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[#131-脈劇のラーベザイデ 〜シンギュラリティポイント減衰活動報告〜【4】]


フラウドレスの下半身へと忍び寄るラーベザイデ。フラウドレスの触覚がラーベザイデを認識した刹那、ラーベザイデから繭状の飛翔体が編み出された。飛翔体は次々に生成されていく。ラーベザイデの発生数に限らず、飛翔体は一人一個とは相当されない。

一つにつき数個もの飛翔体の規模は、ラーベザイデ一個体よりも小さいサイズなので、視界不良になる時間もそう長くは無い。

ラーベザイデに埋め尽くされるフラウドレス。


フラウドレスはラーベザイデに愉悦感を覚えていた。


「ンフン⋯⋯⋯⋯⋯ンア⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

喘ぎ声とも取れる、妖しい声。ウプサラの壁に触れている掌からも黒色粒子と白色粒子の脈動が始まっている中、向こう側へと続く“穴”が、完全に開きかけた。


「フラウドレス⋯!」

「んうん⋯⋯⋯モウ、、少シ⋯⋯ダカラ⋯⋯⋯⋯」

「まさか⋯⋯⋯ウプサラを全て取り込む気か?!」

「ン⋯⋯⋯⋯ん⋯⋯⋯⋯ンンン⋯⋯⋯」

それは無茶すぎる行為だ。

ウプサラの力を持つ者は、ウプサラソルシエールやプロト・アミレイ、それに準ずる異形生命体ティーガーデンの発現能力規模の特殊異能収束大容量魔力貯蔵が必要。

仮にラキュエイヌ一族の一員だとしても、今のフラウドレスにはヘリオローザが存在しない状態。

フラウドレス・ラキュエイヌは単なる“異能者”に過ぎない存在なので、ウプサラを取り込むなんて行為は、身体への負荷が相当になる。

やがて悲鳴を上げ、全神経組織がウプサラ侵入の防衛行動を開始。細胞レベルでの防衛は、逆に自分自身を脅かす敵となってしまう。


無理をし過ぎるからだ。身体を守るために。


セラヌーン姉妹の常識を覆す出来事が彼女たちの願いを叶えていく。

「ミュラエ、穴が⋯⋯⋯」

「あ、ああ⋯⋯うん⋯⋯⋯」

妹からの“ミュラエ”呼び。なんだか違和感のある呼ばれ方だが、今は指摘している暇なんて無い。とにかくフラウドレスの能力によってウプサラの壁が開かれた。

向こう側の景色は見えない。分厚い壁で出来上がっているのだろう。

だが、“暗闇”と言える訳でも無い。それは白色粒子が生成エネルギーとして機能しているからだ。黒色粒子だけだと世界観は暗闇真っ只中。ニュートリノ・レイソを構成する白色粒子が壁を生成しているので、何とか視界的には安定していた。

これなら安心できる。


ウプサラの壁に完全な洞穴が出来た。フラウドレスが作った穴は、黒色粒子、白色粒子の構成物質が吸入された事が原因にある。

消失、では無く、吸入。

つまりは消えた訳じゃない。フラウドレスの身体中に転移しただけである。フラウドレスを抱擁する超多数のウプサラ構成物質は彼女の吸入によって姿形を失っていく。減衰していくウプサラ構成物質は、フラウドレスとの融合を遂げた。

フラウドレスの身体からは黒と白の渦が楕円を描くように周回。楕円軌道を描くように渦が形成されていき、次第に新たなリングとして進化。

リングは、黒と白の混ざり合わさった色彩を創出しており、回転速度も全てが同等。セラヌーン姉妹がフラウドレスへ近付こうとすると、リングは彼女たちの行動を停止。

止めるだけでは終わらず、そのままセラヌーン姉妹への攻撃が始まってしまう。




回転速度は急上昇。それぞれのリングが回転する度に、各々と摩擦性能を帯びていき、次第にエネルギーの掛け算が始まっていく。摩擦によって発生した二色の攻撃は、セラヌーン姉妹に魔弾攻撃を開始⋯⋯しかけた。


「──────」

セラヌーン姉妹も、リングへの防衛行動に出ようとしていた時、フラウドレスがウプサラの壁から二人へ頭を振る。のっぺり⋯と、その頭を振る速度は空気を舐め回すかのようなスローペースな行為。

「止めな────」

収束する魔弾の攻撃力が一気に低下。

「ごめんなさい、セラヌーン。この子たち、二人の事を敵だと認識しちゃったみたい。私が原世界の人間だから、他世界の生き物を外敵だと勝手に認識しちゃうのね⋯⋯」

「フラウドレスがそうだから?」

「そうねミュラエ。でもあなたたちは私の味方よ。サンファイアとアスタリスに協力してくれたんだもの⋯⋯⋯さ、ウプサラの壁は開いた。この先に行けば、二人に会えるわ」

「⋯⋯⋯ラキュエイヌ、あなたがあっちに行きたいんでしょ?」

「セラヌーンもそうでしょうよ。私だけじゃない。二人も行きたがっている。サンファイアには並々ならぬ想いがあるみたいだけれど」

「⋯あ、、、そ、それは⋯⋯」

「サンファイアは好かれてるのね。前からそう。マーチチャイルドに居る時から、私は感じていた」

「まー⋯⋯なに?」

知らない言葉が出て来て、反応を詰まらせるウェルニ。

「忘れて。“聞こえた独り言”よ」

「そう⋯⋯⋯⋯」

またもや分からぬ表現が飛び込んできた。



ウプサラの壁内部を通る。黒色粒子と白色粒子によるリングを随従しながらのフラウドレスに後追いで付いていくセラヌーン姉妹。


「そんなに離れなくてもいいのに」

フラウドレスは悲しそうな情を込めて言った。なんだか本当に悲しそうで、ミュラエはいてもたってもいられなくなる。

「ごめんなさい、背中を見て付いていくなんて失礼よね」

ミュラエがフラウドレスの横へ。

ウェルニも姉の行動に感化され、フラウドレスの右横へ並行歩行。

「さっきあんた、私らの事攻撃しようとしたでしょ?」

「それが怖くて、横、あるいは先頭を歩きたく無かった?」

「そりゃそうでしょ?あなたはラキュエイヌ一族の人間。アトリビュートである私たちに何をしでかすか⋯」

「何回も言ってるけど、私は二人に感謝してるの。だから何もしない。二人がどんだけの悪党でも、私は味方するわ。誓ってもいい」

「フラウドレス⋯⋯⋯ここなら少しだけ話してもいいんじゃない?」

「どうして、二人の素性を知っているか⋯⋯だっけ?悪いけど、まだその余裕は無い。ここは教皇の巣窟みたいな所よ。監視者がたくさんいるからね」

「そうか⋯⋯確かにそうだね」

「でも私たちは洞穴に入っているよ。あのガキが監視しているのなら、私たち今、ウプサラの壁にプレスされて終わりじゃないの?」

ウェルニの考察はもっともなものだ。教皇ソディウス・ド・ゴメインドが、フラウドレスとセラヌーン姉妹の侵入を認知しているのなら、即座に殺しに掛かるはず。なのに、そんな様子は一向に訪れない。


フラウドレスが吸入したウプサラ構成物質。“量子”にも相当する物質は、かなりの大規模線量がフラウドレスの身に宿っている。

身⋯と言えば良いのか、“随従”と言えば良いのか⋯⋯。


兎にも角にも、彼女の周囲を警戒巡視している事には変わりない。


ウプサラの壁は未だ健在状態にある。となると、完全にウプサラ量子が損失したとは言い切れない。それもそのはず、穴を通行する三人を傍観する存在は、壁内部の縁側を這うように随行しているのだから。


「ねぇ⋯お姉ちゃん⋯⋯なんか付いてきてない??」

「えぇ?⋯⋯あぁ、そうね⋯⋯フラウドレス、ウェルニが何とかして欲しいみたいなんだけど、無理なの?」

「良いけど、この壁、壊れちゃうよ。構成物質が無くなるんだから、壁は倒壊するわ」

「じゃあ⋯⋯早くここから出よう」

ウェルニは走ろうとする。だがそれを拒むフラウドレス。彼女の手を握り“停止”の合図を出した。

「何よ」

反発の思いは思ったより固いもの。相当この世界観が不気味かつ気味の悪いものとして、ウェルニは認識してしまっているようだ。

「────速度を私に合わせて。じゃなきゃあなたは調律の成せない存在として消去されるわ」

「何に?教皇?シルウィア皇室?」

「いいえ。幻夢郷よ」

「げんむきょう?⋯⋯なにそれ」

「あなたたちの先祖は、逃避夢という預言現象に悩まされていたみたいね」

「千年以上前の話だよね⋯お姉ちゃん」

「うん、最近では聞かない逃避夢なんて⋯アルシオン王朝のあった時代ら辺の話だよ」

「幻夢郷は“ドリームランド”と呼ばれている。この戮世界と原世界の物語を創作している語り部軍団が居る場所だ」

「ラキュエイヌ、あなた何を言っているの?こんな時にオススメの映写ブツを語る気?」

「⋯⋯⋯戮世界と原世界は誰かに操られている。シナリオがあるんだよ。そのシナリオに逆らってしまえば、反逆行為と見做され、“軌道修正”が発生する。語り部軍団“ドリームウォーカー”。彼等が創作する物語の円環上に、私たちは立っているだけ。今もそうだ。歩いている理由⋯⋯その理由の果てにある目的。目標が遂行されれば、また次のチェックポイントが定められる。これは、自我によるコントロールでは無い。全て、ドリームウォーカーの仕業なんだ」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

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