4―16 結婚と新婚旅行 その九
巡洋艦ベルファストの話はさておき、タワーブリッジは、19世紀後半に建造されたテムズ川を通る船のために造られた開閉橋だよね。
両側に壮麗なタワーが立っていることで、ロンドンの一大名物でもある有名な橋だよ。
欧州での跳ね橋はゴッホの絵で見られるように昔からあったけれど、蒸気機関で橋を開閉するシステムはこの橋が最初なんじゃないかな。
この橋ができた当時は、英国の黄金期で、世界中に植民地が有ってその富が英国に集まっていた時期でもある。
この橋の最大の特徴として、橋を開けて船が通行している間は、タワー(塔)を登って44mも上にある渡橋を通行できるということだろう。
ここも歴史的建造物だからなのか、内部を見るには入館料が18ポンド(3800円程度?)かかるんだよね。
でも渡橋を通るだけならば無料らしい。
多分、日本の何処やらの川を渡る際の渡し船みたいに、公道扱いになっているので通行だけなら無料になっているんだろうね。
でも、昔44mもの階段(マンションならば14階か15階相当)を登るのは大変だったろうけれど、今ではエレベーター付きなんだぜ。
勿論、俺達も入場料を払って、タワー内部を見学し、エレベーターで上部の渡橋にたどり着き、テムズ川と河畔の町並みを眺めたよ。
残念ながら、夏時間なので夕暮れにはまだ早い時間だったね。
で、ちょっと予備の計画を発動し、ロンドンの金融街であり、超高層ビルの立ち並ぶシティ・オブ・ロンドン地区にある22 ビショップスゲート(22 Bishopsgate)の最上階「ホライズン22」(高さ254m)へ登るためにタクシーで移動。
ここは二年前までは午後5時か6時までしか利用できなかったんだけれど、観光客の要望が多かったので、今は午後8時までは入ることができるんだ。
因みにここを訪れるには予約が必要で、俺達は午後7時からの予約を念のためしていたんだ。
但し,滞在時間が制限されていて、30分で入れ替えがなされるんだ。
夕焼けの迫るロンドン市街をアズと二人で眺めて、あれやこれやと話し合い、今日の観光はおしまい。
22 Bishopsgateからホテルへは、タクシーで戻った。
ホテルで一休みしてから正装に着替えてディナーだよ。
英国ではフランスとは違って、ディナーを遅い時間にする必要も無いけれど、午後8時からの予約にしている。
因みに、ホテルのディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタール(Dinner by Heston Blumenthal)は、午後9時半までしか営業していないから、その点でもフランスとは習慣が違うよね。
英国のレストランは、遅くても午後10時か11時で閉店なんだけれど、この辺は日本と同じなんだろうね。
ディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタールは、英国の伝統的な料理をアレンジした独特な料理が出て来るんだ。
ここのディナーは、明日に予定しているリッツ・ホテルのレストランとの比較が面白いかもしれないね。
ディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタールは二つ星で、明日のザ・リッツ・レストラン(The Ritz Restaurant)も二つ星なので、比較できるのが良いよね。
因みに三ツ星レストランは、ロンドンに6カ所あるようなんだけれど、結婚前にアズと相談した時に、ロンドンでも三つ星を選んでいたら、日本に帰った時に舌が奢ってしまうかも知れないから今回は遠慮しようということになったんだ。
多分、二つ星でも三つ星でもプロの調査員の査定によるものだから、俺達のような普通の者には差が分からないように思えるんだけどね。
ミシュランの格付けは、料理だけじゃなく接客など多岐にわたってサービスが行き届いているかも見るらしいから、必ずしも料理だけが抜きんでているわけじゃなさそうだしね。
とかく味にうるさい日本でも、ミシュランの三つ星は20店舗ぐらいしか無い。
でも、きっと、日本にだってフランス料理にかぶれた審査員たちが気づかない名店が多数あると思うんだよね。
まぁ、中には愛想が悪い店もあるし、いくら美味いと言っても屋台の店に星はもらえないんじゃなかろうか?
そんなわけで、ロンドン最後の夜になる明日は二つ星レストランを予約したわけだ。
で、宿泊先のディナー・バイ・ヘストン・ブルメンタールの料理の味は?
うん、「美味かった。」の一言に尽きる。
俺は料理のコメンテーターじゃないから、食レポなんかできやせん。
評価するとすれば、美味いか拙いかそれだけだ。
アズが十分満足していたから、俺はそれだけで十分だよ。
そうそう、事前にロンドン観光でチェックしていたのが、ザ・ボート・レース(The Boat Race)なんだけれど、今年は明日のミュージカルとダブってしまうんだよね。
ザ・ボート・レースは、オックスフォード大学とケンブリッジ大学のボート対抗戦で、毎年三月下旬から四月上旬の土曜日か日曜に開催されるんだ。
そうしてこの対抗戦には、男女別のレースがあり、毎年数十万人の見物客を集めている一大イベントなんだぜ。
男子の場合、1829年に始まり、同着一回を含め、オックスフォード90勝、ケンブリッジ85勝とほぼ拮抗しているから面白いんだよね。
満潮と引き潮等の潮の流れがテムズ川の流速に影響を与えるので、その年によってレースのスタート時間が変わるんだけれど、今年は午後二時過ぎのスタートで、ハミルトンの公演時間と被さりそうなので止む無く見送ったんだ。
明日、俺達が予定しているのは、午前中に大英博物館を見学し、午後にヴィクトリア・パレス・シアターでミュージカル「ハミルトン」を聞き?(観に?)行くんだ。
この「ハミルトン」と言うミュージカルは、ロンドンでは2017年に初公演以来、そのままずっとロングラン公演になっているんだって。
ミュージカルでこれまで最長のロングランは、米国ブロードウェイで35年(13,981回)に渡って公演された「オペラ座の怪人」なんだけれど、この「ハミルトン」の終了日も設定されていないので、それに迫るかもしれないね。
もっともミュージカル「ハミルトン」自体は、ニューヨークのブロードウェイが先発で、ストーリーもほぼ同じなんだけれど、ヒップホップなど現代の音楽も取り入れた先進的な脚本だから、米国の場合はライブそこのけの熱気と歓声が沸き起こるらしい。
そうして米国の「ハミルトン」の方は、ネットでも観劇できるようだね。
一方、ロンドンの「ハミルトン」は、芝居のメッカ(演劇の聖地?)ウェストエンドで公演されるので客の質が違うのかなぁ。
観客は至っておとなしいようだ。
まぁ、歌とストーリーをじっくり楽しむならロンドンなんだろうね。
俺もライブショーなんざ、聞きに行ったことは無いけれど、数万人も集めてでかいスピーカーでがなり立てる音楽と言うのは、繊細に聞くことができないんじゃなかろうかと思うぜ。
多分、あれだけ騒がしいのは、エンターティナーと観客の一体感を感じるためのものだとは思うが、音楽を静かに聞きたいという感じじゃないよね・
別に高尚なのが良いというわけじゃないけれど、俺の持っているステレオだって騒がしいところで聞きたいとは思わないもんな。
まぁ、ニューヨークとロンドンでは、同じ演目の「ハミルトン」でもそんな違いがあるという。
まぁ、これはネットの受け売りだけれどね。
オペラが好きなアズだからな。
多分、ニューヨークの「ハミルトン」が観たいとは言わないように思えるが、機会があったら連れて行ってやろうかと思っているぜ。
明日の昼食は、大英博物館に近いBloomsbury Street Kitchenで頂く予定。
ここは地中海料理と和食を融合させた料理で有名なところなんだ。
だからお魚の料理も当然に多いよね。
ランチだから、左程がっつり食べるわけじゃないと、アズと二人で悩みながら選んだのがこのお店で、当然予約を入れている。
そうして、夕食は、午後7時からリッツ・ホテルのThe Ritz Restaurantだよ。
この夕食を食べると、明日の予定は何もないから、アズと二人でホテルに戻って温水プールでひと泳ぎしようかと話し合っている。
ホテルに戻るまで、特段の問題は無かったな。
ホテルに戻ってからの大掃除の一仕事はいつもの通りだね。
その後は恒例のイチャイチャを寝室で繰り広げるのはいつもの通り。
これは、夫婦の特権なんだから誰にも邪魔はさせないぜ。
でも夜中に若干面倒なことが起こりつつあったね。
黄さん達が事前に察知していたので、未然に防止出来ていたけれど、マスターキーの複製を持っている奴ら(三人)が、丑三つ時に俺達の部屋に侵入しようとしていたんだけれど、開錠しようとした途端に警報が鳴りだして慌てて逃げ出していた。
無論、ホテルが大騒ぎになったのはもちろんだけれど、犯人たちは非常階段を使って逃げ延びた。
でも、そんなことで許す俺じゃない。
当然に運転手を含めて四人の怪しい奴らにはお仕置きをしたよ。
「赤信号、急には止まれない」じゃないけれど、黄色から赤信号に変わる時点で止まろうとした奴らの車のブレーキが利かなくなったら、そのまま交差点に突っ込むことになるよね。
そのために大型のトラックにはねられて、車はお釈迦になったみたい。
乗っていた件の四人は、MI5の非合法組織の一員だったようだけれど、全員重傷を負って病院行きになりましたとさ。
大本を叩くことも考えたけれど、大げさにしたくないので今回は取りやめたが、二度目が有れば、俺とアズの幸せのために指令を出した奴を含めて絶対に潰す。
まぁ、エディンバラに行ってからか、若しくは帰国してからの話だな。




