[#133-樋嘴者と血戦者【4】]
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「貴様が長を務めているのか?では大した集まりじゃ無いな」
「ゲルマニカ太子はもう少し口調の方を気をつけた方が良いかと存じます」
「公爵如きが俺には口を出すな、殺すぞ」
「申し訳無いです。遠路遥々、ユレイノルド大陸からやって来たのです。何か珍種に相当する食物等があれば、頂戴したいのですけれど⋯⋯⋯」
プレミュスの上品な口調から発せられる、能天気な言葉の応酬。プレミュスの周りでそれを笑顔で流す者は一人も居ない。少なくとも、剣戟軍テルモピュライを始めとする通常人類では⋯⋯⋯。
「私も遠路遥々です!ゲルマニカ太子!」
テバルオルム・エレティアナ。ユレイノルド大陸西方区域バーバートボードワーズ女公爵。
「エレティアナは失せとけ」
「ちょっとぉ〜ソイツは酷いじゃん」
「“聖帝”呼ばわりされてぇのか?エレティアナ」
プレミュスが白鯨を繰り出す直前のフォームを取る。それに倣ってテバルオルムもその動きをしようとする⋯が、馬鹿な真似だと脳を回した。
「お前の白鯨、たまには見たいもんだよ。昔、俺に散々な目にあってたなぁ?えぇ??ラツィマー等級⋯だったか」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「ここでやろうってぇのか?」
プレミュスとゲルマニカに緊張が走る。
⋯⋯⋯⋯⋯緊迫した空気感の中、プレミュスが白鯨の発動を停止。頭上にて生成されていた幽玄樹を創造する多元円環が、プレミュスの身体へとリターン。
「多元円環まで出すほど、俺を憎んでるんだな⋯やはり、エレティアナ連中とは詳細な会議を詰めた方がいいな」
「ゲルマニカ太子」
「セリューディア、キュラスサルス、シャープール。七唇律聖教として、テクフル諸侯の公爵をどう思う?」
「戦ごとになると先祖の血が騒ぐらしいですが、それは天使の力では無いみたいです」
セリューディアが答える。
「戦いには、規範が存在します。テクフル諸侯には戒律への反動が減力の元と思います」
キュラスサルスが答える。
「エレティアナの一人が殺されたみたいですが、今何を思っているんでしょうね」
シャープールが答える。
「はーーー!いストーー!ーーーー!ー!ップ」
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「⋯⋯⋯⋯」
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一階エントランスでの牽制。シャープールへのトドメを刺すかのようなカリウス・エレティアナに対する侮蔑。
エントランスに位置する螺旋階段。その螺旋階段を使わず、浮遊降下にて登場したのは教皇ソディウス・ド・ゴメインドとレアネス・シルウィア。二人は手を繋ぎ、仲睦まじくエントランスへ現れた。
教皇の登場によって、一斉に皆が静まり返る。唯一、ゲルマニカのみが、異を唱えた。
「教皇、こちらには来られないかと」
「ソーゴもきになるもん!外!どうなってんのか!」
「レアネス」
「止めたわよ、私も。行きたいんですものね」
「うん!」
「教皇なら、ここに居ても充分に見れるのでは?」
「あぁん?」
シルウィア以外の人間が口を開いた。プレミュス・エレティアナである。
「あなたは??」
「ユレイノルド大陸南方区域メージャングリーンサイトの公爵を務めているプレミュス・エレティアナです。先月の朔式神族降誕日に、大評議会でお会いしたのですが、憶えていらっしゃいませんか?」
「うん、ぜんぜんおぼえてないしぃー、エレティアナの人間きらいなんだよねー」
目を逸らして最初は発言していたが、『きらい』と名言した瞬間、教皇の視線はプレミュスの方を向いた。その眼光はとても一桁台後半の子供とは思えない程、攻撃的かつ狼藉な眼をしていた。
「スカナヴィアの血戦者が、薔薇の暴悪と結託⋯したみたいだよ」
「⋯⋯⋯⋯」
教皇からの言葉に皆が騒ぐ。早々に静まり返った理由は、教皇による物理的な圧力が原因にある。




