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二つのR ~ 守護霊にResistanceとReactionを与えられた  作者: サクラ近衛将監
第五章 日常と非日常

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5―7 D国調査団の日常と異常 その一

 私は、京都大学准教授の金田(かねだ)雄二(ゆうじ)という。

 今回、お隣の半島に生殖する植物の専門家として米国が主導するD国の調査団に加わった。


 元々我が家系は、戦前にD国から日本にやって来た渡来人であって、未だにD国には親戚筋が多い。

 そのためか、昔からD国には馴染みがあって、大学の卒論で日本とD国の植生比較を行なったら偉く評価され、出身大学の准教授にまで成り上がったものだよ。


 私の祖父が日本に帰化していたから、私も当然に日本国籍なんだよ。

 2042年5月18日、我々多国籍のD国調査団員が乗った輸送機は、厚木基地を午後二時に発ったのだが、軍用輸送機というものは、そもそも兵員輸送用に造られておるから、旅客機と違って乗り心地は悪かったな。


 調査のための資材・機器と我々調査団員をメインに乗せたジェット輸送機が一機だけである。

 武器を含む特殊車両などの軍事物資を搭載した輸送機複数と、米軍兵士を載せたジェット輸送機は前日には出発しているようだ。


 厚木を離陸してからD国の●▼空港までのフライトは、およそ1時間半だったから助かったものの、あれが旧態然としたプロペラ機であれば少なくとも6割り増しぐらいの時間が必要だったやも知れない。

 因みに同行している調査団の中に、私の顔見知りはほとんどいない。


 そもそもが、植物関連の調査員は私だけみたいなのだ。

 何んとも寂(さび)しい限りではあるが、これから凡(およ)そ半年の調査期間で出来る範囲のことを調べようと思ってはいるところだ。


 計画段階では日本人学者が5名だったのだけれど、途中で健康上の理由で一人の名大教授が辞退したことから別の国の学者が選定されたと聞いている。

 そんなわけで顔見知りというわけじゃないけれど、同じ日本人の調査団員は私のほかに3名だ。


 皆アラフォーではあるけれど、教授になると60に近い人ばかりだからな。

 東京農工大学の長谷部(はせべ)敦之(あつゆき)さんは、動物の生態調査が主みたい。


 東北大学の伊吹(いぶき)早苗(さなえ)さんは、日本人では紅一点だが、残留放射線の調査を担当する。

 そうして、もう一人が長崎大学の高度感染症研究センター感染症対策のチームリーダーをしている山際(やまぎわ)義男(よしお)さんだ。


 いずれも国際的な調査団に参加するのは初めてのようだが、全員英語はできる。

 従って、他の団員との意思疎通も特に問題はない。


 D国到着日は、元●▼空港に先遣隊が設けたプレハブ式の軍用隊舎で一泊、翌日の午前十時には特殊輸送車両で現地に向けて出発することになる。

 事前に説明されていたことではあるが、飲用水を含めて食料などはその全てが日本や米国から輸送されたものらしい。


 だから、補給が難しい場合もあるので、嗜好品(しこうひん)が有れば、持参するようにと注意書きもあったね。

 そうして残念ながら、ここでの食事の三分の二は軍用の携帯食だね。


 夕食だけは軍人のコックさんが料理を作ってくれるが、正直なところ日本人の感性には合わないものが多いな。

 但し、肉類だけはこれでもかというぐらいに沢山出て来る。


 食事は、広い食堂で軍人さんも食べるんだが、彼等はびっくりするほど肉類を食べるね。

 草鞋(わらじ)サイズの大きなステーキを三枚食べる豪傑も見かけたよ。


 但し、サーロインじゃぁ無いからね。

 固いし、お世辞にもおいしいとは言えないかもしれない。


 まぁ、神戸牛や近江牛の美味い奴に出遭ってしまうと、普通の牛肉は美味しいとは思わなくなるよね。

 ある意味で僕も贅沢になったのかもしれない。


 もう一つ、食事には魚類が滅多に出ては来ないね。

 出て来ても一度食べてはみたもののお世辞にもうまい料理とは言えなかったので、以後は食べないことにしている。


 因みに、朝と昼はほぼ選択の余地が無いが、夕食はバイキング方式なんだ。

 従って、自分で食べるものを選べるから、魚料理は極力選ばないようにしているんだ。


 次の日は移動日で、元●▼飛行場から異世界との懸け橋ができた地域へ調査団全員が資機材と共に兵員輸送車で移動する。

 そうして調査の対象となる現地でもプレハブ式の隊舎に入れられた。


 元●▼飛行場の片隅に有った隊舎は、広い部屋で多数のベッドが並べられて寝泊まりするタイプ(女性は別隊舎だった)と異なり、ここでは長期滞在になることから、調査団員の部屋は個室タイプになっている。

 そこに取り敢えず持ち込んだ資機材を個別に設置することから作業が始まった。


 ここでは、米軍の衛星通信を使ってネットにもつながるんだが、ネット通信で調査内容を調査団員以外に漏らすようなことは厳禁されており、場合により、米軍の軍事法廷にかけられると脅(おど)されているよ。

 従って、ネットでは専ら情報を集めることぐらいしかできないね。


 余程の事が無い限り、京大や自分の家族へのメールも極力控えなければならない。

 戦時中でもないのに、検閲が有るようで、どうしてもメールを出したい場合は、通信将校に文書で手渡して、発信してもらう方式になっているんだ。


 だから、私に与えられたパソコンでは文章は作れるし、ネットにもつなげられるが、発信は一切ができないような特別仕様のものだよ。

 引っ越し片づけと資機材の設置には足掛け二日かかったが、三日目に野外調査に出かけられることになった。


 但し、監視役と護衛の兵士が四人もついてくるんだ。

 この四人、実に愛想が悪いから、用事があるとき以外は中々話もできないんだ。


 そうして、問題の時空亀裂を生んだと思われる施設の内部には、特別に選抜された米国の調査員だけが入れるようになっており、我々は周辺を調査できるだけで施設の内部には一切入れないことになっている。

 野外調査を始めてほぼ一週間、防護服を着用しての調査にも慣れてきたが、恐らくは新種の野草の類と思われるものを発見した。


 D国に自生する植物のほとんどを網羅した図鑑にも記載されていないし、ネット情報でもこの植物に関する投稿は一切無い。

 新種の野草ともなれば一大発見ではあるが、用心してかからねばならないのは、この辺一帯が放射能に汚染された地域であるということだ。


 調査に先立って、放射能汚染についても米軍兵士の手によって調査が先行されており、私が調査している地域は、比較的安全と判定されている場所ではあるが、それでも残留放射能が存在するのは間違いない。

 従って、放射能若しくは放射線によって、植物が変異した可能性もあり、注意を要するのだ。


 今一つ懸念されるのは、異世界とつながった際に、モンスターの出現と同時に多くの植物の種子がこちら側へ持ち込まれた可能性が否定できないことだ。

 無論、こちらと向こうの世界では環境が異なるだろうから、こちらの世界へ移動してきた植物の種子が無事に発芽するとは限らない。


 然しながら,何千、何万という数の種子が持ち込まれた場合、その中にこちら側での環境に適合するものもあるかも知れないのだ。

 少なくともモンスターどもはこちらの環境の中でも生き続けており、未だに東南アジアの一部では小型の異種動物の被害を抑えるのに軍隊が出動している。


 まぁ、軍隊でも対応できないモンスターは、例の『Pemburu』という組織(?)が、退治してくれたようだけれど、軍隊が対応できないようなモンスターの殲滅(せんめつ)だけを優先したようで、各国の軍隊でも対応できそうなモンスター等は見逃されたみたいだな。

 確かに東南アジアでは、軍隊が出動してモンスターの南下を押さえてはいるけれど・・・。


 どうせなら最後まで面倒を見てくれても良さそうなどと考えるのは、欲張りな考えなのかな?

 何しろ、彼らは一切の報酬も要求していないしね。


 むしろ、カザフ出血熱の感染が起きた時には、彼らが独自に開発したワクチンをトン単位で提供してくれたぐらいだ。

 しかも無料でだよ。


 但し、WHOと各国医療機関との間に介在する業者が、当該配布に際して法外な金額を医療機関等に要求したものだから、一時的ではあるけれどワクチンの供給をストップさせたことが有る。

 NPOなのかどうかはわからないが、善意の団体であることは間違いないし、どうもネット情報では国際的な秘密組織のようだね。


 余分な話は差し置いて、この新たな植物は、綿毛を持った綿花のような植物なんだ。

 綿花は白色だけれど、こいつは薄い赤色だ。


 ピンクじゃなく薄赤ね。

 私の知っている和(・)の(・)色(・)では、珊瑚珠色(さんごしゅいろ)の薄い色に近いと思っている。


 植物にとって赤い色は、必ずしも警戒色ではなく、虫に寄って来て貰って繁殖をするためのものではあるけれど、稀に毒を有するものも有るので注意を要する。

 綿花の場合は、熟すと綿が弾けて、綿毛についている種子が飛び出すんだけれどこいつはどうかな?


 そう思いつつ、用心しながら近づいてゆくと、距離で1mぐらいかな?

 急に綿毛状のものが弾けたんだ。


 種をまき散らすというより、空中にふわふわと漂っている感じ。

 しかも僕に向かって集中的に流れて来るんだ。


 防護服を着ているから大丈夫とは思っても、僕は身を翻(ひるがえ)して後退したよ。

 当然に周囲に居る四人の軍人さんにも英語で注意喚起した。


 驚いたことに、僕が10mほど離れてもふわふわと漂ってくるんだよね。

 気流に乗っかったのかもしれないが、どちらかというと今は無風に近いとおもうんだが・・・。


 取り敢えず、地面に胞子採取用の粘着紙を置いて更に撤退して様子を見た。

 肉眼で見る限り、浮かんでいる胞子は無くなったようなので、用心しながら近づくと、粘着紙には胞子らしきものが付着していたね。


 こいつが危険物かどうかはわからないけれど、封のできるポリ袋に収納して取り敢えず現場を離れた。

 新種の綿花に似た植物は、半径25mほどの範囲で群生しているようだが、仮に今のように弾けて種を胞子状にして飛ばすのなら、より広い範囲がこの植物の群生地になる可能性もある。


 しかも群生地では他の植物を押しのけているように見えるから、かなりの繁殖力を有する外来種である可能性もある。

 但し、例の災厄とでも言うべき時空亀裂からは、既に8年以上もの歳月が過ぎているんだが、仮にこいつが異世界の植物であるとすれば、随分と繁殖が遅いような気もするね。


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