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アレクの誤算2


 私は必ず、次期皇帝にならなければならない。


 そう考えはじめたのはいつだったか。

 それはーー


 私が〝彼女〟に与えられるものが、皇帝の妻という座しかないと自覚した頃からだ。




 私の母と父は学園で恋愛して結婚をした。当時、皇太子であった父には婚約者がいたが、数多の反対を押し切り母を皇太子妃にした。


 皇太子が妻にできる者は一人であることから、元の婚約者は当然別の家へ嫁いだ。


 そして、懸念された問題に直面する。


 平民である母に公務が出来なかったのだ。皇太子妃である時は父が全てを賄い、なんとかなっていた。

 そのせいで子を儲ける機会は無いほどに忙しい日々が続いたらしい。


 母なりに懸命にできる公務はしていたようだが、それまで準備していた者と十八歳から初めてする者では出来栄えは歴然で、前婚約者と比べられて気に病んでしまい表に出れなくなった時期もあるという。


 そうして、父が皇帝になるとこれまで通りにも行かなくなり、とうとう高位貴族から皇妃を娶ることになった。


 歳は母よりも十歳下だが、由緒正しい伯爵家の生まれ育ちのせいか気品溢れる才女で、公務を滞りなくこなしあっという間に王宮内を仕切る様になる。


 母は焦りを抱いたが、私が生まれた。

 しかし、一年後に皇妃にも息子が生まれた。


 私の幼い頃は皇妃の子供が次期後継者であるという噂は、使用人達の人目を憚らない陰口から私の耳にも届いていた。


 何故なら、まず。

 皇太子教育ーー歴史・外交・軍事・防衛・教養・文化・文学・哲学・宗教・マナー・礼儀作法・芸術・音楽・経営・交渉ーー数多あるはずなのに、その全てが中身などあってないような内容だったからだ。




 母が平民ということは王宮内に後ろ盾ーーつまり仲間がいないも同然。私に利用価値を見出すならともかく、ただ育てて得をする家門はない。


 そして皇帝は中立でなければならず、悪戯に波風は立てられない。


 同じ教師から学ぶが、内容に極端な差が出たとしても、それは私の実力で終わってしまう。


 基本的に長子が皇太子となるフォルゲン帝国であるが、あまりに愚かな皇子は成人を迎えられないこともあると、これも陰で囁く使用人達の話の中で聞いた。



 同じ年頃の子供達を集めた初めての茶会では、皆が第二皇子の周りに集まり話しかけた。



 隣り合って座っているのに、明らかな差は、七歳を迎えた私に使用人達が言っていたことは事実なのだと裏付けるようでーー


 照りつける太陽が、やけに熱いと感じた。


 

 そんな時。


 私に話しかけて来たのが、遅れてやってきたアリスだった。





「具合が悪いのですか?」




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