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[#133-樋嘴者と血戦者【5】]



カナン城 城砦広場 ウプサラの壁 壁内地──。


「ヘリオローザ⋯⋯⋯そこ、退いて」

「嫌だ。却下。無理。従わない」

「⋯⋯⋯⋯ウェルニ⋯⋯⋯どうやら、、、」

「空気を読めって?⋯⋯私が⋯輪を乱してるって言いたいの?お姉ちゃん⋯⋯⋯」

「そうよ」

「あんたには何も聞いてない」

ウェルニは姉・ミュラエからの返答を待っていた。期待していた。だが、その姉より先に回答を提示したのは、フラウドレスであった。

ヘリオローザから、フラウドレスへの人格制御変更だ。


「ヘリオローザの記憶を全て読み尽くした。どうやら、スカナヴィアの血戦者は、アトリビュートの奴隷制度化について、一切関わっていないらしい」

「⋯⋯は?⋯⋯⋯⋯血戦者でしょ?⋯血戦者七唇律聖教の人間が、アトリビュートの奴隷制度化に無関係なわけが無い」

「それがァ本当なんだよ」

式ハドリアヌス。上空にてポリゴン状を畝らせながら、地上に居るサンファイア、アスタリス、フラウドレス、ミュラエ、ウェルニの前に接近した。伸縮自在な遺伝子螺旋に興味津々となったのか、サンファイアはハドリアヌスが発現している当該異形生命体に接触を図った。すると⋯残り二体いる内の一体がサンファイアに近付く。

その速度は中々に早いもので、周辺にて無造作に転がっていた岩石やら砂粒やらが吹き荒れる事態となった。しかしその異常気象紛いの事態が起きても、五人の異能者に本影響が及ぶ事は無い。

残りの滞空中であった一体が、五人の感覚器官に障害を与えないよう、各々にバリアを生成。遺伝子螺旋の一部で生成されたポリゴン状飛翔体となっており、五人の人体の盾になった。


「俺らァは七唇律聖教に所属してはいるが、結構自由に活動させてもらってる。言わば戮世界テクフルの裏組織みたいなもんだ」

「はい。監視者⋯とでも言っていただいて結構です」

「まぁ本来はぁ、本来はぁ、“血戦者”てぇいう名前が、アルシオン王朝帝政時代から伝わってるもんだからね、出来ればそっちで呼んで?⋯⋯⋯ね?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「ヘリオローザァ、お前、母体を通して全部伝えたんだろうなぁ?お前に付与した“真力”を限定的にした⋯なんてことは言わねぇだろうなぁ?」


「真力⋯?」


「言ったって。なんなのオッサン、さっきっからウネウネさせちゃって。だいたいアンタら人体無いの?見た事無いんですけど、ええっと⋯⋯スカナヴィア?だっけ」

一瞬、母体本来の声が聞こえたが、また直ぐヘリオローザ人格が表れた。

「ウェルニ・セラヌーン、と言いましたか?」

「⋯⋯奴隷にするか?殺り合うなら今始めてやる。優しいでしょ私。“殺し合い”をしよう⋯と仕掛ける前に言ってあげてるんだから。宣戦布告ってやつ?」

「お喋りだなァ女のガキ」

「だったらテメェらの姿さっさと晒せやぁ!!!クソ外道どもがああああ!!!」


「シェーダーグリッチ光線」


能力極大解放のウェルニに対し、式セルジュークが上記の術式を詠唱。能力解放が成され、今ここで間違いなく大爆撃級の火力が一人の女から発動しかけた。だが、“シェーダーグリッチ光線”で、ウェルニの身体に異変が生じる。

視覚効果に撹乱反応を強制的に起こし、幻覚を誘発させた。ウェルニの現在の視界は不良。見えぬはずの者が見えている。それはウェルニが過去に体験した忌々しき記憶。

忘れたかった⋯忘れ去りたかった。

若しくは、忘れかけていた⋯⋯⋯。

なのに、蘇る。また、あの時の記憶が蘇る⋯⋯。


父と母が目の前で殺された、悪夢みたいな日。

絶対に助けられた日。

私が弱かった日。

怯えた日。

悶えた日。

誰も死なずに済んでいた日。

選択を間違えた日。

殺せばよかった日。

私が、変わった日。


「うぁあァァァァァァアアアアアァァァアあぁ!!!!!」


幻覚誘発が引き起こす悪夢現象は、当人が過去に打ち勝たなければ生還する事は皆無。


紛糾するウェルニだが、ミュラエは本行為に及ばせた血戦者に一ミリも怒りの感情を持っていなかった。

ミュラエはスカナヴィアの血戦者が言っている事を信用していたからだ。


「ウェルニは、どうやったら還ってくるの?」

ミュラエは落ち着いた様子で、スカナヴィアの血戦者へ問い質す。妹が雄叫びを上げながら、絶えず、喉への刺激的な痛みを与えているのに、姉の平静っぷりは異常なものと言えた。


「はい。彼女次第でしょうか。その時には、スカナヴィアの血戦者へ悪態をつく事は無くなります。姉・ミュラエは良識のある方でよかった」

「調子に乗らないで。七唇律聖教である事は変わりないんでしょ?」

「はい。血戦者から訂正の余地はありません」

「私の心の深淵を根幹から掘り起こしてみ。そこに眠るのは、“妹に手を上げたら殺す”っていう言葉だから」

この時まで見せて来なかったミュラエの奥底に眠っていた憤激への凶兆。ウェルニとは違い、ミュラエは感情コントロールが自由自在。怒りの感情を滲ませても、能力解放の兆しに繋がる事は無かった。相手に自分の力を悟らせない、読ませない⋯心理解読を難解にさせる話法である。

「ほぉァ⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

「分かったよ分かったよ。血戦者も、彼女の帰還を待つことにしよう!」

「───ありがとう」

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