲労が一気に押し寄せてきた。
出血のせいもあって、身体が悲鳴を上げている。
「組織に入ったからには、お前を殺さなければならない。セナ。いや、セン・ドゥ・ナージ。ナージ帝国の王子よ。歴史とともに、消え去れ。」
ぼろぼろの身体で剣を構え突っ込んできた。
俺はその剣を受けた。
心臓を一突き。
心臓が跳ねる。
「これで、終わりだ。」
一気に剣を引き抜き、これまで以上の出血をする。
俺の身体はばたりと地面に倒れ、エールは剣についた血を振り払った。
時空が割れキマリがでてくる。
「エール、まさかセナをここまで追い込むとはね。すごいよ。」
「追い込むだけじゃなく、殺しもした。魔王の時と同じようにな。」
「でもね、これはまずいかもね。僕の魔族として、いや同じ生命として君に教えてあげるよ。
見て見ろよセナの身体を。」
何?と思ったエールは俺の身体を見て驚いていた。
それもそのはず、血は止まり、身体の傷は何事もなかったかのように塞がれていた。
「それにそろそろ来るぞ。僕は巻き込まれたくないから逃げるね。エール、森林と共に永遠に眠ってくれ。じゃあね、一時だったけど楽しかったよ。」
そういってキマリは時空に帰っていった。
先ほどの緋星でまわりの樹々が枯れ、崩れていたのにエールは気づいた。
奥からリナとニェールに担がれたマリーが向かってきていた。
リナは俺が倒れているのを見て急いで駆け寄ってきた。
「お兄、これは!まずいニェール!引くよ。」
流石俺の妹、これから何をしようか気づいたようだ。
リナがニェールを呼び捨てするほどの緊急事態ということにニェールは慌てて担いでたマリーをエールの横に置き、リナと共に逃げ始めた。
何がどうなってるんだという、困惑する状況にエールは動けずにいた。
「俺は言ったよな。森林を消滅させるって。」
俺はゆっくりと立ち上がり、青い顔をしていたエールに言ってやった。
「禁忌。降臨、謁見の許しを請おう。滅べ、消えてなくなれ、万物よ、殲星の名においてこの地を包み込め。」
俺の心臓が鼓動する。俺はにっこりと最大の笑みを浮かべ禁断の言葉を唱える。
「やめて、くれ。やめろ。やめろおおおお!!」
「冥星!」
意識が吹っ飛ぶ。
暖かい何かが俺を包み込み、崩壊を始めた。




