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[#132-胎芽の末裔【3】]


「ウェルニ!」

「─────」

フラウドレスを固定する軌道線が溶融していく。残り香がフラウドレスの身体に浸透。そこに効力は無い。フラウドレスへの攻撃性も一切皆無。

そして、ウェルニは力を消失したかのように地面へ伏せる。フラウドレスのようにうつ伏せになっては無い。

片膝だけ地面へ着く形で、ウェルニは力を減少。その傍に、姉・ミュラエが駆けつける。

「どうしたの?」

「⋯⋯⋯⋯私⋯⋯⋯⋯レピドゥスが⋯⋯⋯」

「なに?レピドゥスが、今のをやったの?」

「レピドゥス⋯暴喰の魔女の事が私を?」

「⋯⋯⋯⋯」

“暴喰の魔女”の事も知っているのか?⋯とミュラエは思った。彼女にその疑問を呈する訳でもなく、無言を貫く。

「いや違う⋯レピドゥスは知らない人と話してた⋯私が、ラキュエイヌを殺そうとした⋯」

「⋯⋯⋯ウェルニ⋯⋯」

「ごめんなさい、ラキュエイヌ。私⋯⋯自分でもよく分からない⋯どうして⋯⋯」

「良いのよ。大丈夫。でもちょっと痛かった⋯」

そう言ってフラウドレスは、硬化樹脂軌道線によって生じた身体への傷を見せる。腹部と両脹脛と両腕。軌道線の締め付け度具合が激しかった部分は問答無用で、彼女に“切れ込み”を入れていった。

赤みがかった傷跡からはフラウドレスが傷跡を確認した後から、徐々に出血が発生。その、時差的な出血が中々に気味の悪い演出として充分な機能を働かせる。


「フラウドレス、これ大丈夫?」

「ええ⋯大丈夫。それより⋯⋯」

とても大丈夫とは思えない純白な肌への裂傷。肌白い美少女に対する怪我ほど、血腥さは増大していく。

「私の事、起こして⋯くれない?」

「ああ、もちろん」

「うん」

ミュラエ、ウェルニは、フラウドレスの想いを受け取る。身体を起こす際、裂傷の加えられた部分が悲鳴を上げる程の刺激を彼女に与えてしまうのでは無いか⋯と二人は思った。

だが、フラウドレスは声を上げない。全く、声を上げなかった。


起こし上げられたフラウドレスに隠れるような形で、セラヌーン姉妹は『スゴい⋯何この人⋯』『タフ過ぎない?』と所感を伝え合った。この声は当人へ聞こえないマインドスペース内での連絡だ。


「ありがとう⋯また、、肩、借りてもいい?」

「もちろんよ」

「うん⋯さすがラキュエイヌね、あなた⋯こんな裂傷を受けても、悲鳴一切上げてない」

「痛いよ?⋯痛いけど⋯⋯⋯私なんかよりよっぽど痛い思いしてる人がいるから。それ考えると自分なんかちっちゃいもんだ⋯ってなるのよ」

声に余裕が出てきたフラウドレス。だがまだ、自立は不可能⋯な様子。⋯下手したら、これは“わざと”なのではないか⋯と疑ってしまうぐらいだ。


「さぁ、行きましょう。もう時期景色が晴れる」





そして、現在──。



サンファイア、アスタリス、ヘリオローザ。

“バーチャリアルキューブサット”群体

式ハドリアヌス、式セルジューク、式フィロクレネー。


ミュラエ、ウェルニ、フラウドレス。


ウプサラの壁を隔て、各々の戦いに身を講じていた若き伏兵たち。


「二人とも⋯⋯⋯」

サンファイアとアスタリスは、即座に反応。今まで感じ取れなかった、大切な人の信号が突然アラートしたのだ。周辺にさえ居れば、その反応は必ずキャッチ出来る。なのに、本信号を捕捉したのは、彼女がこんなに近くなってから。

二人は、彼女の姿を見る。とても“正常”とは判断出来ない状態だ。両脇には、ミュラエとウェルニ。そっちの方の二人は、必死になってフラウドレスを防衛してくれていたのだ。


────────

「姉さん!!!」「フラウドレス!」

────────


こんなに時間を空けたことは無い。

三人はいつも一緒だったから。

フラウドレスの事を、一瞬でも、“死んでしまったのかもしれない”と思ったシーンは無い。

二人は、フラウドレスとの再会を懇願していた。

それは彼女も同様である。


日数的にはたかが、一日。

だが、長かった⋯⋯空白期間。

色々あったがとにかく逢えた。

再び、逢えた。

走れないフラウドレスに対し、サンファイアとアスタリスは見つけた瞬間急加速。足の速さは緩まる事をしらない。

彼女との間は直ぐに埋められた。真隣にでも居たかのような二人の接近速度。

サンファイアは、涙を浮かべながら。

アスタリスは自制。


フラウドレスの眼前に迫り掛けた時、フラウドレスは両脇にて直立サポートを行っていたセラヌーン姉妹から離れようとする。セラヌーン姉妹は、フラウドレスの想いを受け取り、その場から少し離れた。万が一にでも、彼女が倒れそうになったら補助出来るようにだ。

だが、その役目を担うのは、もうセラヌーンの二人では無さそうだ。


「姉さん!!」

「フラウドレス!」

「サンファイア⋯!アスタリス⋯⋯⋯⋯⋯!」

三人は抱きしめ合う。強く、強く。


「姉さんに逢えた⋯良かった⋯!ほんとに良かった⋯⋯⋯」

「大丈夫だった?二人とも」

「ああ、なんとも⋯とは言えないが⋯⋯⋯」

「サンファイアとアスタリスは、私がここに来るかも⋯と思って来てくれたのよね?」

「あ、ああ⋯うんそうだよ。ミュラエに聞いたの?」

「いや、違うよ。私は、あなたたちをずっと見ていた」

「え?見ていたって⋯⋯⋯?」

「どういうことだ?フラウドレス」


フラウドレスはセラヌーン姉妹に告げた幻夢郷ドリームランドでの出来事を、サンファイア、アスタリスにも話した。追加として、あの二人の事についても“流れの中”で話すようになった。


「パレシリアとイリリアス?」

「そう、その二人が幻夢郷ドリームランドで目を覚ました時居て、私を助けてくれたの」

「じゃあその二人は、僕らの仲間だ」

「ハン、本当にそうだかね」

「いいじゃないか、仮にでも姉さんを助けてくれたんだから」

幻夢郷ドリームランドのヤツらなんだろ?さっきまで俺らはそこの首領ドンみてえなヤツと戦っていたんだぜ?簡単に信用して良いのかよ」

「パレシリアとイリリアスは大丈夫。信用に足る人物よ」

フラウドレスの眼差しは固い。それを無下にする理由など、アスタリスには無かった。

「分かったよ。フラウドレスに言われたら信頼するしか無い」

「ありがとう、アスタリス」

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