[#132-胎芽の末裔【1】]
[#132-胎芽の末裔]
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「ちょっと待って⋯⋯意味が全然わからない。私たちは、その⋯⋯どりーむ、ウォーカーとか言うやつらに行動を制御されている⋯って?」
「うん、私は、さっきまで幻夢郷に居た。本当はもう少し後で話そうと思ったんだけど⋯⋯」
フラウドレスは辺りを見渡す。光の入射する向こう側。それ以外は、黒色粒子と白色粒子の脈動で完成する世界。新規開拓された洞穴にしては、洞穴が過ぎる。
炭鉱夫たちが丹精込めて作成・採掘していた人工的な“支柱”なんてものも無いのに。
「必要以上のウプサラ量子が私に纏わりついてるから、多分大丈夫。ドリームウォーカーの良識外の範疇に、私たちはいるの」
「それは⋯⋯⋯つまりなんなんだ⋯⋯?」
ウェルニが問う。
「シナリオ進行に倣いながら、別の行動をしているの。進行に反した事を犯してしまうと、向こう側で起きているような状況に陥ってしまう。サンファイア、アスタリス、そして、ヘリオローザが今、“それ”への対処を実行中だ」
「大陸政府⋯では無いの?」
セラヌーン姉妹は、帝都ガウフォンに存在する外敵を、“大陸政府”、“七唇律聖教”、“シルウィア皇室”としか認識していない。フラウドレスの口からは、そのどれにも属さないであろう存在の名称が語られた。
ミュラエは自分たちが目的としている大陸政府壊滅の掲げている為、『敵は他にもいるの?』との思考を併せながら、問い掛けた。
「そんな小さなコミュニティじゃない。私たちの敵はもっと、もっと巨大なものだ。⋯⋯⋯⋯⋯やばいかも⋯⋯さぁ早く行きましょう」
フラウドレスは先を急がせる。向こう側からの入射光までかなりある。だが、フラウドレスが足を急かした瞬間から、時の流れに劇的な変化が発生。折られた紙のように、点と点が一瞬で繋がったのだ。
先程まで、ここに居たのに⋯気付けば向こう側への出口は眼前に迫っている⋯⋯。フラウドレスは必要最低限の言葉のみを吐き、セラヌーン姉妹をここへと誘った。
「何!?どうして?⋯⋯⋯さっきまであんな所に⋯⋯あれ⋯⋯?」
後方へと振り返るウェルニ。だがそこにはさっきまで居た景観と異なるものが映し出されている。
目立った箇所は無い。黒色粒子と白色粒子の物質脈動があるのみ。ではあったはずなのに、今やその粒子は存在しない。
「粒子が抹消された⋯⋯これは、幻夢郷のシナリオよ。ヤツらが見ている」
「⋯⋯⋯⋯誰?」
「⋯⋯ラスミス・パラディン、“夢幻の勇士”。んグ⋯⋯んバァ⋯⋯」
悶えるフラウドレス。確実に身体的なダメージに相当するものだと思考したミュラエは、フラウドレスを抱えた。
「お姉ちゃん!どうしてそんな直ぐに行動出来てるの?!」
ウェルニもフラウドレスを抱える。悶え苦しみ痛みを抱えながら、徐々に力を損耗していくフラウドレスを、状況も一切理解出来ぬまま姉と同じ行動を取った。
「分からない!分からないけど⋯!今はフラウドレスを守る事が最優先よ!この人を失うのは私たちの死をも意味する!⋯⋯フラウドレス!あれが出口よね!!」
聴力が生きているのか分からない。そんな生命維持すらも曖昧なままでフラウドレスへの問答を行う。
「⋯⋯んヴん⋯⋯⋯」
「分かった」
両脇にセラヌーン姉妹。フラウドレスの両腕を支え、肩をセラヌーン二人の首まで持っていった。彼女の身体は突然絶望的な過負荷を受け、麻痺状態となっている。下半身・脚部への力導も完全ブラックアウト。
脚部を地面へ引き摺ってしまう状態となってしまった中、ミュラエは天根集合知“幻影空間真空の抽象”を発現。
体内からもう一人のミュラエである“シャドウミュラエ”を生成し、フラウドレスの脚部を後方から支えてもらう。




