10-11.裏 助祭の買い物
装備屋でシエラの買い物が終わるころ、店主は助祭の足元を見た。
見た、というより、確認した。
それから、少しだけ気の毒そうな顔になった。
「その靴で街道へ出るつもりかい」
ビリエラは自分の靴を見下ろした。王都の石畳を歩くには十分だったが、底は薄く、革もやわらかかった。
「……精霊よ」
ラモンは腕を組んだ。
「やめておけ」
店主はもう棚へ向かっていた。
「この人には、丈夫なやつだね」
「見た目は二の次だ」
ビリエラは小さく抗議した。
「いえ、見た目も多少は」
店主は振り返らなかった。
「あんたに多少あるなら、もう少しましな靴を履いてるよ」
ビリエラは口を閉じた。
試し履きをさせられ、歩かされ、屈伸までさせられた末に、助祭は黒くて重い旅靴を履かされた。
「……ずいぶん武装した気分です」
ラモンは短く言った。
「旅はまず足だ」
そのあと、三人は服屋へ移った。
店主の女はシエラに薄紅の上着を当て、空色の上衣を選び、内ポケットの相談まで受けていた。助祭はその横で静かに立っていたが、途中で一度だけ、よかれと思って口を出した。
「その……灰色のほうが、汚れは目立たないのでは」
店主は助祭を頭から足先までじろじろ見た。
新しく買わされた旅靴まで見た。
そのうえで、にっこり笑った。
「助祭さん、女の子の服のことは私たちにおまかせください」
「……はい」
ビリエラはすぐに引き下がった。
ラモンが横で鼻を鳴らす。
「学んだな」
「何をですか」
「口を出す場所には向き不向きがある」
助祭は少しだけ考えた。
「では私は、どこで役に立てばよいのでしょう」
ラモンは即答した。
「会計だ」
助祭は少し明るい顔になった。
「それなら――」
だが、その直後、金庫商で金の管理を断られたことを思い出した。
助祭の顔が、すぐ曇る。
「……精霊よ」




