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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第14章 魔女の断罪
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14-8

 


 たくさん話をしたから少し休憩を挟もうとハインリヒ様は魔法陣を解除しベルでフォルカーさんを呼び出した。


 アレクシス様の手土産のチョコレートのシフォンケーキに生クリームを添えて、紅茶と一緒にフォルカーさんが持ってきてくれたのを見たら、何だか気の抜けてしまった私は、急にお腹がすいて、キュルキュルとお腹を鳴らしていた。


「フフ、今日は可愛い魔物をお腹に入れているね、ティアナ?」

「うう、お恥ずかしい限りです、アレクシス様」

「今回はハインリヒに譲るけど、来世こそは僕と結婚してね。約束だよ?」

「へ·······?」


 アレクシス様はニコニコと笑いながら紅茶を口に含んだ。


「師匠、早い者勝ちですよ。次も俺が頂きます」

「えー?じゃあ、今世譲るのやめようかな」


 わちゃわちゃと話を繰り広げる2人を見ながら、ふとここまで知っているなら、この2人はもうわかっているんじゃないかと思った。


 ノエルが1人だけでなく、2人と契約したと知っても、2人とも平然としている。わかっているから、敢えて質問しなかったのだろうか。


「········2人とも、ノエルが契約したのが1人じゃないのに驚かないんですね」

「········ティアナ」


 ハインリヒ様は手に取ったカップを置いた。


「疑問に······思わなかったのですか。私1人に対して、ノエルの契約した、つがい候補の魂が2つなんですよ。おかしいとは思わないのですか······?」


「まあ、普通に考えたら変だけど、ティアナの場合は仕方ないと思うよ」


「私は·····あなた達と長く添い遂げることは出来ない·········」


 持ち上げたフォークを皿に置いて2人の顔を見たら、ただ優しく笑うだけだった。


「知っていたんですか?······私の身体の寿命が人のそれより短いことを」


「想像の範囲でだけどね。何せ、『贄の魔女』は皆寿命を全うしないから、正確な判断は下せない」


「·············知っていて、あんな馬鹿な契約をしたんですね·······何で·······っ」


 ポタポタと涙が零れた。せっかくの甘いチョコレートシフォンかしょっぱい。


「········エレオノーラが僕に魔術裁判所の事を頼んできた時には、彼女の逝去の一年半前だったけど、僕に隠れて血を吐いていたことは知っていたよ。おそらく契約をした当時の当主もわかっていたと思う」


「········っ·······ごめんなさい」


「君が謝る必要なんて無い。寿命が短かろうと、それでも君を愛してしまうのは僕達自身の責任だ」


 どこまでも優しい2人に、私は堪えきれず嗚咽を漏らした。


「私の魔力に、心臓が耐えられなくて····身体がもたないんです······エレオノーラでいた頃にはいつもより身体が少し弱くて······他の代よりずっと早く心臓に負担がかかりはじめてて······ノエルは転生する時には、魔力に耐えうる身体を用意してくれているのに·······いつも私の魔力が邪魔ばかりする」


「········あの時、言って欲しかったよ······それでも、君のその魔力ごと愛してしまったんだ。僕達も、ノエルもね」


 アレクシス様の温かい眼差しは消えなかった。


 顔を崩して涙を落とす私に、2人はただただ優しかった。


 いつの時代も、私の手を引いてくれるのはヴァンゲンハイム家だった。


 私を愛してくれたのはヴァンゲンハイム家だった。


 こんなにも優しくしてくれる彼等に、私は一体何をしたら恩を返せるのだろうか。


 あと一年で、魔術裁判所が開所になる。


 その前にやるべきことはやらないと。

 特に、アレクシス様にはエレオノーラが死んでからずっと1人で背負わせてきた。


 本来私が取り組まなくてはならないことを、魔女として初めてヴァンゲンハイム家当主に全てを打ち明け、王家との繋ぎから公的機関の調整まで全てを託してしまった。


 私が出来る全てをこなそう。


 彼等に報いるために、私が出来るすべてを。


 全て、終わったら·······


 今度こそノエルに願うよ

 転生する度に喉まで出かかっていた私の本当の願いを



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