アレクの誤算4
婚約話が出た時も、信じられなくてーーだけど、これだけは言っておきたかった。
「私は、アリスが好きだから婚約したんだ」
「私もアレクが好きだから婚約話に頷いたのよ」
アリスの好きな花畑で、そう言いあって笑っていた。
アリスと婚約してから、全てが変わった。
教育係もウェスタリス公爵家が紹介した者に変わり、使用人も入れ替えられた。
息がしやすくなり、視界が広がるようだった。
だから、余計にアリスを大事にしようと何度も思った。十歳の頃、アリスの母が亡くなった時も側にいて、一緒に泣き明かした。
十二歳になり、アリスは薬師として少しずつ注目される様になった。同年ウェルネス公爵が再婚して義母と義妹が出来た。
その後新しい家族と上手くいっていないことを悟って、卒業したらすぐに結婚して家を出ようと言う話もした。
♢♢♢
こうして、アリスと苦楽を共にしながら、幸せな日々が過ぎてゆく中ーー二年前、突如私の上に、天から聖女が舞い降りてきた。
聖女は天崎陽美と言う名で同い年の少女。
日本という国からきたらしい。
この国には異世界から聖女が来たなら、聖女と結婚した者が皇帝となる法がある。
それは、長子相続の法より勝る。
最初は彼女を聖女と認定するには早いと反発したが、天崎陽美は天災や流行病の予知をあてて、事前に対策していたおかげで多くの命が助かり、神殿が聖女と認めるまでに至った。
これまで、ウェスタリス公爵家のお陰で誰から見ても立派な皇太子になれたという自負があり、いずれ次期皇帝になり、そうなればアリスに報いれると信じて疑わなかった日々に、亀裂がはいってゆく。
(このままだと今婚約者のいない第二皇子が、皇帝に選ばれてしまう……突然、状況が変わってしまうなんて)




