12 .非常用餌の買い出し
藁の匂いと、香辛料ようなの刺激の強い香りが、通りの空気に混ざっていた。
布袋を肩にかけた人足が行き交い、背負い籠の女たちが声を張り上げる。通りの端には乾物屋や豆屋が並び、そのあいだに、飼葉や家畜用の餌を扱う店があった。
ラモンが足を止めた。
「ここだ」
店先には大きな麻袋が積まれていた。麦、豆、乾いた草、家畜用の配合飼料。どれも普段使いの品らしく、量も多い。
助祭が首をかしげた。
「ここは……」
ラモンが答えた。
「飼料屋だ」
「先にあいつらの飯を確保する」
「あいつら?」
「雷駝鳥だ」
店の奥から店主の男が顔を出した。
「いらっしゃい」
ラモンは店先の袋を見たまま言った。
「旅用の携行飼料はあるか」
店主が寄ってきた。
「馬用か」
「雷駝鳥だ。二羽」
店主は小さく眉を上げた。
「王都あたりでは珍しいから、あったかな」
店主は頭をかくと、奥の棚へ回った。しばらくして、拳より少し大きい塊をいくつか布袋に入れて持ってくる。
色は茶色で、乾いて固そうだった。
「あった、あった。炒り麦と豆の粉に、脂と塩を混ぜて固めてある」
「水があれば崩せる。軽いし、日持ちもする」
助祭が目を丸くした。
「これが餌ですか」
店主は頷いた。
「普段の餌じゃない」
「街道で買い足せない時の分だ」
店主は布袋を持ち上げた。
「二羽なら、これで数日はもつ」
「餌をすぐに買えない時の備えにはなる」
ラモンは少しだけ考えてから言った。
「それをくれ」
「普段の分は街道で買う」
「今日は非常用だけでいい」
店主は頷き、布袋の口をきつく縛った。
「街道で草や豆は買える。だが、こういうのは先に持っておいたほうがいい」
ラモンは代金を払い、布袋を受け取った。
助祭がその袋を見た。
「思ったより小さいのですね」
ラモンが答えた。
「ああ、小さいから、いざというときに役に立つ」
ラモンはそう言って踵を返した。
「次は俺たちの昼めしだな」
助祭がほっとしたように言った。
「それは助かります」
屋台の煙と肉が焼ける匂いが、風に乗って流れてきていた。
三人は人の波の中へ戻っていった。




