第18話:某日、中間地点の駅近く、カフェにて_2
「私は割と、こう、オカルト的なものは信じるタイプなんですよね。だから、これが神様の天罰だと言うなら、それはそうかもしれないなって信じると思います」
私は素直にそう返した。
「なので、神様に祈った結果……というのは強ち間違っていないんじゃないかな、と」
「本当に、そう思いますか?」
なーこさんは、不安そうな顔をしている。
「うーん。偶然にしちゃあちょっと出来過ぎですよね? 良いことも起こっているし、悪いことも起こっていて、でもそれって、そんなに頻発するようなものじゃないと思っています。どっちも」
「そう思いますよね。私が神様に祈った結果か、それとも怖いくらいの偶然が重なった結果か……どちらかですよね?」
「……えーっと」
私は悩んだ。
だって、残る可能性を、私はひとつしか思いつかない。
……もし。これが人為的に起こされた結果だとしたら。断然そっちのほうが怖いじゃないか――と。
「なーこさんが言いたいのは、誰かが何かしら手を下したんじゃないか……って可能性ですよね?」
「……はい」
当たりだった。
リスナーからも同じような意見はあったし、私もその線は視野に入れている。
「もしこれが全部、人の手によって起こされたものだとしたら、そっちのほうが怖くないですか?」
私がそう言うと、なーこさんは泣きそうな顔をした。
決して責めているわけじゃないのだが、今の彼女にとっては、少し言葉が強かったかもしれない。
彼女を不安にさせないよう、私はゆっくりと、丁寧に話をするよう努めた。
「もし、犯人がいるとしたら。すべての出来事に対して、間接的にでも直接的にでも関わった人物がいて、その人物は野放しになってるってことですよね。 やられた側が、それだけ恨まれていたっていう怖さももちろんありますけど」
「そういうことになりますね」
確かにこの可能性は捨てきれない。
今までの件は偶然起こった出来事というよりは『たまたま相手に恨みを持つ人間が他にもいて、その人がなーこさんが悩んでいる間に行動に移していった』というリスナーからの意見もある。
その意見を見たときは、何だか背中が寒くなった。人間って怖いなと思う反面、それだけ恨まれる相手がいるなんて、今までいったいどんな人生を送ってきたというのだろう、と。
でも言われてみれば、その可能性は大いにあることに気が付いた。オカルトを信じるぶん、そっち寄りの考えしかしてこなかったから、私にとってまったく新しい視点だった。
「なーこさんは、どう思われているんですか?」
「私ですか?」
驚いている。そんなに珍しい質問だっただろうか。
「はい。あ、いえ、最初は100%神様説推してるのかなと思ったんですけど。でも、それだったらその一択だけで、他の選択肢作らないんじゃないかなとも思って」
私の言葉を聞いて、なーこさんは視線を外した。
彼女なりに、思うところがあるのだろうと、私は思っていた。だから遠慮なく、私はそのまま話を続ける。
「今、神様と、本当に偶然と、人為的のみっつの選択肢がありますよね? 偶然か神様かのどちらかを念押しするように、さっき私に聞いたじゃないですか。だけどそれって、裏を返せば『他の選択肢もあるけど、それはあんまり候補に入れたくないんです。だからこのふたつのどちらかを一緒に推してください』って言っているように聞こえて」
私は思ったことを、そのままなーこさんにぶつけた。
きっと、リスナーが聞いていたら同じ質問が来るだろうし、私も配信中だったら率先して取り上げていたと思う。
「そう、ですか」
「……思い当たる節が、もしかしてありました?」
「その、実は多少……」
バツの悪そうに、なーこさんはそう言った。
正直、この回答には驚いた。あれだけ神様の話をしていたのに、オカルトから外れた人間説も既に視野に入れていたとは。
そして、自分の勘が当たったことに、少しだけ嬉しくなる。
「怪しい人でもいるんです?」
「……怪しいのは、関わった人間全員怪しく見えます。他にも困っていた人や嫌がってた人はどの件もいましたし、見られていた可能性もありますし」
「あれ、待ってください」
他に困っていた人、どの件にもいたわけではなかったような――?
「最初の次女ちゃんの習い事、あれは次女ちゃんピンポイントでしたよね? 他の人の恨みも、あの先生かってたんですか?」
「はい、そうなんです」
「あらまぁ」
思わず間の抜けた声が出る。
なかなか敵を作るのが上手そうな先生だな、とは思っていたが、まさか実際に他にも敵を作っていたとは。
「ちなみに、どんな感じだったんでしょう? お聞きしても大丈夫ですか?」
これは正直、怖いもの見たさだった。
聞いているこちらが憤り、ふざけるなと思うようなことを、子どもに平気でするような女なのだ。何をしていてもおかしくない。
「ええ。ただ、あんまり大きな声では言えないんですけど、生徒のパパさんと不倫していたみたいなんです」
「あー……それはまた」
ある意味で想定内だった。
『あー、やってそうですね』と思ったのは、なーこさんに伝えて良いのかわからなくて、心の中にしまっておくことにする。




