戦いと意外な拾いもの
※残酷表現、描写があります。
近くの森におっかない奴らが居座っていることを知った私は、早めに店仕舞いをし、薬入り注射器を五本、太ももについているポーチに入れ、毒が塗ってあるダガーを二本、装備した。どうやらアルセルの方も準備は終わり、いつでも案内出来るらしい。あいつの能力、こういう時便利なんだよな。
「じゃ、行くか。」
「おー!」
◇
◇
◇
〜ある森の洞窟の中の会話〜
「今回はたんまりだったなぁ。」
「ああ!これとか売ったらいくらすんだろうなぁ!」
森の奥である集団がそんな会話をしていた。近くには、奪い取ったものであろう金品が入った大きな袋が2つあった。
「お前ら、次の獲物の目処がついた。」
「あっボス!本当ですか!」
奥の暗闇から現れたのは、ボスと呼ばれる大柄な男だった。
「どうやら、この近くに薬屋があるらしい。その薬屋は結構売れると有名で、しかも店員が女一人ときた。こんな格好な獲物はない。」
「さっすがボス!見る目があるぅ〜。」
薄汚い笑い声が洞窟内で響き渡る。
「その女の処遇はどうする。」
「やっぱ、臓器取り出して売るに限るだろ。」
「いや、その前に遊んでやんのもいいなぁ。」
そんな会話をしていると、ボスが思い出したかのように口を開く。
「そういや、この薄汚い犬の処遇がまだだったな。」
そう言いながら、近くに転がっていた’なにか’の片腕を無理矢理引っ張り上げながら言った。だがそれは、呻き声すら上げず、重力に従っていた。
「まっこいつは、奴隷として売るでいいだろ。もうサンドバッグすらになりやしねぇ。」
「賛成です!」
「異議なし!」
「さぁ狩りといこうか!」
ボスの掛け声と共に、洞窟内には雄叫びが揺れるほど響き渡った。
◇
◇
◇
「あいつら馬鹿なのか?中の会話が丸聞こえなんだが。どんだけ声大きいんだよ。しかも警備ザルだし。」
ヴィーレは茂みに隠れながら目の前の洞窟の方を見る。そう、ヴィーレたちは、数分前、この洞窟前に来ており、今までの会話を盗み聞きしていたのだ。
「ねぇ、いつまで見てるのー?もう飽きたー。」
「安心しろ。たった今、とるに足らない奴らだということが分かった。(言動的に)」
「おっ、てことはついに?」
「乗り込むぞ。だがその前に。」
そう言いながら、太ももについているポーチから注射器を三本取り出し、全部自分の腕に向けて打った。
「毎回思うけど、そのどーぴんぐ?ってやつやめた方がいいんじゃない?ふくさよう?ってやつが強いんでしょ?」
「チビの頃から薬作って自分で打ってるから多少薬や毒の耐性はある。」
「いやそういうことじゃないんだけど。」
そんな軽口を叩きながらヴィーレは毒付きのタガーを一本手に持ち、洞窟に向かって走り出した。
「あっ待ってよー!」
アルセルも急いで追いかけ出す。だがヴィーレは既に入り口の近くにいた男の背後に回り込んで飛びつき、手で口を塞いだあと、手際よく首に向かってダガーを振り下ろした。
「ガッッッ.......!」
男は呻き声を上げ、体をピクピク数回痙攣しだした。。後に動かなくなり、体は毒で青紫色に変色していた。
「一人目。」
そう呟くと、ヴィーレは奥に向かって走って行った。アルセルはそんなヴィーレの言動を見聞きしても慣れたとでもいうように動じず、寧ろ死体に向かってキモいなーと思いながら、ヴィーレの後をついていった。
ヴィーレは洞窟内を進みながら一人一人着実に仕留めていった。すると、騒ぎに気づいたのか、奥からそこそこ強そうな男が三人、ボスらしき男が一人現れた。
「お前か、俺らの住処で暴れまわっていんのは。」
「........。」
「だんまりか。なら、俺の部下を殺した落とし前はつけさせてもらうぜ!!」
ボスがそう言うと、男三人は走り出し、ボスも動き出した。だが、ヴィーレは男たちよりも数倍早いスピードで、華麗に部下二人を切り倒した。
「......は?」
流石のボスも呆気に取られたのか、残った部下と一緒に目の前の少女を本当に自分と同じ人間なのかを疑った。
「………。」
ヴィーレは黙ったまま、’ダガーを使ってないもう一本’に取り替えて構えた。それを見たボスと部下は慌てて剣を構えたが、すぐに部下は切り伏せられた。ボスはなんとか目で追い、ヴィーレに向かって剣を振り下ろすが、スッと躱され、腕を切られてしまう。
「ッッ!いってぇ!」
そう叫んだのも束の間、体に力が入らなくなり、倒れ込んでしまうが、まだ死んではいなかった。
「ッッ!ッッッッ?!」
声を出そうとしてもうまく出ない、力すら入れれなかった。よく見ると最後に切られた部下も同じような症状になっていた。ボスと部下が困惑していると、ヴィーレはようやく声を出した。
「力が入らないのが不思議らしいな?当たり前だ、麻痺毒を塗ったダガーで切られたんだからな。」
そう言いながら、手に持っているダガーをフラフラ見せるように揺らす。
「あっちなみにさっき使ってたやつは普通に死ぬタイプの毒が塗ってあるやつだぞ。わざわざお前らを麻痺させるために、武器変えたんだからな。」
まるで教師が生徒に教えるような声音でヴィーレは二人に話しかける。二人はもうさっきまでの余裕はなく怯え切っていた。
「新しい薬ができたから、ちょうどいいモルモットが欲しかったんだ。」
流石に意味を理解したのか、二人は逃げ出そうとするが麻痺でうまく動けなかった。ヴィーレは、ポーチの中に使っていない二本の注射器を手に持ち、二人に近づく。
「この毒は、体全体の体液を全て毒性があるものに変えてしまうものだ。薬ができたはいいが、成功したのか試す実験台がなかったからな。」
ヴィーレはニコリと恐ろしいぐらい満面の笑みでこう言い放った。
「どうせお前ら生きてても、人に迷惑しかかけないだろ?ならせいぜい私の実験の役に立ってくれ。」
そう言いながらボスの腕に注射器を刺した。
◇
◇
◇
「反応的にどうやら成功っぽいな。血液も途中で色変わってるし。」
そう言いながら。変色した二つの死体を見下ろす。すると、奥の方にもう一人、誰かが倒れているのが見えた。
「なんだこれ?獣人?」
近寄ってみると、犬のような耳と尻尾を生やした傷だらけの幼い少年だった。おそらく狼の獣人だろうとヴィーレは推測した。
「さて、これはどうしようか。」
正直、ヴィーレは盗賊が盗んだ金品を貰って店にまわそうと思っていた。だが、丁度店員を増やそうとも思っていたのである。金品は重そうだし、少年の方も傷が深くて瀕死の状態だ。それに、ドーピングの効果時間もあまり長くない。効果が切れたらぶっ倒れてしまう。
「ねぇ、今回のどーぴんぐはどんな効果なの?」
アルセルが急に話しかけてきた。
「身体能力、腕力、俊敏の底上げ…って今考えてんだよ邪魔すんな。」
「ひどい、気になったから聞いただけなのに。」
ほぼ反射的に答え、アルセルに文句を言ったヴィーレだが、アルセルを見て一つの案が思い浮かび、確かめるようにアルセルに話しかけた。
「なぁアルセル。確か風の力が使えたよな?」
「うん。そうだけど……。」
「なら。」
そう言いながらヴィーレは金品が入った袋二つと、少年の方に指をさす。
「あれとあれ、どっちが運べる?」
「獣人の方。」
それを聞くとヴィーレはニヤリと笑う。
「なら丁度良い。アルセル、風の力でこいつを運べ。私は金品の方を運ぶ。」
「全く妖精使いが荒いなぁ。」
そう言いながらも、アルセルは風の力で少年を浮かせた。
「よし、さっさと戻るぞ。」
「あいあいさー。」
前回異能力について出すと言ったな?あれは嘘だ。
すみません次回は必ず出します。




