[#133-樋嘴者と血戦者【2】]
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「ねぇ、なきすぎじゃない?ソーゴ、そんなに怖いやうにはしないのに⋯⋯⋯。ソーゴのこと、そんなにこわい?」
「⋯⋯⋯やだ⋯。ごめんなさい⋯ごめんなさい⋯ごめんなさい⋯⋯」
泣くアトリビュート。喚きはせずとも声域は、か細い。ここから逆転出来る人生は無い⋯有り得ない。だからこのアトリビュートは、もう奴隷として生きる事を心に落とし込んでいた。
「そんなあやまらないでよ。なんだかこっちまでいけないことをしているみたいじゃないか。───あ、まさか⋯剣戟軍に痛いようにされた?⋯?ここにくるまえに、だれかのご奉仕でもしてたかんじ?⋯⋯⋯それだったらゆるせないなぁ。もうよごされた奴隷なんか、必要ないもん」
「安心してもらって結構ですよ、教皇」
「お兄様」
ゲルマニカは皇室の中で消えたり現れたり⋯と繰り返している。常に自分の能力を解き放っておくことで、スキル向上の兆候が表れるから⋯というのが彼の考えなのだ。
「教皇に提供される奴隷は全てが清廉なままにお届けされています。よってこの女の成れ果てザマは、ただの恐怖による情動となります」
「じゃあ⋯⋯この奴隷、うるさいだけ?」
「はい。黙らせますか?」
「うーーーーーーーーん、⋯⋯だいじょぶ!ありがと!お兄様」
「はい」
ゲルマニカは教皇の前から消えようとする。だが、それを制止させる人物が横から入り込んで来た。
「なんだ?レアネス、外で殺り合うか?」
「いいね、相手になりましょう。だけど、今外では予想を超える事態が始まっている」
「俺らが出る幕は?」
「さぁ?いつでもそうなんじゃない?行ってみれば?」
「⋯⋯⋯スカナヴィアの血戦者がどうして居る?」
「薔薇の暴悪と結託した。彼女には、力が宿された」
「なに?血戦者の力か?」
「いいや、VキューブSに相当するものじゃない。もっと古来より伝わる異形生命体に該当する力だよ」
「レアネス⋯お前それを知っておいて放置していたのか?」
「⋯⋯⋯⋯私に止められると思う?」
「無様だな。俺だったら止めてる」
「無理だね。シルウィア皇室でも、今の薔薇の暴悪を制することは出来ない」
「クソが⋯⋯。んでぇ?どうすんだ。ラキュエイヌ一族の末裔と合体しちまったみてぇだぞ?」
「ヘリオローザの力が、母体宿主と締結。これを止められる術は⋯⋯⋯」
「多元喰星獣が、どうして原世界から戮世界へ、召喚したと?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
「お兄様、お姉様」
「⋯どうされました?」「⋯⋯⋯⋯なにか」
「奴隷死んじゃった」
「⋯⋯教皇、いったい何をされたんですか?」
「ちょっと乳房を引っ張っただけだよ。そしたらショック死で死んじゃった⋯こんなすぐ死んじゃうんのなら、いらないよ奴隷つまんないつまんない⋯つまんないつまんない!」
「ゲルマニカ」
「⋯⋯わかった」
レアネスからの指示。面倒だな⋯と思いながら、教皇の思いを受け取る。もっと賢くて、勇のあるアトリビュート。
直ぐに死へと直結するアトリビュートなぞ、教皇は興味が無い。
「ソーゴもっとあそびがいのある奴隷がいい」
レアネスに飛び掛る教皇。レアネスの高身長170センチメートルに対し、教皇は140行くか行かないか。身長差があるので、レアネスは教皇を抱き締める力を制御しなければならない。
⋯⋯だが、たとえレアネスが力を加減出来ずに教皇へ加えたとしても、教皇は自動的に防衛本能を発動。思考理念に則り、レアネスは殺されるだろう⋯⋯最悪の場合。
「お姉様のからだはとてもやわらかい。プニプニしている」
「教皇のお役に立てて光栄です」
「エヘーン⋯かわいい?ソーゴ」
「ええ、可愛いです」
教皇を包み込むレアネス。レアネスの母性は教皇にのみ開花している。
「お姉様、まだ?あたらしい奴隷」
「少々お待ちを。今、ゲルマニカが新たな奴隷を連れてきます」




