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[#130-哭刻の枷主・ヴェルミスラーヴェト【5】]


次元裂溝ゲート。

“次元裂溝”⋯とは何が違うんだろう。

幻夢郷ドリームランドから、サンファイア、アスタリスを見ていた。

二人は多次元生物とのコンタクトによって、私に降り掛かった全てを知り、激情。憤怒に駆られたまま、多次元生物のお陰もあって、対面にあるウプサラの壁内へ侵入成功を決する。


『フラウドレスを救う⋯!絶対に許さねぇ⋯⋯皆殺しにしてやる⋯⋯⋯』

『姉さん⋯⋯!待ってて⋯⋯⋯⋯』



早く二人に逢いたい。

そんな二人の想いに応えられず、私は、肉体をウプサラの壁内にて残置させたまま、魂だけが、幻夢郷へと送還された。

あのままだと、“暴喰”が行われ、完全に私という単体生物が抹消してしまうイレギュラーな事態に突入しかけていたからだ。

救済の一手を加えたのは、盈虚ユメクイ。

そして、幻夢郷ドリームランドに住む、幻夢人のパシメリアとイリリアス。

二人は、私の行く末を見ていたようだ。そんな中で力を貸した。

生命の持続力に僅かな光を与えた。

結果、私は魂だけを幻夢郷へと移し替え、肉体を再構成。元の肉体を可能な限り再現し、生き永らえた。

⋯⋯⋯⋯死んでいたかもしれない。


さぁ、、、どうする、私。

この次元裂溝ゲートを掻い潜って、私には何が出来る?

ヘリオローザがスカナヴィアの血戦者とかいう人たちと繋がってるようだ。


次元裂溝は見たいものを見せてくれる。

と、同時に見たくないものも見せている。

リアルとファンタジーを創出する、虚実の門。


「擬装スィアーチュ⋯⋯⋯と、同じか。あれ、ヤなんだよ⋯⋯」


次元裂溝ゲートはメルヴィルモービシュが開き、私らを戮世界へ召喚した時のとはまた異なった異空間転移の様だった。


「これは⋯なんだ⋯⋯⋯⋯」


引き裂いて。

駄目になる。

命からがら。

足掻いて。

足掻き切って。

全霊に。

部位欠損。

死体損壊。

反対の号令。

脈打つ不安。

最低な人間。

臓物の吹き出し。

露出する人間を支える中身。

取れた骨。

普段見えない水分。

全部が全部他人任せ。

逃げ惑う人々。

性処理に扱われる能力。

魂の往還。

白鯨。

星々を滅ぼす。

遍く大罪。

助からない。

助けられない。

助けようともしない。

誰への心に問い掛けるかを。



「罪罰の─────肉幕⋯⋯⋯」


──────なんだそれ。

聞いた事のない言葉を口にした。舌に馴染みのない⋯発音。


使えよ舌を。

使わないんだったらくれよ。

俺に。

私に。

ウチに。

僕に。

誰かがさ、ソレ、使うんだから。

せっかくだから、ちょうだいよ。


「なんだ⋯⋯⋯なに⋯⋯⋯なんなの⋯⋯⋯!」


このカラダ、いい。

すごくいい。

欲しかったやつだ。

これも。

コレも。

コレもだし。

そっちもだ。

これは。

乳房だ。

触るのは久々だ。

じゃあこっちは。


「やめて!!」


やめねぇよ。

辞めない。

止めない。

やめないって。

やめるわけない。

まだいきたい。

いきたい。

いきたいから。

いきたい。

こどもがまってる。

わたしも。

こどもがまってる。

だから。

うで。

て。

あし。

め。

はな。

くち。

した。

は。

ゆび。


ほしい。


無くてもいいものもほしい。


「私は、あなたたちより生きる意味がある。肉体がある。みんなにはそれが無いでしょ!!」


肉体はオマエからいただければいい。

それで充分。

にく。

にく。

ニク。

肉。

受肉されし神の器物。

うごくにく。

ぼくらうごかないにくいらない。


「私から離れて!」


はなれてたまるか。

はなれたら。

はなれたらもういっしょうであえない。

あなたと。

あなたとであえた。

おまえとであえた。

うん。

きょううん。

であえてない人いっぱい。

まだまだそこにいる。

あっちにも。

おくにも。

見えないところまで。


「お願い。私には大事な人がいるの。みんながなぜ次元裂溝ゲートに蔓延っているのかは判らない。それはごめんなさい⋯⋯⋯。でも、確実に言えるのは、私はまだ希望を持っている。あなたたちはどう?肉体で動かず、物質だけで語らうことの出来る存在だ。それに何が出来る?私は、世界に変革を与える者、原世界の“異形生命体ティーガーデン”よ」


───

───

───

───

───

───


「厳しい事を言ってすまなかったわ。みんな、色んな体験をして死んだのね。原世界と戮世界で亡くなった生物は、次元裂溝ゲート内で生きているんだ⋯⋯⋯」


そう。

そう。

せんそう戦争でしんだ。

虐められてしんだ。

殴られてしんだ。

首を絞められしんだ。

臓器が弾け飛んでしんだ。

生きる気力が無くてしんだ。

性処理に使われてしんだ。

悔いを残さずにしんだ。

力不足があからさまでしんだ。

娘が殺人をしてしんだ。

貧しくてしんだ。

差別があってしんだ。

愛した人が亡くなったからしんだ。

争いに耐えきれなくなりしんだ。

自分の出来なさ加減に苛立ってしんだ。

──────自殺した。

──────自殺した。

──────自殺した。

──────自殺した。

──────自殺した。

──────自殺した。

──────自殺した。

──────自殺した。

──────自殺した。

──────自殺した。

──────自殺した。

──────自殺した。


「“────────────────”、なんて事を⋯⋯⋯。⋯⋯⋯視たわ⋯⋯⋯みんなが、抱えていた内情。⋯⋯それ、全部私が浄化してあげる」


浄化。


「うん。心の中に溜まってる、殺すべき感情⋯⋯。今のみんなじゃどうにも対処出来ないんでしょ?じゃあ、私が落とし前をつけてあげる」


どうして。

どうして。

君は。

どうして。

どうして。


「────私も同じだから。普通に生きたかった⋯それなのに、私は第7感官セブンスとなって、戦場に投げ出され、兵器として運用された。挙句の果てに、連れ帰ってくると思っていた両親は、私を迎えに来ず、そのまま施設へ放置。そりゃそうよ、セブンスだもの。普通の人間じゃないもの。いつ暴走して、自分たちに手を加えるか⋯気が気じゃない夜が続くなら、捨てた方が良い。それに、私は、両親が好きだった。だから、これでいいの。親の選択は合ってるの。でも⋯⋯⋯でも⋯⋯⋯⋯やっぱり、呪いたい。自分の血を、運命を呪うわ⋯⋯⋯」


泣いてる。

泣くのは当たり前だ。

俺たち。

私たち。

だけじゃない。

君も。

我々と。

同じだ。


「空気の読めない人がいるのね⋯。⋯⋯あーあ、思い出したら泣いちゃった⋯⋯。名前も知らなければ、肉体すらも無い人たちの前で、こんな事吐露して、涙流すなんて⋯これ以上の恥辱は無いわ」


恥じる事では無い。


「⋯?」


生きていれば。

誰にだって恥は生まれる。

乗り越えればいい。

かんたんじゃないけどね。

大きいほど。

乗り越えた自分は。

明日に強くなる。


「明日に強くなる⋯⋯⋯これからの私か⋯⋯。ありがとう、何だか勇気が湧いてきた」


フラウドレス。

フラウドレス。

フラウドレス。


「⋯みんなが想う気持ち、ぜんぶ判る。私には判るよ。辛いよね。苦しいよね。哀しいよね。儚いよね。人生って、進み始めたら決まってるようなもんだからね。みんなにはもうここから変革を起こす事は出来ない。ただ、私には出来る。私は、みんなよりずっと、強い女だから!」



虚空を彷徨っていたフラウドレス。その最中、次元裂溝ゲート内部に存在する肉体無き魂だけの器物がフラウドレスを取り囲む。

フラウドレスへの精神攻撃とも言うべきものは、彼等がフラウドレスの意志を汲み取った事によって解放された。

と、共に、次元裂溝ゲートは目標地点である戮世界テクフルへ到着。


視界は眩い閃光で包まれ、眼球を閉じずにはいられなくなる。辺りは光明とした情景となり、全くの予想が付けられない。

今、自分が目を開けているのか、それとも閉じているのか⋯。それよりも現実なのか、夢の中なのかすらも判断に困る現在である。


「⋯⋯⋯ん、、んんん⋯⋯⋯⋯⋯⋯あ、開けれそうだ⋯⋯」

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