黒田から
なでしこさんへ
こんにちは。
こちらの生活にもだいぶ慣れ、一週間が過ぎようとしています。
明日から大学に通うので、また少し環境が変わります。
手紙を出したばかりなのに、またすぐ手紙が届いて驚かれるかもしれません。
ただ、とても驚いたことがあったので、それを伝えようと思って手紙をしたためています。
実は、こないだの手紙を出しにいくとき、俺は一度死にかけました。
この街は、自分の持ちたい能力を持つことのできる特別な場所です。
だからこそ、どんな力がはびこっていてもおかしくないのです。
それで、なでしこさんが今いる場所のように平穏なのは、この街の住人たちの良心、住人一人一人の使用できる能力の限界値の設定、そして暴動を押さえ込む優秀な部隊が存在しているからです。
一人一人が使用できる能力は、なでしこさんもご存知かと思いますが、その人の潜在能力に依存しています。しかしながら、どれくらいの規模で、どれくらいの精度で使えるかは、この街で特殊能力を使えるようにした研究機関『創発』でさえも、未だに解明できていないものです。
それを前提として話を聞いてください。
俺は、『口にした言葉を力に変える』能力を持った人物に、「死ね」と言われました。
本来なら、俺の命はもうすでにつきているはずなのです。
なぜなら、その能力者の知人曰く、『具現化する力に長け、潜在的な能力値も高いだろう』ということだそうです。
なので、本当なら、その能力者の言葉によって、俺の命は死というものを具体化したはずです。
だけれども、俺は生きています。
それにはいくつかの理由があげられます。
一つ目は、その発せられた言葉が、心から思っていなかった、という可能性。
二つ目は、こちらでお世話になってる住人の中で、治癒に長けた能力者がいたため、回復スピードが早かった可能性。
三つ目は、俺自身が設定した能力の影響、という可能性。
以上、三つが考えられます。
どれが一番作用したのかはわかりませんが、とにかく命あってよかったです。
なんだか、なでしこさんを不安にさせるようなこと、ばかり書いてますね。
とりあえず、今は元気にやっています。
そのあと、住人の方には歓迎パーティをしてもらいました。
大きなシェアハウスのテーブルに、ホールケーキにフライドチキン、色とりどりの野菜に、グラタン、壁には輪っかやお花で飾り付け。
とても楽しかったです。
そのときの写真も同封しておきますね。
では、またお手紙出します。
お元気で。
黒田




