[#136-スカナヴィア血戦者との契約締結【2】]
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「アスタリスが変なんだよぉ?」
「へ、ヘリオローザ⋯お前ェ⋯⋯」
こんなヤツから注意を受けた事に憤るアスタリス。この場合だと完全にヘリオローザの言っている事が正しい。だが、アスタリスは注意した存在が受け付けられないみたいだ。
「アスタリス、お世話になるんだからしっかりしなさい」
「────────ああ」
「何よあんた、フラウドレスの時だけ!!」
「黙れ、お前には恨みがあるんだ。この先も絶対ぇに忘れねぇんだからな」
「ハテハテ??なんの事やら??サンファイアぁ〜〜ワーチ、何か癪に障るような事しまチた??」
「僕らを半殺しにしたぐらいかな」
「あ──────忘れチぃた」
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「喧嘩はしない!!」
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フラウドレスのルケニアが三人の首元に迫る。刺々しい黒薔薇が、直ぐにでも、声帯を掻き切る勢いだ。
これ以上ピクン⋯と一瞬でも動けば、フラウドレスのルケニアが猛威を振るう。脅しの一種にしてはやりすぎな気もするが、それ相応の場違いな会話である事を、二人は把握した。その二人に該当するのは当然半純正人間である、セブンス。ヘリオローザに正当性などは通じない。
「⋯⋯⋯はい」
「⋯⋯⋯はい」
「あーーい」
母体であり“母君”からの警告を一応の返答でヘリオローザは反応した。
「もう大丈夫です、続けて下さい」
「はい。ただし条件があります」
「条件⋯ですか?」
サンファイアが頭を傾げる。フラウドレス、アスタリスはポカン⋯と頭上にはてなマークを浮かべるのみ。
「タダで匿うわけがァねぇだろうが。仕事をしてもらうんだよ仕事」
「そう仕事!そう仕事!僕らは七唇律聖教に所属している人間なんだけどね、訳あって公開的な活動が出来ない状況にあるんだよね!──だから〜!だから〜!みんなに、我々の仕事を請け負ってほしいの!」
「さっきと言ってる事違くねぇか?俺ら指名手配みたいなポジにいんだろ?だから匿う⋯っつう話じゃねえのかよ」
「はい。なので今日から、三人の外見に“虚飾装具”を着装していただきます」
「虚飾装具⋯⋯?」
「はい。簡単に言うなら⋯“カモフラージュ”と言うべきものですね。その人がその人では無くなる⋯。別人になりすますのです。新たな存在となって、これから先の将来を生存していく。戮世界テクフルで生涯を終えるのなら、虚飾装具を付ける他ありません」
「姉さん⋯⋯」「⋯⋯⋯⋯」
サンファイアとアスタリスが、フラウドレスへ目を向ける。二人の意見は同じだ。
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『姉さん(フラウドレス)が良いのなら』
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スカナヴィア血戦者はそんな三人を見て、改めて仲の深さを知った。
「良いでしょう。その虚飾装具なるものを受け入れます。ちなみに、それは人間の外見自体を変えるものですか?それとも、着ている服を変え⋯」
「はい。前者です」
「⋯⋯⋯そうですか⋯⋯⋯」
「フラウドレス、この期に及んで、ファッション関して気にしていた訳じゃあるまいな??」
「そのまさかだよ、ヘリオローザ」
「え、マジで??それはビツクリなこったい」
「────いい加減、服を着替えたいの⋯⋯ルケニアで何度もクリーンはしていても、落ちないものは落ちないのよ⋯⋯」
「まぁ、一度は生死を彷徨いましたから⋯⋯」
「ではこれからの仕事の流れについて、徹底的にお話し合いましょう」
「お話し合いをするんですか?そっちから一方的にご説明してもらった方がスムーズに進むと思うのですが⋯?」
「はい、サンファイアの言う通りです。まさしくそれは清らかな心。澄み切った心が映し出す美しいパイプオルガンのようなハーモニーです」
「はぁ⋯⋯⋯」
「なんだお前」
「こちら側から、未来についてお話していきます。ですがそこには、納得のいかない事柄が多数あるように思えます。それを補っていくのです。そうすれば、相補性と安全性、更には付加価値として結束力も不思議と付いてきます」
式セルジュークの説教のような言葉の紡ぎ。七唇律聖教の宗教理念の全容を知っている者と、知らない者がいる、聞き手四人。思い思いの受け取り方なので、味わいは人それぞれだ。




