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[#1~2-House of The Alcyon【4】]


 施設からの逃亡。

 姿を消したニーディールとエレリア。

 2人は一体どこに消えたのか。

 何故、忽然と姿を消す事に成功していたのか。

 人類はこの消息不明事案を“SSC遺伝子能力の使用”と公には発表していた。

 だが、実際のところ、当人たちにとってそれは無理な話だった。

 当時、ニーディールとエレリアにはもう倒れる寸前のダメージを負いながら、施設を離れていた。森林地帯を駆け抜け、ただただ走り続けた。

「お兄ちゃん…もう私…無理だよ…、、、」

「エレリア…クソ、、、俺も…もう、、、いや、エレリア、俺の背中へ」

「で、でも…お兄ちゃんも…足が…」

 ニーディールとエレリアは裸足。裸足のまま3kmは走行を維持。走る事しか思考を巡らせなかった。走っている時は痛みなんて気にせず、というか気にする暇も無かった。だが疲労が最大値に到達し、運動器官の一時停止を行ったその瞬間、身体中に痛みが激震。

 どうしようも無く、2人には足への痛みが重点的に展開されていった。釘が突き刺され続けるような、泣き叫びたくなる痛さ。

 セカンドステージチルドレンは、超人的な能力を誇っている。ただ、セカンドもその姿だけを見れば人間。人の器を借りた生命体にすぎない。

「俺は大丈夫だ…、、、エレリアの方が心配だ…」

「う、うん…ありがとう…、、、痛いよ…、、枝が、、突き刺さっちゃってる…」

「…そんな、、、クソ…なんで…なんでだよ…なんでこんな目にあってるんだよ…、、」

「お兄ちゃん…、、お父さんとお母さんは…?」

「エレリア…すまない…」

「お姉ちゃんとヘラーキーは…?」

「エレリア…、、多分、、、みんな死んだ…」

「…!!!そんな…嫌だよ…みんなに、、、あいたい…、、会いたいよ!!」

 泣き喚くエレリアをニーディールは抱擁するしか出来なかった。こんな兄貴失格だ…。ニーディールは彼女を抱擁すると共に自身の能力の過失さを恨んだ。

「もっと俺が強かったら…」

「…お…、、お兄ちゃん??」

「もっと俺が強かったら…、、こんなことにはなってないんだ」

「お兄ちゃん、やめて。そんなことを思うのはやめて」

「エレリア…」

「私だって、お兄ちゃんとみんなと同じなんだから。私にも罪がある。だけど、こんな目に遭わせた奴らを…許すつもりは無い。絶対に殺す。殺さなきゃならない」

「エレリア、ありがとう。だが、エレリアは何もするな」

「なんで?私だって戦えるよ」

「家族をもう失いたくないんだ」

「お兄ちゃん…」

「エレリア、多分、お父さん達は死んだ。生き残ったアルシオンは俺らだけだ」

「うん、そうだね」

「この血筋は必ず残し続ける」

「うん、、え、、?、まさか…」

「エレリア、俺との子供を作ろう」

「お兄ちゃんとの…子供…」

「アルシオンの子供を作るにはもうそれしかない。もう俺たちは人間と関わることは出来ない」

「でも、これからこの世界でどうやって子供達は生きていくの?今私達は追われる身なんだよ?地獄みたいな世界を子供達に遭わせたくないよ」

「ああ、判ってるよ。一つだけ打開策がある」

「え…?」

「血の書き換えだ」

「血の書き換え…」

「奴らはこう言っていた。『セカンドステージチルドレンの遺伝子情報が濃い血盟』と。どうやら俺達には特別な遺伝子が書き込まれているようだ。その力をどうするつもりだったのか知らないが、人間は俺らの能力を欲していた。その遺伝子の書き換えを行えばいい」

「遺伝子の書き換えって…そんなこと、どうやってやるのよ。遺伝子なんでしょ?体内で巻き起こる事象を解決させるなんて無謀なんじゃ…」

「他人の血を輸血するんだよ」

「…え…?!」

「他人の血を採血し、俺達に注射する。一定量以上の回数を重ねれば、アルシオンの血を最小限に抑える事が出来るかもしれない。クリスパーキャス9っていう遺伝子変換技術を知ってる。遺伝子編集⋯技術がある訳じゃないけど、血液で代用が効くものかもしれない⋯」

「え、でも、でも…その他人の血って…」

「決まってるだろ?殺すんだよ」

「そんな…、、、」

 エレリアはまた泣こうとしている。顔を手で隠し、現実から目を背けようとしていた。

「エレリア、いいか?俺達は何にも悪くなんてない。普通に、真っ当に生きていたのに、今、裸足で森林を駆け抜け、血だらけになりながらも生きている。家族を半分以上失ったのにな。俺らには、この世界を生きる使命を託されたと思うんだよ。そのために、犠牲は憑き物だ」

「でも、、幾ら他人といっても…」

「なるべく国民は狙わない。軍人を狙うつもりだ。俺らをこんな目に遭わせた奴らを生かしておく訳にはいかない」

「うん…それだったら…いや、、、そうじゃなくても、分かったよ。私、お兄ちゃんの意見、さんせい」

「ありがとう。血の書き換え“リコンビナント”を行い、その後、子供を作ろう」

「何人殺せばいいのかな…」

「分からない…ただ、少なく済ませるつもりだ」

「さっき…あんなに、、人間を殺したい…て思っていたのに、こんな状況になると急にそんな気が無くなってきた。私…怖いのかも…人を殺すのが…」

「そうだな、ただ人間は平気で俺らに銃撃を続けていた。やめる動作は一切見せずにな」

「じゃあ、人間は私達を…相手を…対象を平気で殺せる度胸があるんだね」

「人間とは、恐ろしい生き物だ。凶器は常に、頭の中にある。所持している武器の中で最も凶暴なのは、脳だ。思考。機転性。人の性。それより恐ろしい武器はないよ」

「ねぇねぇ、お兄ちゃん。かなり先の話になるんだろうけど…、、子供どのくらい欲しい?」

 エレリアの質問で、俺は久々に笑みを零した。こんなに可愛い質問が、この状況で飛んでくるとは思わなかった。思わず顔面が綻んだ俺の姿を見て、彼女も少し口角を上げた。

「そうだなぁ、、、沢山欲しいな。6人とかかな」

「ろ、6人!?ず、随分と…、、、も、、まぁ…、、へぇー、、あ、、ああ、そういう感じなんだね…」

「あー、いやごめん。エレリアの事、何も考えてなかった。出産って辛いよね」

「ううん、大丈夫だよ。私、頑張る。でもこのままだと…産婦人科行けない…よね?」

「そうだね…産婦人科…行けないな…。独学…いや、そんなの無理だよな…」

「産婦人科の人間連れてくるとか?」

「俺らの顔は日本全土に伝わってるだろう。病院なんか行って顔見せたら直ぐに終わりだよ」

「脅して連れてくるとかは?」

「エレリア…、、なんだか人が変わったようにズバズバとクレバーなことを言うな…」

「考えられる事は言っておきたいの。言うと思考が活性化されて、次のステップに進めるような気がするから」

「そうか、じゃあ“脅し”の次に編み出したのはあるか?」

「うん、あるよ。病院の人間、産婦人科を除いて全員殺すの。これが最高の脅しよ」

「ああ…、、、そうか…。取り敢えず…子供のためにも、リコンビナントは必ず成功させるんだ」

「うん、殺すのは…この付近の…」

「そうだな…本来だったら、世界のどっかに飛んで行って、世界の端の方にいる人間を殺せば誰にも見られずに殺せるんだろうけど…生憎俺らは飛行機に乗る金も無い」

「私たち…飛べないのかな…」

「飛べたとしても、今の残された力じゃ直ぐに果てるだろうな…」

「じゃあ…日本人…殺すしかない?」

「仕方無いな…」


 リコンビナント。血の書き換えを行い、アルシオンの血筋を絶やす。セカンドステージチルドレンとしての遺伝子情報を消失させて、遺伝子探知シグナルの解除に挑む。そして、アルシオンとアルシオンの子供を産み、少なからずのアルシオンの嫡出を誕生させる。きっと2人の嫡出はアルシオンの血…SSC遺伝子が最小限に抑えられた状態で生まれる。そうすれば俺達のような目に遭わずに、子供達は普通の生活を送れる。少し考えたら危ない事は分かっている。分かっていても、アルシオンの血筋を絶やすというのは避けたかった。2人が生き残った使命だから。

 リコンビナントの作業に入るため、早速ターゲットの選定に向かう事にした。

 その時、森林が揺らぐ。風では無い。無風だ。

「ねえ、お兄ちゃん…なんか変だよ…。地面揺れてないのに…木が…」

 地震でもない。にもかかわらず、大樹は揺れ続ける。枝のみが揺れていたが次第にその揺れ具合は拡大。葉にも影響を与えていった。

「…ねぇ!お兄ちゃん…、、、、」

「ああ、俺に掴まれ…なんなんだ…」

 すると大樹と大樹の間に、集約されるエネルギー元素の円環が発生。その円環は徐々に回転を遂げ、やがてその回転が大樹にも影響を与えている事を知った。

「…、、、この、、エネルギーが、、、揺籃の正体だ…!!」

 エネルギーの回転が暴風を発生。

 まともに会話することすら困難な状況に陥る。

「お兄ちゃん!!」

「エレリア!!絶対に離すなよ!もう誰も…失わない!」

「お兄ちゃん………!」

 円環エネルギーが、ニーディールとエレリアを飲み込もうとしているかのように、2人をロックオン。エネルギー元へ近づけさせていた。

「こいつ…、、!俺たちを食おうとしてるのか…!?」

「ねぇ!この中に入るしかないよ…!」

「…!そんなこと出来るわけないだろ!」

「でも…、、、もうこれ以上、、!この風に抗うなんて無理だよ!!手がもげちゃう…」

「クソ…」

 円環の内部。中心を視認した。空間が形成されているようには見えない。中は暗黒の空洞。こんなにも暴風を発生させているのに、この円環エネルギーの中には何も混入していない。枝や葉が風の影響で、円環エネルギーの中に入ってもいいものだが、円環が拒んでいるんだ。

 実際、枝が円環を目前にしているシーンを今確認した。だが、枝が円環の中に入ることが無かった。

────

 円環の方から、“自然”を拒絶している。

────

 円環エネルギーが受け付けてないんだ。なのに…俺達はズルズルと円環に近づいて行ってる…。引き寄せられてる。

「お兄ちゃん…!もうダメだよ…私、行くよ…」

「おい…お、、、ああ…分かった…行こう…!」

「うん、お兄ちゃん…離さないでね」

「絶対に離さない!」

 超絶的な暴風。こんなの絶対に周辺地域は更なる被害に遭遇しているはず。きっともうすぐ軍の人間達がやってくる。観測衛星からだって、この異常気象を確認しているはず。もうここには長くいれない…。ここまでなのか…折角、良い計画を思いついたのに…生存を少しでも長引かせられるチャンスを見つけたと思ったのに…。

 ニーディールとエレリアが、2人1緒に円環エネルギー中心部へダイブ。視覚映像では確認出来ない、真っ暗な空間の中に飛び込んだ。

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