21話:彩芽の家庭事情
私は感極まって思わず泣きながら紫苑となっちゃんに抱きつく。すると2人は私のことを優しく抱き返してくれた。
その後、三雲先生と紫苑となっちゃんの3人で協力して、私を守ってくれるらしい。それと同時に、私が本心を彩芽に伝えることで、彩芽はそのうち私から離れていくだろうという作戦になった。
12月15日の昼休み、私はとあることを考えていた。それは彩芽が今のような感じになってしまった理由についてだ。彩芽と私は小学3年生までは仲が良かった。それまでは私のことをパシリになんかせずに、普通の友達として接してくれていた。覚えているのは小学4年生の春、同じクラスになった彩芽は私のことを親友だと明かしてくれた。その時私も、当時は仲が良かったため、私も親友だと思っていることを明かした。おかしくなったのはそこからだろうか。だがしかし、これだけでは説明がつかない。そんなことを考えていたそんな時。
「平井さん、今ちょっといいですか??」
三雲先生がやってきた。どうやら大切な話があるらしく、私をカウンセリング室に招き入れ、話し出した。
「彩芽さんのことなのですが、今の彩芽さんになった原因が、もしかしたらご家庭にあるかもしれないです」
「彩芽の家??」
「はい、担任の先生から話を聞く限り、彩芽さんのご両親は彩芽さんに関心がない様子で、担任の先生も困り果てているらしいので……」
これが正しいのかどうかは彩芽本人に聞いてみるしかないと思い、私はカウンセリング室を勢いよく飛び出して、教室に戻る。教室に戻ると彩芽が一人で窓の外を眺めていた。私は即座に彩芽の元に駆け寄る。
「ねえ彩芽、聞きたいことがあるんだけど……」
「うん??なあに??」
「彩芽のお父さんとお母さんって、どんな人??」
「……」
彩芽の表情が曇り始める。私は何か聞いてはいけないことを聞いてしまった気がして少し怖くなる。しかしここで私が折れてしまったら、もうきっとタイミング的にこの事を聞ける機会はなくなる。もし昔の彩芽に何かあって、今の彩芽になっているのなら、原因は確実に彩芽のお父さんとお母さんにある。私は彩芽の曇った顔を見て確信した。
「……ちょっと、ここじゃ話しにくいから、階段行ってもいい??」
「うん、いいよ」
そう言って私と彩芽は屋上に続く階段のところへ向かう。相変わらずここは人気が全くなく、静まり返っていた。
「……私、パパとはもう2年くらい会ってないの」
「なんで?」
「離婚したから、あたしのママと」
私は結構聞いてはいけないことを本格的に聞いてしまったのではと少し不安になる。だが彩芽は話し続ける。
「あたしが小学3年生の冬頃から、パパとママは喧嘩ばっかりになったの。しかも喧嘩の原因は毎回あたし」
「なんで、彩芽が原因で喧嘩してたの??」
「……あたしの家、お金なくてさ……あたしが学校行くので精一杯だったの。だからその事で毎回喧嘩してて、あたしが小学4年生に上がる頃に、パパとママは離婚したんだ」
「それで……そのあとはどうしたの??」
「ママがあたしのためにお金を稼いでくれるようになったの。でもその分、ママとの時間は無くなってくし、ママはお金に執着するようになっちゃって……その結果、あたしには見向きもしなくなった」
「……」
驚きだ。彩芽にそんな過去があったなんて、普段の彩芽からじゃ絶対に考えられないものだった。だんだん話が重くなってきたからか、彩芽の歩き回っていた足が止まっている。
「……だから遙が親友になってくれて、あたしすごく嬉しかったの!!そうすればあたしは一人じゃないし!!」
なんだか複雑な気持ちになる。果たして私より辛い状況に置かれている彩芽を突き放していいのだろうか。彩芽も少し前の私と同じで、私意外の誰にも頼れない状況だということだ。私は思わず頭を抱える。
「……ごめんね、ちょっと難しい話になっちゃった」
そう言って彩芽はトボトボと教室に戻って行った。私はただ、そんな彩芽の背中を見てることしかできなかった。
帰りの会が終わったあと、私は再びカウンセリング室に行き、彩芽の状況を全て三雲先生に話した。すると三雲先生は納得した表情で、こう言った。
「なるほど、だから彩芽さんはこんなにも平井さんに執着していたのですね」
「先生、私……どうしたらいいかな??」
「どうとは??」
「だって、こんなに辛い状況にいる彩芽を放っておくなんて、私にはできないよ……」
三雲先生は私のその言葉を聞いて、穏やかな顔をして頭を撫でてくれた。しかしすぐに真剣な顔つきに変わり、こう言った。
「優しさはとても大きな武器ですが、優しいだけが全てじゃないんですよ。それに彩芽さんは知らなければならない、今まで平井さんにどんなことをしてきたのかを」
私は理解できなかった。辛い人を放っておくことなんて、私にはできない。辛い人を見ていると、自分まで辛くなってくるからだ。しかし私は三雲先生の真剣な表情に押し負け、言うことを聞くしかなかった。
数日後、私は彩芽に呼ばれて彩芽の家に来ていた。正直嫌だったが、彩芽の家庭内状況が本当かどうかを確かめるいい機会だと思ったため、快く承諾したのだ。彩芽はというと、とても嬉しそうにスキップしている。そして彩芽の家の前に着くと、彩芽はシーッという合図をした。
「遙準備はいい??家に入ったら、喋っちゃだめ。それと入ってすぐに、私の言った場所に向かってね」
「わかった」
そう言って彩芽は家の扉を開ける。
「ただいまー」
彩芽は私に目配せで、家に入るように指示する。そして私は彩芽に言われた場所に急いで向かう。入ってすぐの右の扉、そこに彩芽の部屋がある。そこに行くまでは息を止めて、静かに小走りをする。そして部屋について振り返ると、彩芽が小声で「待ってて」と言い、扉が閉まった。私はひたすら静かに隠れていた。しばらくすると、彩芽がゲーム機とお菓子とジュースを持って部屋に入ってきた。
「大丈夫、親は寝てるみたい」
そう言って彩芽はゲーム機のコントローラーを私に渡す。そして彩芽はゲームを起動し、設定を始める。私はというと正直そわそわしていた。嫌いな人の家に遊びにきていると言う点は最悪だが、友達の家に遊びに行く機会が、紫苑のところ以外では初めてだったため、何が起きるか楽しみだったのだ。
「このゲームを遊ぶの、初めて??」
私はゲーム自体あまりやったことがないため小さく頷く。すると彩芽は自信満々な表情でジュースを手渡してきた。
「任せて!!あたし、このゲーム得意だから!!教えてあげる!!」
そう言って私と彩芽はゲームをし始めた。
ゲームをし始めてからしばらく経った頃、私と彩芽はゲームに熱中していた。とある声がするまでは。
「彩芽ー」
「この声……遙、ちょっと隠れて待ってて」
私は訳もわからずタンスに入れられ、扉を閉められた。今の声は誰の声かわからなかった。廊下の方から聞こえたのと、女性の声だからおそらく彩芽のお母さんだろう。そんなことを考えながら、私はタンスに隠れて息を潜める。
〜22話の宣伝〜
どもども、ろったりかです♪
彩芽のお母さん!?子が子ですから、親は一体どんな人なのでしょうね……
次回は授業参観があるっぽいですよぉ?
ぜひその目でご覧ください!




