第96話 これからのバンドの話をしよう その4
「今日の放課後も軽音部とセッションの予定が入っております!」
咲ちゃんから突然そう告げられて目を丸くした。今日も軽音部とセッション?!
「あれ? もしかして今日も予定あったん?」
「いや…帰っても寝るまでギターの練習するだけだから」
そう答えると咲ちゃんはホッとした様子で続けた。
「昨日春ちゃん『あとは任せた』ってあわてて帰ってもたやん。それで部長と色々話し合ってな、今日もセッションすることで纏まってん」
「ま…マジですか」
「でもタダちゃうで!その場でお礼にチケット申請してくれてん!」
ドヤ顔でピースしてくる咲ちゃん。
本当は帰って新曲の苦手なパートの練習をするつもりだったけど、チケットを買ってくれたなら部長さんは立派なお客様だ。
意外かもしれないけど、バンドは誠実さがめちゃくちゃ大事なのだ。
お客さん、そしてライブハウスの店長さんとスタッフさんに見放されたら終わり。けっこうな部分が信頼で成り立っている。
でも私の記憶が確かなら昨日は咲ちゃんが自分から「あとは任せなさい!」って申し出たはずなんだけどな…
「そんでな、部長は軽音部の後輩に演奏のコツを教えてあげて欲しいねんて」
「私がギターを教えるのか…」
ギターの演奏を認められるのはすごく嬉しい。しかも軽音部からの依頼だなんて、油断したらニヤケてしまうような名誉な話だ。
でも先週のスタジオで凛子さんにも指摘されたように、私自身まだまだ練習が必要なギタリスト。
尊敬する田渕ひさ子はもちろん、華さんの鋭い演奏と比べても甘さと粗さが残る。
すると咲ちゃんは顔の前で手をひらひら左右に振った。
「ううん。部長が春ちゃんに指導して欲しいって言うてるんはな、ギターちゃうねん」
「どういうこと?」
意味がわからずキョトンとなる。私からギターを取り上げたら一体何が残るんだろう。
「部長はな、春ちゃんにギターじゃなくてバンドの演奏を教えて欲しいんやってさ」
「バンドの?」
「そっ」と笑顔で頷く咲ちゃん。
「なるほど…バンド演奏か」部長が何を望んでるのかなんとなく察する。
すると咲ちゃんは不思議そうな顔で身を乗り出し、なぜかヒソヒソ声で尋ねてきた。
「なぁ春ちゃん…ギター演奏とバンド演奏を教えるのって何がちがうん?」
「む…難しい質問だなぁ」
こんな感じで放課後、私と咲ちゃんは2日続けて軽音部にお邪魔することになった。




