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竜のしにかけつがい  作者: ちかーむ


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理解する幼竜


部屋にはカチャカチャと器具が片付けられる音のみが響いていた。


ルエルハリオは先ほど運び込まれたばかりの竜人が居る寝台の枕元の椅子に座りじっと眠るその横顔を見ていた。


ミルエディオ様は容体が変わったら知らせるようにと指示して部屋を出て行った。

この竜人の担当は僕ということ。

寝台の横の机に手に持っていたものを下ろす。

手桶と柔らかな布。

花の一つでも⋯そう思いかけいや、不要だろうと思い直した。


その竜人は静かに眠っているように見える。

けれど、ミルエディオ様によって施されている治癒が終わるまでは強制的に眠らされているし、ミルエディオ様が解かない限り目覚めることはない。


パタンと扉が閉められ先輩達が器具を持って出ていった。

心配そうな気配を感じたけれど⋯


僕は目の前の竜人から目が離せなかった。



ぎゅ、と膝のうえに置いた手を握りしめた。


番の生殺与奪の権を握られているという事実が自身を酷く苛むのだと初めて知った。


こんなにも心が乱高下することに慣れていなくて、意味もわからない涙がぽろりとひとすじ頬をつたった。


番。


僕の番。



すう、と息を吸い込むととてもいい匂いでくらくらする。

けれど、匂いに誘われて少しでも触れたら何もかもが変わってしまうような気がして、それが怖くて⋯

触れたいと叫ぶ本能を堪えるためにぎゅうと爪が掌に食い込むほど固く握りしめた。


あの時確かに自分は選んだのだ。 

この竜人の番となる自分を。


そっと、煤と灰だらけの竜に触れた唇をなでる。


ノヴァイハ様のブレスで灼かれた鱗は既に再生している。

人型よりも竜体でのほうが回復が早い。そして人型になるということは自己再生が一段落しているということ。


ーーー危険な状態ではない。


分かっているけれど⋯眠る番を見ていると今まで決して感じたことのないような底しれぬ不安が次から次へと押し寄せてくる。


竜人の鱗は硬い。そして再生速度も早い。けれど⋯体内は鱗に比べれば数倍脆い。


喰われた番の方を救出するために、メロディア様に喉をこじ開けられていたという。その状態で竜王種のブレスをあびたこの竜人は開いた傷口から体内まで灼かれた。

だから、通常よりも治癒術の施術時間が長い。


ーーーそう、理解している。



けれど、理性とは別の部分が叫ぶ。


もう夜が近づいているのに、目覚めないなんて心配だと。

早く目覚めてほしい。

その開いた瞳に最初に映すのは自分でありたい。

そして、名前をきいて、名前をおしえて、番になって、僕を番にしてほしい。


僕を見て、僕を愛して。



鬱陶しいほどに自分本位な思考の一方で⋯

番ってこんな、感じなんだ。

ああ、こうして皆は番に振り回されているんだ⋯


と酷く冷静な目で俯瞰する自分もいる。



病室で突然踊り歌い出して部屋を追い出されたあの竜人も、いきなり香辛料を大量に使った料理を病室で作りはじめ、大量の唐辛子で噎せた薬師達が調号を間違えて廃棄が出たと激怒して王宮内での毒使用の罪で近衛兵に引きずられていった竜人も、号泣しすぎて洪水を起こし、眠る番を溺れさせそうになって出禁にされた竜人も⋯



呆れながら見ていた番をもつ竜人達のその気持ちがわかる日が来るなんで思ってもみなかった。




はやくその瞳をあけて、僕を見て。





番とふたりきりの病室には番の静かな寝息だけが聞こえた。







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