[#130-哭刻の枷主・ヴェルミスラーヴェト【2】]
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「フラウドレスさーーーーーん!」
陽気に手を振るパシメリア。
その周辺には大量の第14総局の死体。ラスミス・パラディン、翎鳥シャンタクも、兵士に該当。死体欠損が酷悪で、惨い戦況結果がこれでもかと伝わる。繋ぎ合わさっていたはずの部位は、どこか違う所へと吹っ飛んでいる。胴体がここにあるのに、腕・脚・眼球・手首はまばら⋯。なんて凄惨、ここではザラだ。誰が誰の欠損部位なのかは、フラウドレスにだけ判断可能。
イリリアスの表情は硬い。だがそれは彼の性格を察するに、特に疑問符を浮かべるような問題のある表情作りでは無い。二人が無事で安心するフラウドレス。もっと安心したのは、地上へと降りてからだった。
「フラウドレスさん!」
むぎゅう⋯とパシメリアがフラウドレスに密着。まだフラウドレスの足は完全に地面に着地していない中での、この密着っぷりである。先程までのフラウドレスだったら『ちょっと⋯』等の僅かに残るイヤイヤ感を見せつつも、抱擁していくのだが⋯⋯⋯今回の彼女は違った。
「大丈夫だった?パシメリア」
「うん!フラウドレスさんめっちゃ格好良かった!フラウドレスさん!アレどうやって出してんの!?」
「えっと⋯アレはだね、、、えええっと⋯うーんんんんん」
「ねぇ!ねぇ!今出して!!」
「エァ?今??いや、それはいいよ、やらないよ」
「エエエエエなんでえええ」
「だって、あれば私の兵器だもん。私が敵だと決めた相手にしか、出したくないの」
「じゃあラヴ、フラウドレスさんの敵になる!」
「んはァあ?パシメリア、あんた何言ってんのよ、ちょっとイリリアスも突っ立って無いで、この子止めてよ!」
「⋯⋯⋯⋯⋯」
イリリアスにしては微笑んでいる表情。通常であれば、薄気味悪い⋯と思ってしまう顔の作りでも、イリリアスだとそれは、“笑顔”として認識出来てしまう。
短い間で、フラウドレスは彼の性格を一定量で把握。
「フラウドレス、どうやってあの監視兵器を倒した?」
「アイツらの背中⋯それに、両肩から、操演錦糸のような細長い線が見えたんだ。それは天空へとずっと続いていて、それが何らかのエネルギー供給源である⋯と私は判断したの。その予想が余裕で的中した⋯っていう事ね。こうも簡単に倒せれるような相手じゃないと思ってたよ。もっと骨太な相手だと思ってたから、拍子抜けって感じね」
楽観的にさっきまでの戦闘と攻略方法を振り返った。
「フラウドレス、それは、盈虚ユメクイからの位相ドリームマターに違いない。リバラソール、イェラノーグを始めとする、幻夢郷連邦保安管理局は、盈虚ユメクイからの⋯」
「位相ドリームマターが動力の水源になってるのよね?判ってる。⋯⋯⋯⋯はぁ⋯⋯アイツ⋯⋯私とヘリオローザを切り離しやがって⋯」
「フラウドレスさんは大丈夫??」
いつまでもその両腕を離さない気でいるパシメリア。なんだかフラウドレスはパシメリアへの違和感が削がれていく感情に包まれ掛けていた。
単純に身体と身体が密着する事で、肌の温かさを感じる。こういった生命の温もりを長い期間、感じていなかったフラウドレスは、本行為を『ありがたい』と思うようになっていった。
「ああ、大丈夫さ。何度言えば判るんだ?この〜お!」
「んビビぁひひぃひぃひひひんふふふ⋯⋯フラウドレスさん!くすぐったい!!」
「パシメリアちゃんが私の腹回りにずっといるからいけないんだぞ〜〜〜!」
「んひゃはァっ!んふふふひひはへひぁひぃふぃひひ⋯⋯」
「ルケニア出してトゲトゲしい攻撃でも浴びてぇか?エェ?」
「フラウドレス、次元裂溝ゲートは既に開門中だ」
⋯⋯⋯⋯完全に、忘れていた⋯⋯⋯⋯⋯⋯。
「やべっ⋯忘れてた⋯⋯イリリアス、パシメリア、ナビ宜しく」
フラウドレスに取り憑く、パシメリアを離す。フラウドレスの本気感を見て、さすがに自分の意見を押し付けるのはもうよそう⋯と決意したパシメリア。
「イリリアス、また行くよ!」
「パシメリア待て」
「ん?どした??サッサとフラウドレスさんを⋯⋯⋯」
パシメリアは、イリリアスと融合を遂げ、先よりも神速なスピードを手に入れる為のジェットエンジンを位相ドリームマターで生成⋯しようと画策。しかしイリリアスはそれを拒否。一瞬パシメリアは理解出来なかったが、フラウドレスのルケニア再顕現シークエンスを見て、全てを察した。
「さぁ、行くよ」
ルケニア“シャルルマルラン”が高速飛行形態へとフォルムチェンジ。花弁を攻撃戦闘機のような姿へと形を変え、臍帯との繋がりを増強。母体フラウドレスから放出されたルケニアの力は、幻夢郷への環境適応によって別種のエネルギーを吸入していた。
異世界にて発現されるエネルギーとの融合性は、ラキュエイヌ一族の末裔として生存しているフラウドレスに、進化の灯火を助演。創造された物質を遺憾無く発揮する為、フラウドレスは自身にて眠る臍帯を作り上げるセブンス粒子を、出し惜しみすること無く全解放。
よって、シャルルマルランが高速飛行形態をイマジナリーアウト。




