第17話:某日、中間地点の駅近く、カフェにて_1
約束した、なーこさんの会社の創立記念日。
私はおおよそ中間地点にある大きな駅の噴水で待っていた。ここを待ち合わせ場所にしたのだ。みんなこの噴水を待ち合わせ場所に利用しており、今も多くの人たちが、私と同じように噴水を背に人を待っているようだった。
「――すみません、あの、イノリさん……ですか?」
「あ、そうです! なーこさんですか?」
「はい、なーこです」
黒のワンピースに、ベージュのカーディガンを羽織った女性。
年齢は自分とさほど変わらないように見えたが、私よりも大きな子どもがいるから、もしかしたら年上かもしれない。
綺麗なお母さんだな、が、私のなーこさんの印象だった。
指先はベージュのネイルでツヤツヤしていて、姿勢も良い。髪の毛はロングの黒色で、これまた艶があった。きちんと手入れしているのだろう。ナチュラルメイクで肌には透明感があり、思わずじっと見つめてしまった。
今日はお互い、鞄に猫モチーフを目印としてつけてくることにしていた。私は大きめの猫のぬいぐるみキーホルダーを、なーこさんは大きな猫の缶バッジを、トートバッグにつけていた。
「こんにちは」
「こんにちは! ……取り敢えず、予約していたカフェに行きますか?」
「そうですね、人も増えてくるでしょうし、行きましょう」
念のため、カフェは駅の近くのお店を選んで予約した。駅周辺はどうしても人が多くなりがちだから、入りたいと思っても満席の可能性がある。
「いらっしゃいませ」
「二人で予約していた、ムナカタです。十時に」
「ムナカタさまですね。こちらへどうぞ」
通された席は、運の良いことにお店の奥角の席だった。これなら四方に席がある場所と比べて、周りを気にしなくて済む。
「何飲まれますか?」
「そうですね。じゃあ、私はこのアップルティーを、ホットで」
「私はバニララテにします。注文しますね」
スマホから手早く注文を済ませると、ほどなくしてアップルティーとバニララテが運ばれてきた。
私は鞄の中からスマホとノート、ボールペンを取り出した。事前になーこさんからもらっていた、テキストファイルを印刷したものと、配信のリスナーからもらった意見を印刷したものも一緒に。
「あの、改めまして。宗像祈です。今日はお越しいただき、ありがとうございます」
「なーこです。こちらこそ、会うことを了承してくださり、ありがとうございました」
お互い座ったまま頭を下げる。
顔を上げた瞬間目が合い、照れくさそうに笑うなーこさんを見て、私も同じように笑う。
「早速ですが、これからお話する内容をこのスマホで録音したいと思っています。念のために、古いスマホも持ってきたので、こちらでも。カメラはテーブルを向けるので、顔は映りません。あくまでも、音声だけです。……問題ありませんか?」
これは、一番大事な話だ。
この場で聞いて、どれだけ頑張ってメモしたとしても、忘れてしまうこともあれば、細かいニュアンスが拾えないこともある。
そんなとき、録音データがあると便利なのだ。喋り方や魔の置き方で、そのときの空気感がわかる。同じ言葉でも空気が違えば、違う意味合いで捉えられるからだ。だから、勘違いが減ると思っている。
「はい、問題ありません」
なーこさんは即答してくれた。今までも録音していたし、察していたのかもしれない。
「ありがとうございます。一応メモ用紙も持ってきたので、手書きでも気になる部分はメモしたいと思います」
「はい、わかりました。ただ、あくまでも祈さんが聞き返して、資料を作るとか推理するとか、その範疇だけにしてください。あまり、表には府出したくなくて」
「もちろんです。お約束します! ――それでは、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
私はスマホのカメラアプリを起動させて、録画ボタンを押した。
「それで、えっと、まずはテキストファイルありがとうございました。すべて読ませていただきました。このお話も聞けたらなと思い、印刷してきました」
「読んでくださりありがとうございます。……どうですか? その、率直な意見は……」
「率直な意見、ですか?」
「はい。私はもう、まったくの偶然とは思えなくて。偶然が重なるには、怖くありませんか? あまりにも出来過ぎていて」
「そう、ですね」
私は言葉に詰まった。
確かに偶然にしては出来過ぎている。少しずつ――あえて加害者側とするが――の、事の顛末が悪くなっていくのが地味に怖い。
実際、リスナーからも『映画ならもっと悪いことが立て続けに起こる』だとか『神様の天罰はもっと酷いことが起こるのでは』という意見もあった。最初に流した話以外、配信では喋っていない。だから私となーこさん、そして神様以外、物事が悪化していく過程は具体的には知らないのだ。
このリスナーの意見は、私も同意だ。
だいたい昔から、こういう流れは悪くなる一方だと相場は決まっている……と思っている。まだ明確な死人が出ていないだけ、ラッキーだと感じるくらいに




