表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/24

15. 王都出発の朝

都の精霊教会で朝の鐘が鳴った。

澄んだ空気の中を、鐘の音がゆっくり広がっていく。

厩舎では雷駝鳥が足を鳴らしていた。ギラが首を振って革紐を鳴らし、ダンが低く喉を鳴らした。

ラモンは荷袋を持ち上げ、雷駝鳥の背で位置を直した。右へ寄せて、今度は左へ戻す。革紐を引き、結び目を締める。


ビリエラが言った。

「もう十分ではありませんか?」


ラモンは首を振った。

「まだだ」

「右が重い」


荷袋を少し後ろへずらし、反対側の袋も持ち上げる。

「昨日も同じことをしていましたよ」


ラモンは答えなかった。指先で紐の張りを確かめ、もう一度だけ結び直した。

シエラが言った。

「出発できます」


「このままだと、途中で崩れる」

ラモンは短く言った。

「走って荷が揺れた時が面倒だ」


ビリエラが小さくつぶやいた。

「……精霊よ」


ラモンはようやく頷いた。

「よし」

「行くぞ」


三人は厩舎を出た。朝の通りはまだ人が少なかったが、店を開ける支度の音はあちこちから聞こえていた。


しばらく歩いたところで、シエラが足を止めた。

「受け取りです」


ラモンが振り向く。

通りの脇に、昨日の服屋があった。店先の布はまだ半分だけしか出されていなかったが、扉は開いていた。


ラモンは頷いた。

「そうだったな」


三人は店へ入った。

店主の女は、ちょうど布を棚へ戻しているところだった。顔を上げると、すぐに笑った。

「あら、早いわね」

「できてるわよ」


店主は奥から包みを持ってきた。布を広げる。薄紅の上着だった。頭からかぶる形で、丈は膝下まである。胸元から肩先にかけて鮮やかな刺繍が入り、柄は青い貝殻と黄色い海鳥だった。


シエラは受け取るとその場で頭からかぶり、腕を上げ下げする。肩を回し、裾を軽く引いた。


「どう?」


店主が聞く。


シエラは袖口を見た。

「きれいだ。」


店主は頷いた。

「胸の裏と腰の内側、内ポケットも付けてあるから」

「空色の上衣のほうにも入れてあるからね」


シエラは小さく頷いた。

「感謝する」


ラモンがシエラを見た。

「目につくな」


店主がすぐ言った。

「見失いにくいとも言うのよ」


ラモンは少しだけ口元を動かした。


ビリエラが言った。

「似合っています」


シエラは少しだけ考えてから答えた。

「うん」


店主は満足そうに頷いた。

「それならよかった」


三人は店を出た。

そのあとで、ビリエラが少し言いにくそうに口を開いた。

「あの」


ラモンが止まる。

「なんだ」

「出発の前に、精霊教会へ寄りたいのです」


ラモンは黙った。シエラも黙ってビリエラを見た。

ビリエラは続けた。

「旅の無事を祈りたいのです」


ラモンは短く息を吐いた。

「今か」


ビリエラは肩をすくめた。

「今です」


ラモンは空を見上げた。それから言った。

「……早く済ませてくれ」


ビリエラはほっとしたように頷いた。

「はい」


精霊教会はすぐだった。白い石の壁と尖塔が、朝の光を受けて明るく見えた。

ビリエラは中へ入っていった。

ラモンは外で腕を組む。

「お前さんは祈りに行かないのか」


シエラが言った。

「んー。わらわは精霊は好きじゃない」


ラモンは面白そうに眼を瞬かせた。


しばらくして、教会の扉が開いた。落ち着いた顔のビリエラが戻ってきた。

「お待たせしました」


東門はすでに開いていた。門番が三人と雷駝鳥を見て、行き先を尋ねる。

「どこまでだ」


ラモンが答えた。

「東の街道だ」

「まずは運河都市まで行く」


門番は頷いた。

「良い旅を」


三人は門をくぐった。


朝の光が東の街道に広がっていた。石畳はやがて土の道へ変わり、その先へまっすぐ伸びている。ギラが一歩踏み出し、ダンもそのあとに続いた。

三人は街道を東へ進んだ。

ふー。やっと王都でた。休憩したい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ