大学へ 1枚目
「よぉ、黒田」
「おはよう、トクサ」
朝、家を出ようと玄関に向かうとき、同じように外に出ようとするトクサと会った。せっかくなので、一緒に大学へいくことにした。トクサは、Tシャツにジーパン、スニーカーの動きやすそうな服装に、リュックサックを右肩に背負い、俺の右側を歩いた。
「今日から大学だったか? そいや、お前は何を勉強しにきたんだ?」
トクサが興味津々に尋ねてきた。
「そうだ。俺は研究だな。物理学を専攻している」
「へー、そうだったのか。俺は、まあ、言うまでもないかもしれねえが、医学をやってるぜ」
トクサは得意げに述べた。
「新しい治療方法の開発ってところか……」
まあ、そんなところだ、とトクサは軽く返事をし、陽気に口笛を吹き始めた。
トクサは俺と同い年、22歳。同じように大学で能力を生かした研究開発をするために、この街に来たそうだ。いつも動きやすい身なりをしているのは、いつ、どんな重大な事件が起こったり、けが人を発見したとき、運んだりすぐに助けにいけるようにしているから、だそうだ。……というのは建前で、実際は極力何も身に付けないで生活がしたいからだそうだ。
大学までの道のりは、シェアハウス『まじる』からそう遠くない。ただ、家から一番近い大通りにでて、そこから大学まではなだらかな坂が長く続いている。また、街自体もそれほど大きくなく、街は円形をしており、端から端まで歩いても、2時間程しかかからない。大学や教育などの研究機関および街の役所等のこの街の存在意義や重要な機関は、街の中心に位置する。そして、先ほども述べたが大通りがその中心にのびており、高い場所にそれらは鎮座しているのだ。
車やバスなど交通機関はこの街にない。それは、この街では、それらがなくとも、『簡単に移動できる住人』が一定数住んでおり、採算が取れないからだ。大通りを走っている車の大半は、貨物トラックか能力を使用した移動などを行っている人たちだ。具体的に能力者はどんな移動をするかというと、物を浮かせつつ、空中浮遊を持続し続けながらの移動や大量の動物を従えて移動する人など、まあそういった歩道を歩くのには適さないものたちが進む道なのだ。




