↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つのR ~ 守護霊にResistanceとReactionを与えられた  作者: サクラ近衛将監
第五章 日常と非日常

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/88

5―8 D国調査団の日常と異常 その二

 私(京都大学准教授の金田)は、持ち帰った新種と思われる植物の胞子を持ち帰り、徹底的に調査することにした。

 やはり、思った通り、D国由来の植物ではないとわかった。


 無論、写真も撮ってあるし、同行した兵士四人のうちの一人がVTRで録画もしていたので、そちらのデーターも入手できている。

 本来ならば、もっと私自身が当該植物近づいて、精細な撮影をしたいところなんだが、この胞子の危険性が分からない以上は、闇雲に接近するのは控えねばならないだろう。


 仮にやるとしたら、長い竿の先にカメラを取り付けて、自動シャッターで撮影するぐらいの話だろうが、長い竿では、手振れが起きて精密写真の写真は無理だろうね。

 うーん、流石に手持ちの小型ドローンでは、相当上空から撮影するだけの話で、接近したりすれば、プロペラが巻き起こす風圧で胞子が吹き飛んでしまうだろうから、できれば災害時に使用するようなAI搭載タイプの小さな自走ロボットなんかが有ればよいんだが・・・。


 今度の調整会議の場で、そんな機材が無いかどうかを聞いてみよう。

 近接撮影ができれば、より詳細な調査が可能だし、もう一つ、胞子若しくは植物そのものを遠隔操縦で採取できるようなロボットであれば、なお良いよね。


 いずれにしろ、取り敢えず粘着性の用紙で採取できた胞子が5つほどあるので、このうち三つをステンレス製のシャーレ内で培養してみることにした。

 このままシャーレの培養土に根付けば、普通の植物なんだが・・・。


 チョット気になっているのは、私が近づいたら、胞子が一斉に弾けたことだった。

 その距離はおよそ1m前後だった。


 もしかすると、付近を通りかかった動物に取り付いて、繁殖する生態なのかな?

 そうした植物の場合は、繁殖のために、どうしても媒介してくれる動物が必要なんだよね。


 このタイプの植物は、①果実を捕食させてその種を別の地に移動させるタイプ、②イガイガのような突起物で動物の身体に付着して遠方へ運んでもらうタイプ、そうして、③タンポポのように風によって胞子を遠くへ運んでもらうタイプの、大枠(おおわく)で三通りのタイプが有るね。

 この植物に果実は無かったようだから、一番目の果実云々(うんぬん)は除いても、この胞子が動物に取り付くものかどうかも確認する必要がある。


 風によって運ばれて発芽するタイプでも、動物にくっついて移動するタイプでも、最終的には、シャーレの培養地で育つはずだ。

 ただ、何となく、僕が接近するのを待ってパチンと弾けたような気もするんで、できれば人間以外の他の動物にどう反応するかを確認したいところなんだ。


 但し、僕のところにはそんな実験に使えるような動物は居ないし、モルモットがいない。

 予めわかっていたなら、日本から用意してきたんだけれどねぇ・・・。


 そもそも、ここに来てからというもの、動物らしきものを全く見かけていないんだ。

 鳥すらも飛んでいないし、昆虫も実は見かけていない。


 ありんこなんかは何処にでも居そうなものなのに、それすら見かけないところを見ると、みんな核爆発の所為(せい)で死滅したのか?

 そうであれば、胞子が動物に取り付くことができなかったので、この植物はあれ以上の繁殖ができなかったということなのか?


 でもなぁ、はじけた時には群落から少なくとも10mは胞子がふわふわと飛んだんだよね。

 ならば、弾けただけで群落が広範囲に広がりそうなものなんだけれど・・・。


 うーん、動物にどう反応するかについては、動物の生態調査を担当している長谷部さんと、病理学者でもある山際さんに相談して見ようか。

 もし、彼らからモルモット的なものを入手できれば、念のためのチェックだけはできるからね。


 調査団の調整会議は、研究職の連中が集って、毎週金曜日に開催されることになっている。

 今日は5月21日水曜日なので、明後日に開催される筈だ。


 もちろん軍人も警備等の関連性があるので、佐官クラスの代表者と副官辺りが出席するはずだ。

 あとは、調査団の事務系統職員とでも言うのかな?


 大きく分けると、「軍人グループ」、「研究者グループ」、「支援者グループ」という三団体の共同体なので、その調整を図る事務職員が結構な数居るので、そこからも何人か出て来るはずだ。


 まぁ、その前に今晩の夕食の際に、私を含めた日本人四人が集まれれば、今日の発見を知らせるとともに、参考意見等を貰おうと思っている。

 仮に、新種であるとすれば、いずれ名前の登録が必要なんだが・・・。


 まぁ、急ぎじゃないのは確かだな。

 誓約書との兼ね合いで、少なくともここで知り得たことを勝手に公表ができないから、恐らくは調査終了後に然るべき手続きを踏んだ後で、論文で公開できるかどうかだな。


 その際には、仮にしろ、名前が必要とされることになるんだ。

 うーん、なんと付けるべきか・・・。


 一見したところ、薊(あざみ)のように見えるからねぇ。

 D国のこの近辺の地名を取って、ヴォラクサン・アザミと云うのはどうかな?


 学名なら、薊のことを『Cirsium(シルシウム)』と云うんだが、日本人の私が発見したんだから、アザミでも構わないはずだ。

 まぁ、これからこの植物の生態を確認しなければ、実際には薊かどうかすらも分からないんだけれどね。


 もしかしたら、そもそも薊とは全く異なる植物かもしれないので、その場合は、『ニセアザミ』と云う学名がつくことになるかもしれないな。

 その日の夕食で、私が食堂で落ち合ったのは、日本から来たいつもの同僚3人である。


 英語もそれなりに会話ができるというものの、初対面ばかりの者の中では、やはり日本人同士が固まりやすいというものだ。

 この辺が日本人の国際的な感覚の欠如の現れらしく、講師時代には、外国人主催のパーティーなんかに行く際には、教授から日本人同士で固まり過ぎないようにとの注意を、良く頂いていたよ。


 生憎と、ここには植物関係の学者がいないので、外国人科学者との懇親もかなり難しいんだ。

 前にも言ったかもしれないが、僕についてくれる米軍兵士のほとんどは不愛想で、彼らとは碌(ロク)に会話にならないんだ。


 会話が有る場合は、向こうから私に用件を伝える際と、こちらから要望なんかを伝える時ぐらいのものなんだ。

 米国人って、もう少しフランクで陽気な性格と思っていたんだけれど、ここに来ている米軍人は米陸軍の特殊部隊のようで、どうも、学者連中とは親しくならないことが重要だと考えている節があるね。


 これって、何となくいやらしいんだけれど、もしかすると、何か不測の事態が起きた際は、真っ先に見捨てることも視野に入れているのかもしれないよねぇ。

 親しくなって情が移れば、本来は切り捨てなければならない時に、その決断を躊躇(ちゅうちょ)してしまう恐れもあるからね。


 でも、普段から親しくなっておらず、仕事上の付き合いだけと割り切っていれば、意外と簡単に切り捨てられる。

 大事なのは、自分と仲間の命だからね。


 そうして、この軍人達の雰囲気は、他の国の科学者連中はもとより、米国人科学者に対しても同様の態度であるようだと分かったのは、一月ぐらい後のことだったよ。

 逆に言えば、他の国から来た科学者連中と世間話ができるようになったのは、それぐらい後だったということだ。


 尤も、その世間話ができる程度の仲になった人達の中には、例の亀裂を生んだ施設の調査を行っている研究者は入っていない。

 彼らは、そもそも宿舎の区画も食堂も別系統であり、調整会議にさえも出て来ない集団なんだ。


 その点、米軍は徹底した秘密主義を取っているみたいだね。

 僕としては、新種の植物について意見を交換できる人物(当然に植物学者)と相談したいところなんだが、とてもの事、そんなことを申し出られる雰囲気じゃないよ。


 ある意味でこの調査団に加わったのは失敗だっかもしれないと、そう思っているところではあるよ。

 ところで、動物の生態調査が担当の長谷部さんではなくって、残留放射線調査の伊吹さんと病理学者の山際さんが、実験や検証のためにモルモットを多数持参してきているみたい。


 伊吹さんの場合は、放射線強度を確認する上で、汚染物質との共存が可能かどうかを確認するのに、モルモットを被験体にするらしい。

 また、山際さんの場合は、カザフ出血熱のように新種の病原体が発見された場合に、モルモットを使った実験が必要になるかもしれないので、日本からモルモット多数を持参してきたらしい。


 残念ながら、伊吹さんの方には今のところ余裕がないようだ。

 あと一か月ほど持ってもらえれば、繁殖して増えるだろうから、その時には少しは分けられますよとは聞いている。


 山際さんの方は、やはり繁殖待ちのところではあるけれど、そもそも当初の個体数が多いので、二、三匹までなら、明日にでも渡せると言ってくれた。

 うん、明日にはモルモットを使った実験ができそうだね。


 ◇◇◇◇


 翌日の朝食の後で、山際さんからモルモット二匹を譲ってもらいました。

 その二匹を使って早速に実験です。


 今日の予定は、野外調査は無しと昨日の段階で、僕の監視役兼護衛の兵士達には伝えている。

 今日一日は、ネットでの文献漁りを含めて、実験室ならぬ僕の居室に籠ることになりそうだよ。


 さて、問題は、この胞子なんだが、シャーレの中の培養地に変化は無いな。

 で、残り二つのうちの一つを、粘着紙からピンセットで慎重に剥がして、小さなケージの中にいるモルモットの近くにおいてみた。


 面白いことに、モルモットは、その胞子が置かれているだけで、隅っこから動かなくなってしまったよ。

 これは一体どういうことなのかな?


 次いでもう一つの胞子は、もう一匹のモルモットの背中にくっつけてみたんだ。

 イガイガの場合だと、これで運ばれる目途がついたことになるわけだが、これで何時モルモットから離れることになるのかが問題だ。


 どちらも、小型の定点カメラを使って、その後の様子をチャックしているんだ。

 因みに、モルモットを入れている檻は、透明なプラスティック製だけれど、空気は十分に十日するタイプで、微細な埃は通さないタイプなんだ。


 植物の胞子の場合、微風でも移動しそうだからね。

 こんなデシケーターのような容器も用意しているんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。