第三話「学校生活と塾」
キーンコーンカーンコーン。
15:45に小学校の帰りのホームルームが終わる合図だ。
虹夏は、学校で友達と別れる。
”基本的に”学校は楽しかった。
親友がいた。
一緒に話して、笑って、虹夏はそこだけは“普通の子”でいられた。
その後は16:20のバスに乗って30分ほどバスに揺られて塾へ行く。
そして17時から塾の授業が始まって、18時半過ぎには終わる。
そしたら、仕事帰りの母が迎えにくる。
その時の母の機嫌はシャッフル状態だ。
いつも機嫌が良いとは限らない。
母の機嫌が悪い時は、母の愚痴や話に適当に相槌を打っておく。
そうすれば、たいてい寝る前にはいつもの優しいお母さんに戻っている。
父と違って、母は父がいないときに機嫌が悪くなるが、絶対手は上げない。
そして、話を適当に聞いておけば普通になるから、たちは良い。
平日は、虹夏が起きている間には父と関わることはないので楽だ。
だけど一つだけ、夜中に起きた時、両親の口論がある。
その時は気づかれないように息をひそめる。
翌朝。
6:45に起きる。
もうすでに父はいない。
仕事へ向かっているかは定かではないが。
いつも朝はいないので、平日の朝は平和だった。
惰性でめざめんTVを見る。
そしたら母に「早く用意しなさい」と言われるのが常だ。
何だかんだして8時前には家を出る。
学校についたら8:30の朝のホームルームまで友達とくだらない、生産性のないことを駄弁る。
「昨日のテレビが…」「放課後、駄菓子屋行こー」
一方、学年全体から疎まれてる女の子が存在した。
皆が絶対に無視をする。
もしその子、北川さんに話しかけると周囲から変な目で見られる。
北川さんをかばうと、良くて「正気なの?」と言われて、悪くて、はぶられるという具合だ。
「入学直後、女の子にトイレの手洗い場の水をかけた」
「睨みつけて石を投げつけていた」
「1週間に1回も風呂に入らない」
「不潔だ、汚い、ばっちい」
などの根も葉もない噂が流れていた。
確かめようもないことだったが、確かに近くを通ると独特な匂いがした。
それは小学校6年間で変わったことはなかった。
例えば、掃除時間中。
北川さんの机を運ぶとき「北川菌が移った」「バリア」などと男子が言い始める。
その場に北川さんがいようがいまいが、大騒ぎで掃除どころの問題ではなくなる。
さすがに、先生も気づいているはずなのに。
言うことは「掃除中に騒がない」「ささっと掃除しろ」だけだった。
何が良くないのか注意することもない。
虹夏は、北川さんの机の周りに漂う凍りついた空気を、自分の家にある空気と同じだと感じていた。
この空気感を助長しているのはまごうことなく先生たちだ。
道徳の授業で「差別はだめだ」「いじめはダメだ」「仲間外れされた人の気持ちを考えろ」だの綺麗ごとばかり言う。
だけど実際は、困ってる人を、弱者を助けてくれない。
先生は信じられない、頼ってはいけない存在だと、虹夏は自然に理解できた。
いじめとか仲間外れとかが普通のこの同調圧力が、学校で嫌だった。
虹夏は、北川さんの話題が出てくるのが嫌だった。
だって、「北川さんのことを悪く言わないといけないから」
一度、「北川さんはそんなに悪い人じゃないのでは」と言ったときのあの地獄の空気感。
あれだけは、避けたかった。




