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藍上 おかきの受難 ~それではSANチェックです~  作者: 赤しゃり


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後片付け ③

「やあおかきちゃん、生還おめでとう。 どこ行ってもトラブルに巻き込まれるね君」


「ただいま戻りましたキューさん……私も隙で巻き込まれているわけじゃないんですけどね」


「ゲッホゲホエッホエッホ! も~火力強すぎたわ!」


 爆発の余韻で立ち込める煙にせき込み、転げたまま天井を見上げる私たちの顔はきっと煤けているのだろう。

 だがそんなことも気にならないほどに、今は元の世界へ戻ってきたことにただ安堵するしかない。


「とりあえず報告は後で聞こう。 バミューダ迷宮から帰って立て続けの事件だ、今度こそゆっくり休んでくれ」


「いえ、私ならまだ大丈……おっととと」


 立ち上がろうとするが膝が笑ってしまい、うまく力が入らない。

 どうやら自分が思っている以上に消耗していたようだ。


「さすがに ジャイアントトルネードチェーンソーヤマタノメカシャークとデバガメの連戦はきつかったようですね……」


「おかき? なんて?」


「相当疲れておるようじゃのう、今日は家に泊まったらどうじゃ?」


「おいらもそうしたほうがいいと思うよ、ここなら下手なホテルより安全だ。 ゆっくり休息を取ればいいさ」


「ほなうちも泊まってええか? 念のためやけどまだ霊の影響残っとるかもしれへんし」


「そうね、おかきのことだしまだ油断できないわ」


 否定する気力がない、後ろから肩を支えてくれたウカさんにただ身体を預ける。

 さすがに1日3件目のSICK案件はごめんだ、身が持たない。


「辛蔵さん、一応確認しますが他に妙なお土産は持ち帰ってないですよね……?」


「だ、大丈夫じゃよ……たぶん」


「これで何かあったら絶縁するからねおじいちゃん」


「天地神明に誓おうとも!!」


「ウカ、お爺ちゃんの部屋入っていいから調べておいて。 怪しいものは全部捨てちゃっていいから」


「任された」


 天地神明への誓いは虚しく、最愛の孫から向けられた信頼は残酷なものだった。

 せめて辛蔵さんのコレクションが1つでも多く残ってくれることを願うばかりである。


「……そうだ。 ウカさん、すみませんがこれを」


「ん? なんやこれ……バラバラの人形と生米?」


「現地協力者です、捨て身の作戦を指示してしまいました。 せめて供養をお願いします」


「なるほどな、キッチリ弔ったるからうちに任せとき」


「そうよ、あとはSICKに任せて私たちはゆっくりしましょ。 どうせなら山田も呼んで女子会しない?」


「山田ならおるで、ずっとそこに」


「あっ、本当だ」


 ウカさんに言われるまで気づかなかったが、扉の隙間からチラチラこちらを覗くピンク色の髪の毛が見える。

 いつもなら呼ばれなくても我こそはと目立ちに来るはずなのに、今日はなんだかしおらしい。


「新人ちゃん……生きてる……?」


「生きてますよ、見ての通り疲労困憊ですが」


「どうしたのかしら、今日は借りてきた猫より大人しいじゃない」


「まあ……悪花が死んだ言われてまだ立ち直ってないんやろ、許したってや」


「「あー……」」


 そうだった、悪花さんの死の真相についてはまだ甘音さん以外には話していない。

 忍愛さんにとってはバミューダ迷宮から立て続けに友人を失うところだったわけだ、ナイーヴになっても仕方ない。


「……うん、まあ……いつまでもふさぎ込んでいても仕方ないわ。 今夜ぐらいパーっと騒いで気分転換しましょ!」


「せやな、言い方悪いけど人死にも珍しくない仕事や。 はよ立ち直ってもらわんと次は自分が命取りになるで」


「よし、そうと決まれば女子会の準備ね! ……この惨状からはひとまず目を背けて!」


「ずいぶん派手にやっちゃいましたからね」


 大広間に敷かれたカーペットには真っ黒な焦げ跡が残され、室内の調度品は見るも無残になぎ倒されている。

 脱出のために必要な爆発だったが、残された物的被害は無視しがたいものだ。


「ふふふ……お母さんに怒られるわね、おじいちゃんが」


「!?」


「甘音さん、私たちも共犯なのでちゃんと怒られましょう」


「冗談よ、それにしたって私たちも煤まみれね。 それに塩と汗でベタベタよ」


「いい具合に下味がつけられていますね」


「誰が食うねん」


 いけない、ついカフ子みたいな冗談がこぼれてしまった。

 ただ爆発直後に生じた穴を無理やり潜ったせいで煤だらけなのは事実だ、シャワーは無理でもタオルで顔を拭うぐらいはしたい。


「……よし、おかきたちはどうせ泊まるのよね? ならちゃんと全部綺麗にしましょ、たぶん配管に損傷はないはずだから」


 何か思いついた甘音さんがパンパンと手を鳴らすと、広間の外で待機していたメイドさんたちが静かに動き出す。

 この爆破跡地を見ても動揺しないのはさすが天笠祓家のメイドさんというべきか、常日頃から慣れているのだろう。


「着替えは……私のお古を引っ張り出せばなんとかなるわね。 キュー、この場とお母さんへの説明は任せたわ!」


「ほいほーい、ただ叱られる焼くまでは承れないからなー?」


「分かってるわよ! ほら行きましょ」


「ちょちょちょ甘音さん、行くってどこに?」


「これだけ汚れたならそりゃ決まってるでしょ――――お風呂に入るわよ、おかき!」

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おかき、あなた憑かれてるのよ
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