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2話:悪魔の遊び

 私も授業の準備に向かおうと、重い足を引きずって教室に戻る。教室に戻るとすぐに彩芽が少し強張った顔で寄ってきた。

「何を話してたの??」

「……紫苑が私と同じクラスになれなくて寂しいって話」

「ふーん……」

私は咄嗟に嘘をついた。彩芽本人にさっきの話をするなんて死んでもごめんだ。しかしその嘘に気が付かなかったのか、彩芽は強張った顔がいつもの笑顔に戻り、「そっか」と言い残しスキップで授業に向かって行く。その言葉で「ああ、今日からまた始まるのか」と思い、私の心はズーンと重くなった。

 中休み、今日私の学年は校庭と教室で遊べる日だ。私は校庭で遊ぼうと教室を出ようとした。そこで、彩芽に呼び止められた。

「ねえ遙、あたしね!!すごく面白いゲームを思いついたんだ!!」

「ゲーム??」

「うん!!じゃんけんをして、負けた方は勝った方の言うことを一日中聞くの!!まさに親友にしかできない遊び!」

 正直やりたくなかったが、私に断ると言う選択肢はなかったため、私は承諾し、じゃんけんをした。

 結果は彩芽がパーで、私がグーだった。最悪だ。ただでさえいつも言うことを聞いていて碌な事がないのに、強制的に聞かなければいけない状況になってしまった。目の前で彩芽は嬉しそうにその場で飛び跳ね、私の目をキラキラした目で見つめる。

「じゃあ遙は今から今日一日中、私の召使ね!!」

 私は小さく「うん」とうなづいたが、内心ではものすごく嫌だ。なぜ嫌いな人の言うことを聞かなければならないのだろうかと少しイラつきながら、表では笑顔を作る。

「じゃあまずはー……私の国語の宿題やっておいて!!」

 そう言って渡されたのは読書感想文の宿題だった。作文用紙2枚にびっしりと書かないといけない宿題だ。正直私は文章を書くのは苦手ではないが、彩芽に頼まれたこと自体が嫌で、やる気が起きない。そもそも宿題は自分でやるべきだと私は思う。

「でも、宿題は自分でやるから意味があるものだし、流石にこれは……」

「いいの!!一回くらいじゃ何も変わらないって!」

「でも……」

「私たち親友でしょ?これくらいのことはやってカバーしていかないと!!でしょ??」

 彩芽の押しに負け、私は彩芽の席に座って読書感想文を書き出した。本は彩芽のお気に入りの本である「友達と親友」で書いてくれと言われた。この本は彩芽が昔から好きだと言っている絵本で、友達同士の二人が喧嘩をして、仲直りして親友になるという、至って普通の話だ。彩芽曰く、この本で世界を救えるらしい。

 私はスラスラと読書感想文を書き進める。昔彩芽におすすめされて読んだ事がある本だからか、行き詰まる事なく、中休みの時間を全て使って終わらせた。

 次に彩芽が命令してきたのは4時間目の途中だった。彩芽と席が遠い私は、流石に授業中にはこないだろうと思っていた。しかし、グループワークの時に彩芽がズカズカとやってきて、何一つ気にしてなさそうな顔で命令をした。

「次の命令は、洋服の組み合わせを100種類描いて!!期限は今日帰るまで!!」

 2個目でとんでもないお題が来た。洋服を100種類も書くなんて、そんなの今日中には無理だ。だがしかし、ゲームのルール上断ることはできない。私は「わかった」といい、そのまま即座に取り掛かる。授業中でも構わない。そうでもしないと終わらないからだ。そうして私はそこからずーっと洋服を考えてイラストとして書き起こした。給食中も、昼休みも、5時間目中も、6時間目中も。時間の合間を縫って描いた。だんだん適当になってきた気がするがまあいい。目標は100枚描くことで、質に関しては何も言われていないからいいのだ。

 そして帰りの会が終わった後、彩芽がルンルンしながら寄ってきた。

「遙、終わった??」

「ごめん、まだ終わってない……」

 手元には描き終えた50枚程度の紙がある。自分では結構頑張った方だがこれでもまだ半分だ。先が長いと思いつつも私は彩芽と目を合わせずに描き続ける。

「ねえ帰ろう、その期限は月曜日でいいからさ!!」

 彩芽は私の鉛筆を握っている手に手を被せてそう言った。期限が伸びたなら、今日の夜描けばいいかと思い、私は帰る支度を始める。しかし帰るのも気がひける。どうせまた彩芽の自慢話に付き合わされるからだ。前に一度だけ、それで帰るのが遅くなり、親に怒られたこともあった。そんな事がもうないように、キリのいいところで抜け出したいものだが、それが意外と難しい。

 そんなことを考えながら片付けを終わらせ、私と彩芽は教室を出た。そして案の定、下校途中にある公園に連行され、自慢話を1時間ほど聞かされて、家に帰った。


 週明けの月曜日、私は夜中まで描いていた洋服のデザインの紙100枚を彩芽に渡す。彩芽は少し目を輝かせた後、「ありがとう」と言っていた。私はその言葉が嬉しくて、夜中まで頑張った甲斐があったと思った。しかし彩芽は少しの間をおいて、紙100枚を私に渡してきた。私が何事かわからず、キョトンとしていると、彩芽はにっこりしてこう言った。

「……やっぱりいらない、別に使い道ないし!!」

 キーンと耳鳴りが聞こえた。それと同時に、私は理解ができなかった。人に描かせたものを目の前でいらないと切り捨てる彩芽は、果たして人の心があるのだろうか。切り捨てられた私の心は、一瞬で空っぽな気持ちになった。

 彩芽は100枚の紙切れを私に渡し、「持ってて」と言った。使い道がないのなら捨てればいいだろうと思ったが、私は「わかった」と言い、紙切れを受け取り渋々ランドセルにしまった。

「遙!!」

 そんなことをしていたところへ、紫苑がやって来た。紫苑は彩芽を見て睨むと、私を彩芽と距離を置かせ、こう言った。

「今日は私が遙と遊ぶ約束をしてるの!!だから近寄らないで!!」

 そんな約束をした覚えがない私は思わず紫苑の顔を見る。紫苑は何やら目配せをしながら、私に「約束、金曜日にしたでしょ??」と言う。私はとりあえず「うん」と小さくうなづき、様子を見ることにした。すると彩芽は冷たい顔になり、静かにその場から去っていった。

「遙、大丈夫??また何かされてた??」

「えっ、なんでわかるの??」

「……顔に書いてある」

「そっかぁ」

 遙は私の長袖の服を捲り上げ、何かを確認した後、真剣な顔つきになった。

「遙、嫌なことは嫌だって言わないと、相手もわからないよ??」

 私は彩芽に頼まれるあらゆる事が嫌だ、そんなの自分が一番わかっている。だがしかし、私に断ると言う文字はない。嫌なことは断ればいいと周りからは言われるが、私の本能はそれを決して許さない。

「遙はもう少し、思ったことを言うようにしてみたら??」

「思ったこと??」

「うん、そしたら嫌だって思った時に嫌だって言えるようになるんじゃない??」

 紫苑は私の目を見て話している。おそらく本気で私のことを心配してくれているのだろう。だが私の中にある本能がそれらの行動全てを許さない。そんなことを考えて俯いていると、紫苑は両手で私の顔を上げてにっこりと笑った。

「わかった!!遙、今度紫音の家に遊びに来なよ!!」

「紫苑の家??」

「うん!!そこでならゆっくり話せるし、たくさん遊べるよ!!」

 確かに紫苑の家なら彩芽がついてくる可能性も低いし、ゆっくり話ができる。私は名案だと思い、すぐに紫苑に同意する。すると紫苑は嬉しそうに私を抱きしめながら喜んだ。

〜3話の宣伝〜

どもども、ろったりかです♪

何やら遙が紫苑の家に遊びに行くようですね?

紫苑の家は一体どんな感じなんでしょうかね〜?

ぜひその目でご覧ください!

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