薬屋の日常〜世話のかかる妖精を添えて〜
チリン、チリン。
扉が開く合図が鳴り、私はチラリと前を見た。目の前に立っているのが常連だと分かると、いつもの呼び掛けをする。
「いらっしゃい。薬はいつものやつ?」
「ええ、また息子の喘息が酷くなったのよ。」
婦人は溜息をしながらそう言った。私はそんなことは気にもせず後ろの棚にある瓶を一つ手に取り、客に渡す用の瓶に3分の1ほど移し替え、婦人に渡した。
「いつもありがとうね。ここの薬は
「お代は150エーシです。」
※エーシは単価のことだよ!
「あら、相変わらずね。けど嫌いじゃないわよ。」
婦人は笑いながらそう言うと、鞄から150エーシ取り出し、カウンターに置いた。
「それじゃ、また何かあったら頼らせてもらうわね。」
私にそう言い残して店を出て行った。私はあの人ほんとに変わってるな、と思いながら在庫の整理をしようとした時、
パリーン!ガッシャーン!!!
「........。」
'あれ'を連れて帰ってから聞くようになった音に顔を顰めながら、音が鳴った保管室の方へ向かった。ドアを開けると想像通りの光景がそこに広がっていた。
「うわぁぁーん!!!あるじたすけてーーー!!!粉薬がぁぁぁーーーーー!!!!」
そう叫びながら、あっちこっち飛び回る小さな赤色の光の球を見て、溜息をしながら片手で鷲掴みにした。
「ひぇっ。」
小さく悲鳴をあげると、光は次第に無くなり、手の中には、長い赤色の髪に薄い緑色の目、黄緑のワンピースを身につけ背中に特徴的な虫のような羽を生やしている女の子がいた。
「ねぇアルセル。私毎回言ってるよな?上の棚は弄るなって、なのに何で毎回おんなじことすんの?お前のその小さな耳は何のためについてるんだ?」
「あわわわ.......。」
「ほら、何でこんなことしたか言って見ろ。」
「え、えと。」
しばらく待っても何も言わなかったので、指でほっぺを軽くつまみ、軽く引っ張った。
「ひゃーーー!!ごへんにゃひゃいー!!いいまひゅーーーー!!!」
ようやく話す気になったようなのだほっぺを離した。フニフニだった。
「うう.....あるじひど
「はよ言え。」
「はい。」
アルセルは数回、深呼吸をした後ポツポツ話しはじめた。
「あるじ、いつも忙しいじゃん?お店終わったあといつもあの棚の薬取って行くから、取ってあげようと、思って........。」
話しているうちに段々涙をポロポロと流しながらもアルセルは話を続けた。
「そ、それに、ぅぅ、わたし、こんな、ひっぐ、小さいから、えっぐ、ぜんぜん、やくにたってないって、おもってぇぇ。」
正直、私は驚いた。まさかアルセルがそんな風に悩んでいるとは思わなかったからだ。だが、私は容赦なく釘を刺す。
「事情はよーく分かったが、出来ないことを無理してするな。ていうかやめろ、掃除が大変になる。」
「ふぇぇぇ.....。」
アルセルは完全に落ち込み手の中で縮こまってしまった。正直もう少し文句を言いたいところだったが、理由が理由だし、モチベにも関わるからここまでにしておく。
「それに、私は役立たずとは思ってないし。」
「......ほんと?」
手から顔を少し出してアルセルはこちらを見上げた。
「ほんと。」
そう言うと先程の落ち込み具合はどこに行ったのかというぐらい元気に飛び回った。
「わーい!!あのあるじから褒めてもらったー!」
「いや別に褒めてな.....おい、あのってなんだ。」
私の質問になんか気にもとめず、元気にくるくると回っている。ほんとこいつちょろいな。
「あっ、そういえばあるじ、思い出したことがあるんだけど。」
回るのをやめ、こちらの目線の高さまで降りた後アルセルは確認するように言う。
「なんか、最近森の方が騒がしくてさぁ。風を伝って調べてみたら、なんかおっかない男どもがたむろしてたんだよねー。」
アルセルは妖精だから自然の力が使える。妖精は自然から生まれた者だからだ。ちなみに精霊とエルフも使える。自然の力とは四大元素のこと。中でもアルセルは火と風に特化していた。
「あー、また湧いて出たのか。店終わったら対処しないとな。」
「もしかして、私いま役に立ってる?!」
目をキラキラさせながら、アルセルは私の顔に迫ってきた。表情はとてもワクワクしてそうな顔をしている。正直、こういう所が少し面倒なので私は軽く流した。
「うん、ヤクニタッテルタッテルー。」
「やったー!!!」
そう叫びながらぴょんぴょん飛び跳ねていた。うん、おまえのその素直さは嫌いじゃないよ。
「そんじゃ店閉めたら出るから、準備しておいて。」
「はーい!!!」
さて、私も装備整えなきゃな。
ヴィーレ 女 17歳 人間
肩までかかっている金髪に青い目をして、常に白衣を着ている。髪は一つに纏めているがポニテではない。←重要
街外れの薬屋を経営している。だが普段ジト目なのと、素っ気なさであまり客に好まれていない。冒頭に来た婦人は例外。数ヶ月前にアルセルを拾ったが、世話を焼いている。ちなみに薬は全て自分で作ったもの。薬の研究ともう一つ、アルセルも知らない研究をしている。
アルセル 女 2歳 妖精
素直で元気な子。自然から生まれたばかりで、運良く他の人間に見つからなかったので奴隷にならずに済み、今はヴィーレの所で暮らしている。だがカモフラージュのために、レプリカの隷属の首輪をつけている。火と風の力が使える。
前回ドワーフを入れ忘れてましたごめんなさい。
異能力については次回出すつもりです。




