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二つのR ~ 守護霊にResistanceとReactionを与えられた  作者: サクラ近衛将監
第四章 起業

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4―14 結婚と新婚旅行 その七

 今日はストラスブール観光最後の日だけれど、同時にフランスも今夜出国することになるね。

 アズは、希望していたオペラが聞けるとあって、朝からそわそわしているよ。


 本当に二度目のオペラを聞きたかったみたい。

 但し、アズ曰く、学生時代を含めて日本でのオペラを聞きに行ったのは一度だけだという。


 五年前の2037年の話のようだ。

 ミラノ・スカラ座の東京公演が有った際に、たまたま夏休みで親戚宅を訪ねていたアズが、叔母さんに誘われて、新国立劇場で「フィレンツェの悲劇」を聞きに行って感動したんだそうだ。


 生憎とそれ以降は、オペラに行くような機会が無くって、生のオペラは聞いていないんだそうだが、機会が有れば是非に行ってみたいと思っていたらしい。

 新婚旅行のパリでその貴重な機会を貰ったと、旅行前にアズには随分と感謝されたんだ。


「日本での予約段階で入手できなかったから、ほとんど諦めていたストラスブールでのオペラ公演も聞けるなんて、まるで夢のようだわ。」


 そう言って喜んでいるアズを眺めている俺も自然と幸せな気分になるよ。

 チケットを譲ってくれた、老婦人カミラ・メッテルニヒさんに大感謝だね。


 今日は、旦那さんが入院している病院にお見舞いに行く予定なんだ。

 午前中は、近代・現代美術館に行って展示品をじっくりと眺めることにしよう。


 アズはともかくとして、俺に芸術的な審美眼(しんびがん)が有るとは思わないが、鑑定で真贋(しんがん)だけはわかるな。

 ただ、まぁ、幼い頃からおふくろの華道を傍で見ているから、その影響かもしれないが、何となく生け花についてはその良し悪しが理解できるんだぜ。


 だからと言って、彫刻や絵画なんかが分かるとは思えないがな。

 取り敢えず、午前中はストラスブール近代・現代美術館で時間を潰すことになっている。


 昼食は、美術館内にあるカフェ(Art Cafe)にする予定だよ。

 ここは屋上(?)とは言いながら屋根があり、大きなガラス越しにイール川と旧市街を一望できる場所でもあるんだ。


 午後は、ヘルムート・メッテルニヒさんの入院している病院にお見舞いに伺い、その足でオペラ・ハウス(Opéra national du Rhin)に行き、アズ待望のカルメンを拝聴する。

 オペラは、午後2時半から午後6時までの予定だ。


 オペラを聞き終わったなら、一旦ホテル(Maison Rouge Strasbourg Hotel & Spa)に戻って荷物を受け取り、ストラスブール国際空港へ移動だね。

 空港で弁当(?)を食べて、午後9時半の便でイギリスへ渡る予定でいる。


 その意味で今日の市内観光は、オペラを除いて美術館だけになるね。


 ◇◇◇◇


 予定通りの時刻に朝食を食べ、午前10時少し前にはホテルをチェックアウトした。

 但し、別料金を払って荷物だけは夕刻まで預かってもらっている。


 ホテルからタクシーでストラスブール近代・現代美術館に移動した。

 入館料は、御一人様10ユーロだから結構高いよね。


 観光地では何処の施設でも入館料が10年前辺りと比べるとかなり値段が上がっているらしい。

 インフレなのかな?


 さて、展示品はと言うと、近代はまだ何とかわかる。

 だが現代アートになると、表題と見ているものがどうしても俺の頭の中では一緒にならんのだ。


 俺って、古いのかねぇ。

 ピカソあたりならまだ顔の一部が残っていたりするものが有ったりするから、何となくわかるような気もするし、現代アートでも風景画はそれらしく見えるものの、ただの長方形や円、それに直線の寄せ集めの塗り絵で、作者が付けた表題を感じろと言われても無理だろう。


 俺には、ロダンとかモネとかの類の作品が似合っていると思う。

 おまけに鑑定をかけてびっくりだな。


 流石に偽物は無かったが、お値段が億の付くものが多かった。

 因みに単位は、『円』じゃなくって『ユーロ』だぜ。


 収集家という奴はきっと金持ちが多いんだな。

 余程儲けられたら『Art』なるものを購入するかもしれないが、見栄だけは張りたくないよな。


 少なくとも自分でわかるものを購入したいもんだよ。

 概ね1時間半を費やしてざっと展示品を見て回ったよ。


 正午前に、カフェに入り、軽食を食べた。

 大きなガラス越しに見える風景は、俺達が観光をした旧市街の街並みだし、船に乗って眺めた川面だった。


 (わず)かに足掛け三日だけれど、それなりに思い出がある。

 きっと、何十年かしたら、アズと二人で写真や動画を見ながら、この旅を思い出すんだろうな。


 きっと俺達は傘寿(さんじゅ)米寿(べいじゅ)まで生きるだろうし、もしかすると白寿(はくじゅ)を超えるかもしれん。

 俺の能力が有れば、おそらく寿命も伸ばせると思うぜ。


 細胞の老化を防ぐことも、ある意味で、内部抵抗の増減に関りがあるからな。

 俺とアズはまだ若い。


 このひと時を精一杯楽しんでおきたいと思っているよ。

 カフェでの軽食を終えて、タクシーで病院(Nouvel Hôpital Civil de Strasbourg)へ行き、お見舞いに伺った。


 奥様も傍についていらっしゃったが、旦那さんのヘルムートさんも思っていたよりもお元気で、明日か明後日には退院できそうだと笑顔で話してくれたよ。

 ヘルムートさんからは、しきりに礼を言われたなぁ。


 逆にこちらからは、今日のオペラのチケットをいただいたお礼を申し上げ、お二人のドイツの住所をお聞きして、日本に戻ったら必ず手紙を書きますと約束してお別れをしてきたよ。

 異国の旅で『袖すり合うも他生の縁』なんだろうね。


 記念に病室でご夫妻と一緒の写真を撮らせてもらったよ。


 ◇◇◇◇


 病院を出たら、またタクシーで移動だね。

 オペラ・ハウス(Opéra national du Rhin)へ直行だ。


 開場まで10分ほど待って、午後二時過ぎには入場できた。

 オペラの方は、正直なところ、俺には出来栄えなんぞはよくわからねぇな。


 でもパリで聞いた歌声とはまた違う意味で何となく感動している自分がいたよ。

 無論、俺に優劣なんか付けられっこない。


 後で聞いたら、アズも同じくどちらがどうと評論なんかできないそうだ。

 滅多に聞けない演奏をひたすら聞けたのが、自分の宝物だと言っていたな。


 評価はできない。

 でも自分の心の中に何かが残っていたなら、それだけの価値が有るのだと思う。


 自分の目と耳で、本物のオペラを直に二つ聞けただけでも、フランスの旅は良い旅だったんだろう。

 夕方6時過ぎにオペラ・ハウスを出たが、夏時間だから外はまだ明るいままだった。


 タクシーを拾ってホテル近くのL'Atelier 116に行き、サンドイッチやらデザートをテイクアウトにしてもらった。

 そこからホテルへ歩いて戻ったよ。


 ホテルで荷物を受け取って、そのまま、またクシーに乗ってストラトブール国際空港へ向かった。

 空港へ着いたのは、午後7時すぎだったな。


 搭乗手続きを済ませ、出国手続きをしてから搭乗口のあるフロアーへ。

 そこの売店で飲み物を購入して、椅子に座りながら簡単な夕食だな。


 正直なところ、そんなところでパクつくのはっとも良くないかなと思ったけれど、先客で食べている家族連れも居たので、こちらも旅は恥のかき捨てとばかりに食べて飲んだよ。

 食べ終えたら、ちゃんとゴミはごみ入れに入れたからね。


 意外と搭乗手続きと荷物を預けるのにも時間がかかり、さらに出国手続きにも時間がかかったよ。

 その上で待合室で食事をしていたら、左程の待ち時間は無かったな。


 やはり夕食はサンドイッチで正解だった。

 空港近くのレストランなんぞに行っていたら、多分搭乗できなかったと思うよ。


 飛行機に乗って1時間半で英国になる。

 畿内ではアズと二人で色々と駄弁りながら、短いフライトは終わりを告げた。


 ストラスブール国際空港からロンドン・ガトウィック空港までは、直線距離で630キロ前後だから、日本で言えば羽田から広島空港くらいまでの距離だね。


 ◇◇◇◇


 ロンドン・ガトウィック空港に到着後、空港からロンドンのマンダリン・オリエンタル・ハイドパークまでは、車で1時間20分ほど。

 入国手続きやら荷物の受け取りで若干遅れるから空港に9時半着でも、空港を出るのは10時半過ぎになる。


 そのために空港到着時にホテルのクロークに確認の電話を入れた。

 多分その日のうちにはホテルに到着できるだろうけれど、連絡せずに予約をキャンセルされてはたまらないからね。


 一応、午後11時半過ぎにはホテルに到着できるだろうとおおよその予定を告げて、ホテルマンの了解を得たよ。

 後は通常の手続きに乗っかって、タクシーでロンド市内に向かうだけだな。


 予約していたマンダリンホテルにチェックインしたのは、午後11時25分頃だった。

 夜は簡単な食事しかしていないけれど、特にレストランの予約もしていないから、今夜はこのまま部屋に行く。


 例によって、ホテル室内の盗聴器や隠し撮りカメラ等のチェックを行い、5台ほどポンコツにしたよ。

 一応、スイートを頼んでいるんだけれど、セキュリティはガバガバのようだね。


 この辺は、今更、ホテルに文句を言っても始まらない。

 黄さん達に夜の警戒をお願いして二人でベッドインしたよ。


 今夜の宿泊先であるマンダリン・オリエンタル・ハイドパーク・ロンドンは、北側が有名なハイドパークに面している。

 俺達の部屋は四階にあり、ハイドパークが良く見えるスイートなんだぜ。


 最上級の部屋は五階になるらしいけれど、アズと相談の結果、そこまで贅沢をしなくても良いだろうと普通のスイートにしたんだ。

 逆に言えば、ハイドパークからは狙撃も可能な場所ではあるので要注意だ。


 フランスでのC国の亡霊どもが仕掛けた狙撃は、『手に入らずんば消してしまえ』と安易に考えた結果なんだろうと思う。

 そんな奴が他には居ないという保証はどこにもないからね。


 俺たち二人の幸せのためにも、今後も必要十分な警戒が必要だと思っているんだ。

 なんか知らんが、俺は007並みの危険人物なのかね?


 そんなことを考えてしまうと何となく気が滅入るよ。



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