第24話 ちげぇよママとの純愛だよ
「ん~~! 映画楽しかったね理恵さん」
「え……ええ、そうね」
劇場で2時間ほど座っていて固まった身体をストレッチしながらショッピングモールを歩いているが、理恵さんの動きはロボットみたいにギクシャクしていた。
「さ~て。ちょうど夕飯時の時間だから、ご飯でも食べて行こうか。さっき観た映画の感想でも話しながら」
映画を観終わった後の記憶がまだはっきしている間に、感想を言い交すのが最高なんだよな。
面白い映画だったらもちろん盛り上がるし、最低につまんない映画だったとしても、それはそれで作品や監督への悪口で盛り上がれるし。
「えっと、その……清彦君。とっても言いづらいんだけど……」
モジモジしながら理恵さんんが、まるで親に説教を受ける直前の子供のように、俺の方をおずおずと見上げる。
「私……。さっきの映画、全然頭に入ってこなくて」
「そうなの? そんなにつまらなかった?」
はて?
そもそも観た映画は、理恵さんセレクトの恋愛映画で、結構面白かったんだけどな。
「そうじゃなくて、その……。清彦君に手を握られてたり、ポップコーンをアーンしてもらったりしてたので気が気じゃなくて……」
ああ、そういう事か。
まったく。
「じゃあ、隣の席でちょっかい出してた俺のせいだね。ゴメンね理恵さん」
「そ、そんな! むしろ、とっても参考になったというか……本当に、ごちそうさまでした!」
ごちそうさまって、まだ食事行ってないんだけどな……。
ああ、ポップコーンとジュースをおごったからかな?
そういや、何のオーダーもしてないのに店員さんが出してきたから、両方ともポップコーンが塩味だったんだよな。
まぁ店員さん鼻血出してたから仕方ないか。
「さて。じゃあ、ご飯を食べに」
「あれ? 大将じゃん。こんな所で何してんの?」
「ん? ああ、慶喜か。って随分と大所帯だな」
後方から声を掛けられて振り向くと、そこには1年2組男子の慶喜がいた。
周りには女子生徒が5名ほど慶喜を囲んでいて、一団となっている。
恐らくは2組の女子達だろう。
「これが普通らしいっすよ。男子の外出時は」
そう言って慶喜は苦笑した後に、怪訝そうな目を向ける。
「えっと……そっちの妙齢の女性は?」
「……ん? 見ての通りママだが?」
当初、俺はそうやってしらばっくれようとした。
だが。
「え? いや……。大将のママって……あれ?」
そう言って、慶喜は俺の顔と理恵さんを何度も交互に見やり、首を傾げる。
あ! そう言えば、慶喜にはカノジョがいる事を、体育の時間に仄めかしてたんだった。
となると、慶喜には話しておいた方がいいか。
「ちょっと慶喜こっち来い」
「なんだよ大将」
「男同士の話があるから」
そう言いながら、俺は慶喜を2組の女子たちから少し離れた所まで引っ張っていく。
2組の女子たちは少し心配そうな表情を見せるが、こちらには何も言ってこない。
「実はさ。あの人が俺のカノジョなんだよ」
「うぇ!?」
「まぁ、やっぱり驚くよな」
「え……どこで知り合ったんだ」
「幼馴染のお母さんだよ」
「って事は、綾乃……いや、早見さんのお母さんって事か⁉」
「ああ、そうだよ」
あれ?
そういや慶喜に、綾乃の事って紹介したんだっけ?
まぁ、綾乃は1組でボスみたいな立ち位置だから目立ってて、他クラスの慶喜も知ってるのかな。
「それって、娘だけじゃなくお母さん食いの親子丼まで果たしたって事か⁉ 性豪すぎるだろ」
「ちげぇよママとの純愛だよ。あと親子丼とか言うな」
まったく、理恵さんの事を綾乃のおまけみたいに言いやがって。
親子丼で一番のメインは、卵じゃなくて鶏肉の方だろが。
そして、俺はついこの間まで中学生だった未成年者を抱くなんて考えてない。
親子丼なんて以ての外だ。
「な、なんで。わざわざ母親キャラ何かを……」
「だって、大人のママが自分に甘えてくるのって可愛いじゃん」
まぁ、こんな事で動揺しているような青二才には、ママの良さ何て分からんだろうがな。
「ちょ……ちょっと考えを整理する必要があるな……。みんな、悪いけど合同デートはまた今度に……」
「「「えええええ⁉」」」
急に体調を崩したのか、頭を押さえながら慶喜が、護衛の女子たちに告げると、一斉に彼女たちから残念そうな声が上がった。
だが、慶喜はその後フラフラしながら、その場を後にして行った。
「バカな……なぜ……。イージールートだったはずなのに、なぜ……」
と、何やらブツブツと独り言をつぶやいていたが、意味はよく分からなかった。
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