[#134-β空間回廊!!法線ベクター反転を拒絶する魔女【5】]
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ヘリオローザは悪魔だ。
けど、完全に間違っている行動であるか⋯と問われれば、そうとも言えない。
私にも、守りたい人たちがいる。絶対に失ってはならない、大切な存在。
今ここで会えた⋯⋯⋯。こんなの奇跡だと思ってる。私の弱さは、“白鯨”⋯“メルヴィルモービシュ”に敗北した時から兆しがあったんだね⋯⋯⋯。あの時点で、私がもっと強ければ、全ての外敵を薙ぎ払う⋯近付けない、友達に少しで手が触れたらタダじゃおかない。
こんな言葉を簡単に出せる女じゃ無かったんだ、私。
「式セルジューク」
「はい。法線ベクター反転、発動」
亜空間が肥大化。小宇宙の形成が加速した。
サンファイア、アスタリスは、意識レベルが最低へと落とされ、抵抗の機会も与えられず、亜空間へ取り込まれた。存在事態を実体からデータ化。“高次元記号”と呼ばれる謎の数字の羅列と解読不可能象形文字。
生き物のステータスを数値化する事で、空間転移が開始されるようだ。現実から二人の身体が消失していく事が、若干不安になりながらも、その数値化データ“高次元記号”の羅列が亜空間内に吸入された瞬間を肉眼で捕捉していたフラウドレスは、少し安心した。
ヘリオローザからの物理攻撃で“気絶”したミュラエも、カナン城から実体が消失したサンファイア、アスタリス同様、亜空間内へと誘われる⋯その瞬間だった。
サンファイアとアスタリスが亜空間内へ取り込まれる時とは、異なる事象が発生する。
数値化された人体は、脚部から順序よく身体を崩していく。そこに肉体も液体も無い。ただし、魂だけは視認が可能だ。魂だけは高次元記号に変換する事は出来ない。
ミュラエに発生したのは、魂の高次元記号数値化。場所と場所を往還する際に後遺症が生まれないよう、魂をそのままの形で亜空間内へ取り込むのだが、ミュラエに関しては魂も他の人間を構成する物質同様の結果が待っていた。
「ミュラエ⋯⋯如何にそこまでの技量があるのか⋯」
発動元、式セルジューク。設定していた亜空間許容量を大幅に超過してしまった事が判り、それはミュラエの高次元記号数値化変換拒絶が原因だと推測。
サンファイア、アスタリスが司教座都市スカナヴィアに、到着した。
二人の身体に別状は無い。数値化した高次元記号が、実体を再生成。しかしヘリオローザが未だに、カナン城へ居るので、状態異常は継続中だ。五感の内、視覚のみを失った状態である為、亜空間内を回廊した事実も二人は覚えている。
当然、フラウドレスへの感謝も忘れない。と、同時に⋯フラウドレスが自分たちと一緒に亜空間内を回廊出来ていない事が、二人にとっては不安が募るところではある。
これは、原世界・羽田空港にて、白鯨“メルヴィルモービシュ”から受けた、“光の円盤”の双界転移と似て非なる現象。
『また同じだ⋯姉さんを⋯一人にしてしまった⋯⋯』
『またこれだ⋯。俺は⋯フラウドレスをまた、一人にした⋯⋯⋯⋯』




