[#130-哭刻の枷主・ヴェルミスラーヴェト【3】]
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高速飛行形態は、花糸で紡がれるポットのような隔離追従台座を随伴させる。本ポットの中に組み込まれたのは、イリリアスとパシメリア。
言葉無く、ただただ置かれた状況に唖然としかしないが、兎にも角にも今は時間が無い。
「急ごう。第7総局が現状を知らないはずが無い」
「⋯そうね。フラウドレスさん!普通に言葉で喋ったら伝わるのーー?これーー?」
蕾に隔離されていた時と状況は酷似。だが蕾の時よりも内装は自然に囲まれた感が強かった。蕾時は、単純な造りで守りたい者を守護する為に造られた内装。
今回のポットには、操縦席⋯とも言うべきスイッチが数多く存在していた。
ただしそれは、機械的なボタンとして造られている訳じゃなく、自然に寄り添った“黒薔薇”としてのカタチから、創造されうる構造であった。薔薇の形状で、他のスイッチとは異なるシークエンスへ移行する事を示唆したり⋯と、様式は様々。
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「判るよ」
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「え、、、、、」
フラウドレスは、ポット内に居た。てっきり二人は、ルケニアとの人体的融合を果たしている⋯と思っていたので、パシメリアは言わずもがな、イリリアスも驚いている。
「ビックリしたぁ!フラウドレスさん!このヒコーキと一体化したんかと思ってた!」
「私とは繋がってるだけだ。ほら」
ほら⋯と見せた箇所は、フラウドレス自身の腹部。臍に該当する部分だ。フラウドレスが見せようとする前までは臍帯は有視化状態に無かったが、二人への情報開示で反転運動。
赤黒い鎖状の黒薔薇が何本も巻き付き、臍帯を形成している。その姿に、パシメリアとイリリアスはある一つのアイテムに瓜二つである事を総意させた。
「これ⋯⋯イリリアス⋯⋯」
「ああ、レッドチェーンに酷似している⋯⋯⋯⋯」
イリリアスのナビゲーションによって、次元裂溝ゲートへと到達した。高速飛行形態になったからか、あるいは諦めたのか⋯はたまた、敢えてのスルーか、幻夢郷連邦保安管理局・嘶夢驅が襲撃してくる事は無かった。
五分もの間に、飛行中のルケニアから見えていたのは、幻夢郷の都市風景。
“異世界”と呼ぶに相応しい情景が、地上には広がっていた。戮世界テクフルの方は、全然真新しさを感じなかったの。それは、ヘリオローザが過去に戮世界テクフルへ何年も居たからもあるし、私が三年間居た原世界に似ていたから⋯というのもあると思う。
私は世界を股にかけているな⋯⋯⋯。良い経験⋯と言えるのだろうか⋯。
やっている事は原世界の時と同じだ。外敵と判断した者を惨き鉄槌で屠殺し、存在事態の抹消に尽力。そこに結び付くまで、そう長い時間は掛からない。容易に私は、“殺意的衝動”を手に、足に、臍に、脳から注ぎ込む事が出来る。
簡単だ。私は、ラキュエイヌの人間。
ヘリオローザの手を借りずとも。
だけど、今回は話が違う。
“守りたい”と素直に思える人がいた。それだと、他にも該当者が居るけどね─────。
「逢いたいよ⋯サンファイア、アスタリス」
私が言っているのは、パシメリアとイリリアス。他人なのに、どうしてこうも守りたい⋯護りたい⋯って思うようになったのかな⋯⋯⋯パシメリアが、、昔の私に似てたから⋯⋯⋯?
いや、違う。
私はこんな、他者への愛を思い紡ぐ人じゃなかった。そんな感情が形成され始めたのは、つい最近だと思う。
「これが⋯次元裂溝ゲート⋯」
「フラウドレス、時間が無い。早く」
「うん⋯⋯」
ルケニアの顕現は解かれている。
三人は次元裂溝ゲートの前にいるが、それに最も近しいのは当然としてフラウドレスだ。二人は五歩離れた距離でフラウドレスを見送る。
「フラウドレスさん!」
「うん?」
その、私の名前を呼んだパシメリアの顔⋯どんな事があっても決して忘却の許されない悲哀に満ち満ちた心情の表れだ。
「───────そんな顔、しないでくれ──────」
「お姉ちゃん、絶対に死なないで!!!」
「⋯⋯!!」
その声が届く軌道と軌道の果てにのみ、サイクロン状の風圧が発生した。塒を巻いたサイクロンが、言葉を掛けた先にいるフラウドレスへ迫る。
「パシメリア⋯⋯⋯」
そこにはイリリアスの声も含有されていた。ボイス化されていない為、フラウドレス以外の存在が発声内容を特定する事など不可能なものである。
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『フラウドレスのパートはここから、戮世界テクフルで進行しない分岐が存在している。ドリームウォーカーが当該アナザールートを危惧して、その“最悪”を選択してしまうと、君の友人に絶命相当シナリオで削除されるだろう。気を付けろ、ここからは新篇までのクライマックスだ』
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