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[#133-樋嘴者と血戦者【6】]


二分後。

ウェルニは何とか自分の力で生還を遂げた。


「気ィ済んだかァ?おいアトリビュート」

「⋯⋯お陰様でね⋯⋯」

「はい。その落ち着いたご様子ですと、スカナヴィア血戦者からのお話に耳、拝借、いただける形ですね」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

ウェルニは何も言わない。五人の異能者を取り囲むように遺伝子螺旋が伸縮・全体規模増大への運動エネルギーを高めている。これは単なる脅しに該当する行為なのだろうか。

『貴様らを殺すことなぞ簡単な事なのだ』⋯とでも、圧を掛けられているようなものだ。そんなスカナヴィア血戦者が異能者五人への包囲網を取り止める。


サンファイアとアスタリス、フラウドレスは、再会した。

それと並行して、ヘリオローザも母体であるフラウドレスへと魂を寄せ、実体は消失。

ミュラエとウェルニはアトリビュートの仲間を失いつつも、フラウドレスをサンファイア、アスタリスに会わせるという任務を遂行。

だが、セラヌーン姉妹本来の目的であるシキサイシア。結局、“奴隷”と称された自分たちの仲間、アトリビュートは教皇の力で“天界者”となった。


大天使執政官アークエンジェル。

大陸神グランド・ベリートへの捧げものとして生贄の対象だったはずの拘束状態にあったアトリビュートは、戦いの果てにて死んでいってしまった。


セラヌーン姉妹が自分たちの力で命を奪ったのはかつて、七唇律聖教の学術を共に歩んで来たシスターズと教信者。彼等はアトリビュートでは無いにしろ、争いへ参加させる催眠術を掛けられてしまった。


「生死の際を彷徨う、異能者の皆様。もういい加減、自己を大切にするべきです」

スカナヴィア血戦者・式セルジューク。彼女の発言で、カナン城城塞広場は謎の衝撃が走る。地面への掘削が激しいのに対して、ウプサラの壁は全く、崩れる気配どころか、衝撃への回答すら無い。微動だにしない中、五人には衝撃が充分に伝わっている。

ヘリオローザがフラウドレスの神経を奪取すると、残り四人の不安定な心情⋯“何が起きているのか”、“どうして何も起こっていないような空間で完結してしまっているのか”。

四人の情動によって掻き乱され、発動者として全員が認識中の式セルジュークへの攻撃を浴びせようと試みている。

だがその殺意的な類に分けられる“衝動”は、ヘリオローザによって上書き。


「薔薇の暴悪。お前ェ⋯⋯⋯」

「あなたたちが私に植え付けた種が発芽したみたい」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「戦いは、これで終わり⋯だよね?」

「やらなければならない事があります。異能者を司教座都市スカナヴィアへ」

「りょーかい」


遺伝子螺旋は消失。衝撃音は未だに響音。空間への過負荷は相当なもので、重力・磁場への悪影響は、自然摂理への冒涜的行為となった。外敵からの攻撃ローンチをゼロに戻すウプサラの壁を除き、カナン城の面影を無くした戦域の今、ヘリオローザによってマインドコントロール(天根集合知:人的強制性洗脳技術)電波がサンファイア、アスタリス、ミュラエ、ウェルニへ掛けられる。

意識レベルで四人は気を失い、身体はヘリオローザに委ねられた。四人は地面に倒れかける。地面へと各々の身体が接触する直前、地中と異能者たちの真上から、二輪の巨大な黒薔薇が出現。

地中からの黒薔薇は通常時の土から生えるスタイルにて出現したのだが、真上からの黒薔薇は逆さ状態。何も無い空気のみが漂う、平坦な立体的キャンパス。そこから黒薔薇が出現するエフェクトが発生する。

地中からの出現時より、異能者直上出現時の方が、肉眼にて捕捉されうる情報が多かった。

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