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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第14章 魔女の断罪
125/139

14-7

 


 こんな百科事典10冊全部が私への愚痴?嘘でしょ、そんなねちっこい真似をニクラス様がするなんて······


「ノエルを呼べ、ティアナ」

「へ?あ······はい」


 ノエルは相変わらず無表情だが若干嫌そうな顔をしながら現れた。


「ノエル、すまないが少しだけ質問に答えてくれ。ニクラスは手記の通り、お前と契約したんだよな?」

「············」

「·········ノエル、どういうこと········?」


 契約?誰が?何の?


 ハインリヒ様が分厚い本の頁を開く。こんなに大きな本なのに、細かく綺麗な小さな字でみっちりと書き込まれていた。


「俺達の初代当主は、散々お前にプロポーズを断られた挙げ句寿命前にお前が死んで、嘆き悲しみの余りノエルに自分の寿命と引き換えに契約を申し入れると、最後に書き記しているんだよ」


「私が·····死んだあとに、ニクラス様が·····?」


 どうして?私が死んだあと、手に終えない事件でもあったの?


「ノエル、答えてくれ」

「···············」


 ハインリヒ様の言葉に、私もノエルを見ながら言った。


「ノエル、教えて。ニクラス様は、本当にノエルと契約をかわしたの?一体何があったの?彼とどんな契約を交わしたの?」


 ノエルはフンと鼻をならし、私をチラリと見た。


「君が望むなら教えてあげる。ニクラスはローザが死んでから毎夜毎夜泣くようになった。ほんと煩くて、毎日毎日アホみたいにローザの名を呟いたかと思うと、ある日同じ血筋の弟子をとって魔術を教え始めた。『審判の魔術師』の仕事が引き継ぎの終わると、君を呼び出す召喚魔法陣が発動し、代わりに僕が行ったんだ」


「······それで、どうしたの·····?」


「記憶を消すために喚ばれたのかと思ったら、バカなニクラスは、契約をしろと僕に迫ったんだ。ただの人間ごときが、僕と契約するなんてあり得ないと断ったんだけど、思いつきで条件を出したらニクラスは快諾したんだ。だから契約してやった」


「どんな条件?なんの契約を····」


「ニクラスが提示した契約は、『何度転生してもローザに会いたい』だよ」


 ニクラス様が········


 命を投げてうってまで、そんなバカな契約を?どうして私なんかに·······


「僕が提示した条件は『彼女の魂を永遠に愛し抜くと誓うなら、転生後つがい候補の器に入れてやる』だ」


「つ······つがい?!」


「ニクラスは快諾した。だから提示された契約を履行してやった。ただし、僕の出した条件に反すれば、僕は否応なしに契約を破棄するつもりだよ。今もね」


「今も······?」


「ニクラスは何度も君の魂だけを追い求めて転生してるよ。いまはコイツの身体にいるけど」


「え······?」

「あ、やっぱりそうなのか。そうじゃないかと思ったんだ」


「ハインリヒ様が········?」


 ハインリヒ様は、ニクラス様の生まれ変わりっていうこと······?


「コイツがつがい候補であるヴァンゲンハイム家当主の身体に入るのは、ニクラスを含めてもうこれで4回目だよ。コイツは周りに女がいようが君以外に見向きもしないだろ。だから取り敢えず契約は続行してやってる。アレクシスもね」


「ア······アレクシス様まで?!」


「ああ、そうかもとは思ってたんだ。僕は何回目になるのかな。ちなみに僕の契約内容を聞いてもいいかい?」


「ノエル!私にも教えて!」


 アレクシス様は淡々と当たり前のように笑いながら話し、興奮と混乱覚めやらぬ私はノエルに食ってかかるようにお願いした。


「いいよ、僕の魔女。アレクシスは4代目の当主が初めてだね。君のつがい候補の身体に入るのは3回目になる。提示された契約は『転生を繰り返しても彼女の傍に居たい』だ。僕が出した条件はニクラスと一緒」


「アレクシス様までそんなバカな契約を?!」


「うむ。我ながらロマンチックな契約だな」


 アレクシス様は深く頷き顎に手をあて笑った。



「2人ともなんて馬鹿なことを·······」

「馬鹿とは失礼だな」


 私の知らないところで、2人が契約をしていたなんて。しかもこんなワケわかんない条件を飲むなんて、そんな········


「ねえノエル、なんで契約にそんなヘンテコな条件をつけたの?しかも······つ、つ、つがい候補って言ったわよね?何故それが皆ヴァンゲンハイム家の当主ばかりなの······?」


「全部君が言ったんじゃない。『人間を愛したかった。人間に愛されてみたかった』って。『恋人にするならこんなカッコいい人がいいな』って。だから毎回つがい候補は、君を愛し続ける気概がある魂を、好みの顔となるこの一族に入れることになる。必然的に、王家より君と接点の多いヴァンゲンハイム家の次世代当主が候補の器になる。君は案の定、毎回ヴァンゲンハイムの男を恋をする」


「ふえ······っ?!!私が?!」


「ふむ。魔女はうちの血筋の顔が好きなんだな、成る程」


 アレクシス様はこくりと頷いた。


「確かに、王家は真面目で顔面の良い者が多い」


 ハインリヒ様もうんうんと頷いた。


 否定出来ない。だってハインリヒ様もアレクシス様もお顔はとても端正だ。私って面食いだったのか。


「さて、納得してもらったところで、話を元にもどそうか、ティアナ?」


「え·······あう······っ」


「そんな可愛い顔しても、罰は絶対に変えないよ。300年もの間、振られ続けた俺らの想いに、身を挺して報いてもらおうか」




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