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3話:紫苑の家

「わかった!!遙、今度紫音の家に遊びに来なよ!!」

「紫苑の家?」

「うん!!そこでならゆっくり話せるし、たくさん遊べるよ!!」

 確かに紫苑の家なら彩芽がついてくる可能性も低いし、ゆっくり話ができる。私は名案だと思い、すぐに紫苑に同意する。すると紫苑は嬉しそうに私を抱きしめながら喜んだ。

そして紫苑がいつの日にするかを考えながらぶつぶつ言っていたその時。

「ねえ、ちょっといい??」

 彩芽がやってきた。彩芽はにっこりと笑っていたが、目の奥が笑っていない感じがした。こういうときの彩芽は大抵不機嫌なときだ。私は少し怯えつつも、紫苑の後ろに隠れる。

「紫苑たちに何か用??」

「ちょっと遙を借りたいと思って!!」

「遙は物じゃないし、それに今日遙は紫苑と遊ぶ約束してるから、部外者はあっち行ってて」

「部外者なんかじゃないよ??だってあたしは遙の親友だもん!!」

 相変わらずこの二人の仲は悪そうだ。かつては仲が一番良かった二人だが、とある日、紫苑は彩芽との縁を切った。理由は、「関わっていたら自分が不幸になる」とのこと。それから彩芽は私と仲良くしようとして、今に至る。つまり紫苑と彩芽は現状仲が悪いのだ。

「親友だかなんだか知らないけど、そう思ってるのはそっちだけかもよ??」

「そんなことないよ!!遙だってあたしの事親友だって思ってるんだから!!そうでしょ遙??」

 気まずい質問が来てしまった。彩芽と私は親友、確かにかつてはそう思ってた。けど今は違う。私は彩芽が嫌いだ。しかしここで正直に嫌いと言ってしまったらあとで絶対に面倒なことになる。そう思った私は「うん」と小さくうなづいた。

「ほら!!遙だって親友だって思ってるって!!やっぱりあたしたち仲良しだよねー!!」

 彩芽は嬉しそうに私に抱きつき、紫苑に向かって仲良しさを自慢している。それを見ていた紫苑は、「うるさい!!」と大声を出し、私の手を取り、その場から走って逃げた。

 私と紫苑はそのまま走り、3階の教室前から1階にある校庭まで猛ダッシュをした。走っている途中、紫苑は少し泣いているようにも見えた。

 その後、授業開始のチャイムが鳴り、私と紫苑は3階の教室に戻った。すると彩芽は私を見るなり睨んできて、私は背筋が凍った。

数日後、私は少しソワソワしていた。なぜなら今日は、学校が終わった後に紫苑の家に遊びに行けるからだ。友達の家に遊びに行った事がなかった私は、どんな感じなのだろうかとワクワクしていた。楽しみがあるからだろうか、いつも吐くほど嫌な彩芽のちょっかいもあまり苦ではなく、そのまま学校が終わり、私は紫苑に連れられて紫苑の家に遊びにきた。

「ほら、上がって!!」

「お、お邪魔します……」

「緊張しないで??遙の家もこんな感じでしょ??」

 そう言われて乗せられたのは自家製エレベーターだった。普通エレベーターは家にない。エレベーターを降りた先には執事さんがいて、まるで漫画に出てくるかのような振る舞いを見せてくれた。

「紫苑って、お金持ちだったんだ」

「んー??そうでもないよ、紫苑の家ってそんなに変?」

「変っていうか、なんか……豪華」

「えー本当に??紫苑は普通だと思うけどなー」

 そう話しながら、私は紫苑の部屋に連れられた。紫苑の部屋もまたお金持ちそのもので、大きいぬいぐるみがたくさんあるゾーンや、机にはデスクトップパソコンがあった。おまけにテレビと紫苑の部屋専用のトイレもあり、私は思わず息を呑む。

「さてと、それじゃあ始めようか!!」

 そう言って紫苑はお盆に乗せたクッキーとオレンジジュースを持ってきた。

「これから極秘会議を始めます!!内容は彩芽について!!」

 紫苑は腕組みをして彩芽のムカつくところを次々と話し出す。その中には、今まで私がされたような事もあった。そしてしばらく紫苑のターンが続き、紫苑は一息ついた。

「ふう、話に出すだけで疲れてくるんだよねあいつ。それじゃ、次は遙の番だよ!!」

「え??」

「遙が今まで彩芽にされて嫌だったことを話してみて!!」

今までされたことは数えられないほど多いはずなのに、いざ話してみてと言われると中々出てこない。私が眉間に皺を寄せて考えてしばらくした頃、ようやく1つ出てきた。

「ちょうど昨日のことでね、私は彩芽とじゃんけんに負けた方が勝った方のいうことを聞くっていうゲームをやったんだけど……」

「うわ何その趣味悪いゲーム、紫苑嫌な予感しかしない」

「うん当たり、その時に私がじゃんけんで負けて、言うことを聞かされてたんだけど、洋服のデザインを100枚書いてって言われたの」

「えぇ!?それ書いたの!?」

 紫苑は目を丸くしながらもまっすぐ私の目を見て真剣に私の話を聞いている。

「うん、でも目の前でやっぱりいらないって言われて、今も私が持ってるの」

 その言葉を聞いた瞬間、紫苑は大きなため息をついて、「やっぱりね」と言った。そして私の両肩に手を置き、真剣な眼差しで私を見て言った。

「遙、やっぱりあいつは一緒にいていい気しないでしょ??だからもう離れなって」

 確かに紫苑のいう通り、彩芽と一緒にいていい気はしない。しかしこちらが避け続けても向こうから寄ってくるからどうしようもない。私の中で色々面倒くさいものが渦巻いている為、中々彩芽から離れられないのも事実。私は思わず頭を抱えた。すると紫苑は私に勢いよく抱きついてきた。

「遙が自分でどうにかできないって思ったら、紫苑が助けてあげるから!!だから紫苑をもっと頼って!!」

 そう言っていた紫苑の声はまっすぐで、とてもやる気に満ちていた。私はとても頼もしく感じて彩芽のせいで堪え衰えた表情筋がちゃんと本心通り動いたため、思わずフニャッと一瞬笑顔になる。紫苑がいればなんでも大丈夫になるような気がしたからだ。

 その後私と紫苑は家の中で暴れ回り、紫苑と一緒に紫苑のお母さんに少し注意されて、最終的にはお菓子をもらって家に帰った。帰り道、私はあまりにも今日が充実しすぎて、明日が少し恐ろしく感じたが、それは明日になってみないとわからないと自分に言い聞かせた。

次の日、いつも通り学校に登校すると、いつも通り彩芽が寄ってきた。しかし今日はいつもと少し違い、彩芽の顔は眉間に皺がよっていた。

「ねえ遙、昨日紫苑の家に遊びに行ったんだって??」

「……うん」

「それで??」

「……普通に紫苑の家でお菓子食べながら話したり、ゲームで遊んだりした」

 私は咄嗟に思いついた嘘でその場を凌ぐ。昨日は殆ど悪口大会をしていて、話題の主役が彩芽だったなんて口が裂けても言えない。このことに関しては金輪際口にすることはないだろう。紫苑と話さない限り、絶対墓場まで持っていくと決めた話題だ。そんなことを考えながら目を逸らしていると、彩芽は不機嫌そうな声で言った。

「いいなー……じゃあ今度はあたしの番だね!!」

「え??」

「今度遙うちに遊びにきてよ!!面白いことやろう!!」

 何かと思ったら家に誘われた。嫌いな人の家に遊びに行くなんて、この上なく嫌だ。しかしここで断ったらあとで絶対に面倒くさいことになる。「どうして紫苑の家に遊びに行くのにうちには来ないの?」などと言われたら面倒だ。

「わかった、遊びに行く」

「本当!?やったぁー!!」

 彩芽はその場で跳ね回ったり一回転したりと、全力で喜びを表現している。私が我慢すれば全てが平和で終わる、そう感じた。

〜4話の宣伝〜

どもども、ろったりかです♪

紫苑の家は何やらお金持ちの予感がしましたね!

しかし次回は不穏ですよぉ?どうやら遙と彩芽が喧嘩をしてしまったようです…

ぜひその目でご覧ください!

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