[#134-β空間回廊!!法線ベクター反転を拒絶する魔女【1】]
[#134-β空間回廊!!法線ベクター反転を拒絶する魔女]
「薔薇の暴悪、異能者どもをスカナヴィアへ転移させろ」
式ハドリアヌスからの指示。現在、異能者四人の身柄は完全にヘリオローザの手中にある。本行為を間近⋯いや間近どころか“同視点で観測していた”フラウドレスが疑問をぶつける。
「ヘリオローザ、あなたなにしてんの!」
問答無用。ヘリオローザにどのような考えがあるにしろ、四人を気絶させ、重篤症状に陥れたのは事実だ。フラウドレスは激情に駆られ、ヘリオローザの細胞を侵す。
「ああ説明して無かったな。安心してくれフラウドレス、この子たちを空間転移によって、司教座都市スカナヴィアへ連行するだけだ」
「何故?何故血戦者が居る所へ連れてくの?」
「フラウドレスさぁ、現状見てわかんない?ウプサラの壁の向こうには、何千何万もの軍隊が包囲網を張ってる。それだけじゃなく、大陸政府の最主力機関までもが揃ってるんだ。今ここで空間転移を使えば、ヤツらの包囲網を軽々と突破する事が出来る」
こうしてフラウドレスの話を聞いている間にも、ヘリオローザは四人への強固拘束を止めない。フラウドレスがヘリオローザに対する懐疑的な負のイメージを増幅させた事で、薔薇の暴悪を構成する物質が体外へと放流される。次第にその粒子たちはヘリオローザの実体型を形成。
現在の虚偽年齢フラウドレスと同じ姿。言わば、サンファイア、アスタリスと帯同していた時と同等の姿である。
「ちょっとフラウドレス!危ないじゃない!なんて事すんのよ!」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「驚いてるのね。今までこんな事出来なかった⋯って」
「私⋯⋯⋯強くなった??」
ヘリオローザという危険因子を体内で感じ取ったのは昨日の出来事。その時から、ヘリオローザへの疑心を感じてはいたものの、彼女の存在を打ち消す⋯または、削除する⋯といった、“拒絶行為”に該当する類似行動を取れずにいたのだ。
それは紛れも無く、ヘリオローザが強いから。圧倒的な強さ。第7感官の力を持ってしても、ヘリオローザを自我境界から除外することなど出来ようも無かった。
だが、現在、薔薇の暴悪を脅かす程の強力なエネルギーを貯蔵している事実を受け止めたフラウドレス。
実際、自らの判断でしか体外へ移植されることの無かったヘリオローザ構成粒子は、“フラウドレスの強制性”によって外界へ放牧。自分でも説明の施しようが無い事態となっている。
困惑気味のフラウドレスを宥めようと、無理矢理外へ出されたヘリオローザが“ヒューマノイド実体型”となり母体へ肉体的接触を開始。
「な!何よヘリオローザ!」
「私はフラウドレスが好きだ。ラキュエイヌ一族の中で一番に好きかもしれん。こんな良い女はいなかったぞ?」
「ちょ⋯⋯ヘリオローザ⋯あなたほんと⋯⋯ンンん⋯」
ヘリオローザの両手がフラウドレスの胸へと回される。服の上からでもヘリオローザの手の温もりは充分に伝わっていた。
「ラキュエイヌ一族の身体を貪り尽くす⋯そんな通過儀礼みたいなものが、私にはあるのだ。女であれば、こうして身体と身体を重ね合わせ、同性愛としての母体とパラサイトの癒着度をはぐくむ。男であればご奉仕でもして終わりだ」
“本当に彼女は人間じゃないの⋯⋯⋯”
今更ながら、フラウドレスはそんな事を思ってしまう。
恍惚としたフラウドレスの表情がヘリオローザを更なる色欲で満たしていく。胸を主に攻めていたヘリオローザが次なるターゲットとして定めたのは⋯⋯
「フラウドレスの女性器」
「薔薇の暴悪!お前ェ、何やってんだ?あぁ?」
「え、、、なにって⋯⋯ラブラブタイムだよーん」
「そんなの今まで無かったぞ!」
フラウドレスはヘリオローザからの拘束から解かれようと、破れかぶれにその場で暴れまくる。その結果、ルケニア“シャルルマルラン”まで顕現してしまう大事にまで発展。
「⋯!?」
ヘリオローザは母体宿主の覚醒兆候を危惧し、フラウドレスの元から離れる。全長縦に五十メートルは優に超える、一輪の黒薔薇がヘリオローザを“反抗勢力”と識別。
「ちょっとちょっと⋯それ、私が知ってるルケニアじゃ無いんだけど?」
「あなたの力を借りずとも、私は私の力で強くなれる。進化出来る」
「いつまでも他人の世話にはならない⋯と?」
「へぇー分かってんじゃん。あなたは所詮他人よ。過去のラキュエイヌが援助してもらったのかなんなのか知らないけど⋯今に生きるラキュエイヌ一族は私だけ。私が消えたら、あなたは死ぬんでしょ?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
ヘリオローザは黙る。ヒューマノイドであっても感情に幅が効かない訳じゃない。逆に、本物の人間よりも多くの感情解放を持ち合わせている。ラキュエイヌ一族が身をもって知ってきたからだ。




