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[#132-胎芽の末裔【2】]


しかし問題が発生。生成過程が終了した時、ウプサラの壁から赤子の鳴き声が轟く。地響にも酷似した震撃は、三人の走行を拒むようなサインとしても受け取れてしまう。

でも、止まっている余裕は無い。


“シャドウミュラエ”の発現は、ウプサラの壁にとって“撒き餌”も同然であった。

脆弱化傾向にあったウプサラの壁を構成する量子たちが脈動を再開。壁を這っていた量子は、壁から浮き出てくる。馬に似た頭部を併せ持つが、身体全体を見れば皆がそれを“小竜”と呼称するに違いない。

発声に限界点が達し掛けているフラウドレスが、脈動に際し、次なる文言を述べた。

「みゅらえ⋯のダメ⋯⋯⋯それ⋯⋯⋯よびさます、ダケ⋯」

シャドウミュラエの発現は停止。いや、完全に停止出来た訳じゃない。際限無くミュラエから創出された第一次過程における天根集合知ノウア・ブルーム。初っ端にて編み出された天根集合知は、既に幻影空間を生成する段階に入ってしまっていた。

小竜はそこにターゲットを選定。勢いよく噛み付いた小竜は、天根集合知ノウア・ブルームの生体素質をドレイン。

その力を“我がモノ”にしたいのか、続々と小竜は集結。シャドウミュラエに成り経る予定であった生成体は既に、フラウドレスら三人からは切り離されている状態。

フラウドレスも未だに正体不明の病に犯され続けている。


取り敢えず今は、早くこの場から立ち去る事が最善の策だと思い、セラヌーン姉妹は足を急かす。とにかく走り続けた。

天根集合知ノウア・ブルーム発現は危険性がある⋯となってしまった以上、自分たちのアビリティスキル発動には“待った”が掛けられた状態だ。

こんなアナログな戦闘環境に置かれたのは、初めての事だ。⋯⋯⋯異能を最大限にフル活用出来るようになってから数えて。



〈フラウドレス・ラキュエイヌへの精神波長攻撃がシンギュラリティポイント発生の減衰に成功〉

〈ウプサラ量子は?〉

〈未だ健在。壁内部の倒壊は確認出来ません。⋯⋯⋯削除ですか?〉

〈七唇律聖教の動きはどうだ?〉

〈ウプサラソルシエールを発現可能な存在は、各大陸にいますが、この駒を動かしてしまうと、新たなシナリオ創作の文字数を軽くオーバーしてしまいます〉

〈詳細に〉

〈はい⋯⋯⋯、ここで七唇律聖教の参入を決断すると、文字数は五千文字がオーバーの対象となり得ます。当該行為に及ぶ為には、他役者の能力を消去する⋯若しくは大胆に人物自体への徹底的消去で、コストに空白を生むしかありません。しかもそのデリートターゲットに指定されるのは、主要人物です〉

〈⋯⋯⋯⋯⋯盈虚ユメクイさまは何と?〉

〈第7感官セブンス、薔薇の暴悪からの攻撃を防御時、衝撃波によって“SlaughterWorld”からの信号がダウンしました〉

〈幻夢郷としてそんな失態は許されない。早急なセラピーに取り掛かれ〉

〈どうしますか?このままデリートターゲットをこちらで決めますか?〉

〈⋯⋯⋯盈虚ユメクイさまの指示を待て。無い場合、このままシンギュラリティポイントの減衰活動に専念だ。ウプサラの壁内部で行われている“成虫ラーベザイデ”は、一斉にドボンだ〉

〈分かりました。フラウドレス・ラキュエイヌへの軌道修正停止。正常活動を再開。本シナリオ、盈虚ユメクイさまの介入を含む一部分以外、予定通り進行中〉

〈ソディウス・ド・ゴメインドの補強作業も、三人が出次第、再開だ〉




出口を出ると、次第にフラウドレスは力を取り戻していった。しかし速攻で体力が回復した⋯という訳では無く、未だに他者からのサポートが無ければ、直立する事もままならない。


「出口でた⋯⋯⋯でくち⋯⋯⋯」

「うん、出たよ。だけど⋯肉眼では何も視認出来ない⋯のここは本当に⋯カナン城の前なのか?」

ウェルニは黙ったままフラウドレスのサポートに主従。ミュラエは自分たち三人の前に広がる世界景観へ、慄いた。


「ラキュエイヌ、あなた何処に私たちを連れて来た?」

それは、ウェルニからの疑いと共に奏でられた旋律の狂気。今すぐにでも納得のいく言葉が返答され無ければ、首を攫い上げるつもりだ。

ウェルニはフラウドレスを地面に落とす。フラウドレスは受け身を取らずそのまま落下。

うつ伏せ状態となった彼女を仰向けに。ウェルニは、天根集合知“必中絶者軌道”と“超速乾性熱硬化樹脂”を掛け合わせた状態異常を仕掛ける。

軌道を有視化した線を発動させたウェルニは、その軌道線に硬化樹脂をコーティング。これによって攻撃アビリティであった天根集合知が、敵の行動を制御する状態異常アビリティに変化。


仰向けのフラウドレスは天根集合知ノウア・ブルームをまざまざと受ける。上半身は首付近まで、下半身は足先まで。

フラウドレスの行動を極端にまで激減させたウェルニ。硬化樹脂によってコーティングされた軌道線は、フラウドレスの身体を強く固定・締め付けた。その影響により、彼女の胸の膨らみや、引き締まったクビレ、腹筋により生まれた筋⋯女としての肉体素質が服の上からでも露わとなっている。


「ウェルニ!何やってんの!」

「この女⋯⋯向こう側へ連れていく⋯とか言って、違う別世界に誘ったんだ!」

「⋯⋯⋯⋯⋯ち、が、、う、、、」

「へぇーそうかい、戮世界の住人には恨みがあるんだったよねー確か」

「ウェルニ!今彼女の身体には、ヘリオローザがいないんだ。ラキュエイヌ一族は⋯私たちの祖先に卑劣な愚行を繰り返した」

「それ、私たちも同じ事言われるわよ」

「⋯⋯⋯⋯⋯」

ウェルニは黙る。フラウドレスは意識を完全に取り戻してはいるが、力は入らない。今、彼女は異能覚醒が成された瞬間、この女の肉を引きちぎってやろう⋯と画策している状態だ。

「ウェルニ。今更何を言ってるの?馬鹿なの?ねぇ?アトリビュートも同じじゃない。アルシオンがやってきた事の方がよっぽど愚行よ」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

「⋯⋯⋯⋯ウェルニ⋯⋯⋯」

フラウドレスが口を開く。


『この人⋯まさか⋯⋯⋯!』


〈フラウドレス・ラキュエイヌがシナリオ進行違反〉

〈直ちに添削作業を行え〉


『ウェルニがドリームウォーカーによる感情制御下に置かれている⋯。でも⋯止められない⋯⋯⋯これ⋯思ってる以上に固定概念ギッチリされてる⋯⋯。どうしよう⋯どうしよう⋯このままだと、こんなところで死んじゃう⋯殺される⋯』


〈おい、何故フラウドレス・ラキュエイヌを殺害しようとしているんだ?〉

〈システムエラーです。複雑に入り組んだ当シナリオに時空歪曲が発生している模様〉

〈暴喰の魔女も当該行為に反旗を翻しています〉

〈“時空歪曲”⋯⋯⋯?それは、ただのシステムエラーじゃないぞ〉

〈──────“シラユリの巫女”〉

〈シラユリの巫女が、フラウドレス・ラキュエイヌを援助しているだと⋯?〉

〈信じられません⋯先程の第14総局との相対で何かがあったとしか⋯〉

〈レピドゥスの状況は?〉

〈亜空間ネットワークにて滞在中。ティーガーデンとのコンタクトを取っているようです〉

〈マズルエレジーカ=デイドリームの系譜を創成したシラユリの巫女が、暴喰の魔女・レピドゥスと干渉しているのか⋯⋯⋯〉

〈面倒な連中が絡んで来やがったな⋯シラユリの巫女との亜空間ネットワークを構築、繋げ〉

〈分かりました〉


「──────────*******00011011」


〈それでは、現在行われているウェルニ・セラヌーンへの攻撃未遂を停止させて頂こう〉

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