22話:逃走と再び
「彩芽ー」
「この声……遙、ちょっと隠れて待ってて」
私は訳もわからずタンスに入れられ、扉を閉められた。今の声は誰の声かわからなかった。廊下の方から聞こえたのと、女性の声だからおそらく彩芽のお母さんだろう。そんなことを考えながら、私はタンスに隠れて息を潜める。
どれくらい経ったのだろうか、彩芽はいまだに戻ってこない。私は彩芽に騙されているのではないかと思い、少しずつイライラしてくる。そして私はついにタンスから出て、彩芽の部屋からこっそり抜け出す。そして暗い廊下をつま先歩きで進み、リビングらしき扉の目の前に来た。私は扉を少し開けて、様子を伺う。するといきなり怒気の入った声が聞こえてくる。
「呼んだらすぐくるように言ってるでしょう!?」
「ご、ごめんなさい……」
「謝るくらいなら行動してよ!!前から言っているでしょう!?」
隙間から見える光景に私は目を疑った。なぜなら彩芽が彩芽のお母さんらしき人に怒られて物を投げつけられていて、彩芽は俯いて泣きながら謝り続けているからだ。私は驚いて扉を完全に開いてしまい、つい彩芽のお母さんと目があってしまった。
「……あら、こんにちは。彩芽のお友達??」
「あ、こ、こんにちは……」
「遙!?なんで出てきて……」
彩芽が私の方に駆け寄ろうとした次の瞬間、彩芽のお母さんが彩芽の髪を勢いよく掴み、怒鳴り出した。
「人を家に呼ぶなって言ったでしょう!?なんでママの言うことが聞けないの!?」
「い、痛い……!!ご、ごめんなさい……許して……許してください……!!」
彩芽が泣きながら謝っている姿を見て、私は思わず後退りする。そして彩芽のお母さんは、手を大きく上げて、叫んだ。
「あんたさえ!!あんたさえいなければ!!私は!!」
私は気がつけば体が先に動いていて、彩芽のお母さんを突き飛ばしていた。すると彩芽のお母さんは私の方をすごい形相で睨んでくる。
「そうよね、あなたは彩芽の味方よね……だから邪魔してくるのよね……」
「え、あ……」
「やめて!!遥には手を出さないで!!」
そういうと彩芽は私の前に立ち、私を守れる位置に立ち上がる。すると彩芽のお母さんは割れたお皿のかけらを持って、こう言った。
「どの口が言ってんのよ!!」
そう言って彩芽のお母さんはこちらにすごい勢いで突っ込んでくる。私と彩芽は驚いて咄嗟にリビングから出て扉の鍵を閉める。すると彩芽は「入り口に走って!!」と言い、彩芽の部屋に走って行った。私は急いで入り口に向かう。すると彩芽が私の荷物を持ってきてくれた。
「遙!!走って帰って!!早く!!」
「でも、彩芽は!?」
「あたしのことはいいから!!いいから走って!!」
そう言われた私は玄関の外に追いやられ、扉を閉められてしまった。私はどうしていいかわからず、がむしゃらに走って家に帰った。家に帰ってからも、私は彩芽のことが心配で仕方がなかった。
次の日、彩芽は学校に来なかった。紫苑となっちゃんはとても喜んでいたが、私はあまり嬉しくなかった。それどころか私は彩芽のことが心配で仕方がなかった。それを見かねた紫苑となっちゃんは何かあったのではないかと、私のことを三雲先生のいるカウンセリング室に連れて行く。そこで私は昨日あったことを全て話す。すると三雲先生は真剣な顔つきになり、「教えてくれてありがとう」と感謝された。
1月21日の朝、今日は土曜日授業で授業参観だ。あれからの彩芽はというと、顔に傷があるものの、学校では相変わらず私の元に寄ってくる。私はそんな彩芽を見て少し安心しつつも、相変わらず面倒臭いと感じていた。しかし今日の彩芽はいつもとは少し違い、あまり元気がなかった。
「遥の家はパパとかママが見にくるの??」
「うん、確かお母さんが来るって言ってた」
「そっか、いいなー」
話を詳しく聞くと、彩芽の両親は小さい頃は来てくれていたものの、最近はもう来なくなってしまったそうだ。個人的には、この間あった彩芽のお母さんの印象が強すぎて、暴力を振るう毒親としか考えていない。そのため来ない方がいいのでは、と考えるが、彩芽はどうやら違うらしい。
しばらくして朝の会が終わり、1時間目が始まる。始まりと同時にクラスメイトの親がゾロゾロと教室に入ってきた。今日の1時間目の授業は、国語の作文の発表だ。つまり我が子の作品を聞こうと、みんなやってきたのだろう。もちろん私のお母さんもいる。普段はいないお母さんが見にきてると考えると、少し緊張してくる。しかし発表は特に何事もなく、平和に終わった。彩芽となっちゃんも、ちゃんと書いたことを緊張せず読んでいた。
中休み中、私となっちゃんが話をしていると、彩芽は嬉しそうにこちらに駆け寄ってきた。
「見て!!ママが来てくれたの!!」
そう言って彩芽の指差す方には彩芽のお母さんが他のお母さんたちと楽しそうに話をしている。彩芽のかつての話だと、彩芽に興味がないと言っていたが、なぜ来たのだろうか。不思議に思っていると、彩芽が私に「ちょっと協力して!!」と言われ、私が「何を??」と言うと彩芽は教室で談笑しているお母さんたちのところへ行った。すると彩芽は急にしゅんとした顔になり、こう言った。
「あの、助けてください……」
私が訳もわからずその場に立ち尽くしてると、彩芽は腕をさすって、話を続ける。
「あの子が、遙が……私のことを陰で……」
彩芽は泣き顔になってこちらを見ている。それと同時に親御さんたちも信じられないと言う顔でこちらを見てきた。私は咄嗟にその場に行く。
「違います!!私はそんなことしてないです!!」
私は必死に自分が無実であることを話すが、親御さんたちは「じゃあ、このアザはなんなの……??」と聞く耳をもってくれない。まただ。かつてのあの時と同じ状況で耳鳴りが聞こえる。それと同時に体が震え出す。怖い。あの時とまた同じで、親たちに変な噂を流されては、そこから子供に噂がいき、また同じ状況になってしまう。私が恐怖で立ち尽くしていると、親御さんの子供がなっちゃんと一緒に複数人やってきた。
「お母さんどうしたの??」
「え、いや、その……」
「んー??遙ちゃん、何があったか知ってる??」
「あ……彩芽が、また、噂を流そうと……」
そういうと親御さんの子供たちは一瞬で強張った顔になる。私は終わったと思い、思わず俯く。そしてポロポロと涙がこぼれ落ちる。
〜23話の宣伝〜
どもども、ろったりかです♪
おやおや、遙はまた同じことを繰り返しそうになってますねぇ
これはまた噂が回ってしまうのでしょうか……?
ぜひその目でご覧ください!




