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BLUE in the ガールズバンド  作者: あまだれ24
102/104

第102話 Session!! その6


「このままだと…オーディションは1次審査の合格も諦めたほうがいいと思います」


嘘をいてもなんにもならないと考えそう述べる。


すると私たちの背後から「えっ」「そんな…」と呻く部員たちの声が聞こえた。


夏の甲子園出場を賭けた大事な試合で大空高くホームランを打たれたような、悲痛のこもった嘆きだ。


「すすすっすみません!部外者の分際で偉そうなことを!切腹でも何でもするので今のは許してください!」


あわてて全部員に対して頭を下げまくる。


「春香さん謝らないで」

「で…でも」

「いいの。私も今の状態でオーディションを通れるなんて思ってないから」


森園さんが苦笑して続けた。


「それにみんなも…ちょっと困ってるし」

「へっ?」


言われて部室を見渡すと、私を見る部員たちの顔が思いっきり引いていた。


「うっ…うおおおおおおおお」


恥ずかしさに耐えかねて両手で顔をおおう。やばい。顔が死ぬほど熱い。大勢の後輩が見ている前でとんでもない醜態を晒してしまった…


叶うことならこのまま海の底で貝になりたい。


「なーなー春ちゃん」そんな貝…じゃなくて私の二の腕を咲ちゃんがグイグイと引っ張る。


「さっきの演奏どこがダメなん? めっちゃ上手かったやん?」


咲ちゃんは不思議そうに私→森園さん→バンドの順で何度も見た。視線が3往復ぐらいする。


その眼差しに向井さんは困った様子で目を逸らした。鎖骨が隠れるくらいの長さの巻き髪をいじり、稲沢くん中尾くんは面映(おもは)ゆそうにしている。


「それは……えーっとぉ」


森園さん、そして部室中から物凄いプレッシャーを感じながら私は続けた。


「む…向井さんも、中尾くんも、稲沢くんもそれぞれは上手いんだよ。でも…バンドの演奏として聴くとバラバラっていうか」


咲ちゃんは顎に指を当て首をかしげた。


「スポーツで言うたら本当はチーム競技やるはずやのに全員が個人種目しとるってこと?」

「そ!そんな感じ!」


さすが咲ちゃん。私より言語化が全然うまい。


「にゃるほど。3x3(スリーエックススリー)じゃなくてマラソンをやってるってことですか」

「スリー…なにそれ?」

「そういう名前の3人制バスケがあるねん。だから3人組バンドの理想は3x3(スリーエックススリー)なんやなって」


咲ちゃんがそう答えると、部室のあちこちから「スリーエックススリー…」と繰り返す声が聞こえた。


「纏まりが良くない事は向井さん達も改善点だと思ってるの」


森園さんが説明する。


「でも具体的な改善点が私にも他の部員にも分からなくて」

「あー…なるほど」


森園さんやバンドのメンバーの行き詰まりはよく分かる。


それぞれの演奏は下手ではない。むしろ上手い。

なのになぜかバンドになると全体的にチグハグな感じが生じる。


こういうのはなかなか厄介だ。たんなる楽器のテクニックの問題じゃない。


「よしっ」


さっきまで貝になりたかった私だけど稲沢くん達の苦労は他人事(ひとごと)じゃない。


だからひとりのバンドマンとして、彼らの先輩として立ち上がった。


そして先輩らしく堂々と3歩ほど前に歩み出る。


「あっあの…向井さん」

「はい?」


私は勇気を出し、目の前にいる凄くカーストが高そうな後輩ギャルにパンッと両手を合わせた。


「お願い!ギ…ギター貸してください!」


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