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ヴァンゲンハイム家の魔術師  作者:
第14章 魔女の断罪
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14-6

 


 はあ···と深いため息が下げた頭の向こうで聞こえた。



「罪を裁く······俺と師匠に断罪されて、罰を受けたいと?」

「はい」

「罰を受けたらお前はどうするんだ?」

「······内容にもよります。死ねと言うならあなた方の迷惑にならないように死にますし、殺したいのであればこのまま受け入れます。他の罰であるなら、受けた後に········迷惑を掛けないようこの家を出ます。絶縁してください」


「············」

「············」


 2人とも何も言わなかった。沈黙に耐えかねて、顔をあげて2人を見ると、2人とも私の事をじっと見ていた。


「··············?」


 何故何も言わないのだろう。私の罪が重すぎて、罰を考えるのも大変になのだろうか。


「ぷっ········」

「フフ········」


 ハインリヒ様とアレクシス様は突然、押さえるように笑いだした。気がつくと2人とも声を出し、クスクスと笑っている。


「え·········あの·········」

「そう言ってくると思ったよ、ティアナ。予想通りだ」


 アレクシス様は口元に手をあて、クスクスと笑い続けた。


「バカだな本当に。そんなことを腹に溜め込んで、ずっと一人で泣いていたのか」

「ハインリヒ様?」

「知ってたよ」

「········え?」


「知ったのは最近だけどな。で?お前は俺達が与えた罰は何でも受け入れるんだな?」


「勿論です」


「成る程······。じゃあ俺が裁いてやるよ。当代の『審判の魔術師』だからな」


 ハインリヒ様が椅子を立ち、私の前に来ると頭をガッと大きな手で掴みギリギリと締め上げる。


「いだだだだだた!!!」


 これが罰?!最近やられていなかったからやたら痛い。


 パッと手を話すと涙目の私の肩を押し椅子に座らせた。


「審判を下す。ティアナ・クルル。お前は今後転生しようが何をしようがずーっとヴァンゲンハイム家の男の妻となれ」


「··············はい?」


「聞こえなかったのか。お前は未来永劫この家の男の嫁だ。ずっと俺達から愛され続けろ。絶縁などもってのほかだ。逃げられるなんて思うなよ」


「···············は?」


「お前が『審判の魔術師』を作ったから何だと言うんだ。そんな事より、10代に渡りヴァンゲンハイム家の男達をフリ続けた罪のほうがよっぽど重いぞ」


 頭が酷く混乱した。

 ハインリヒ様は何を言っているのだろうか。


「いや······でも」

「何でも受け入れるんだろ?そう言ったよな?」

「言いましたけど、でも」

「じゃあ受け入れろ。罰だからな、反論はさせない」

「で、でも········」


 知ってた?私の罪を知っていたのに、何も言わなかったの?責められても、殴られても当然なのに。


「······ティアナ、君は以前私達に問うたね?『贄の魔女』に責任や後ろめたさを感じているのかと」


 アレクシス様は困惑したままの私に、静かに言った。


「感じているに決まっているだろう。惚れた女に仕事の片棒担がせて、止めることも出来ずに延々と続けさせて、後悔しない男がいるとでも?」


「アレクシス様········」


「挙げ句の果てに、寿命を全うさせることも出来ずに君を失って。君がいなくなってからの19年、僕は後悔と悲しみの毎日だったよ。········エレオノーラの記憶はだいぶ戻ったのだろう?何故、何度も僕からのプロポーズを断った?」


「わ······私は、あなたに相応しくないから·····高貴な血筋のあなたに、罪人の私は相応しくないから······それに、あの時あなたよりだいぶ年上だった·······将来有望だったあなたの傍に私はいられない·······」


「転生してなお、そんな風に思ってたんだね。悲しいよエレオノーラ。ならばやはり罰は受け入れてもらおう。君は何度転生しても、我々から逃げられないように」


「······だって····こんな······」


 私が困惑したまま、動けないでいると、ハインリヒ様は机に置いてあった大きな本を10冊、私の傍にあったサイドテーブルにドサドサと置いた。


「これは図書室別室に保管してあった初代当主ニクラスの手記だよ。これで一人分だ」

「········?」

「同じものが過去の当主の人数分あるんだ。何が書かれているか、お前は目を通したことがあるか?」


 有るわけ無い。こんな百科事典みたいな厚さの本に私みたいな勉強嫌いが目を通すことなんてあり得ない。


「ぜーんぶ、お前が振り向いてくれない怨み節と、愚痴と嘆きだよ。『審判の魔術師』についての不安の吐露はあっても、それでお前を責める言葉は一つだって書かれていない」

「··········書かれていない?」

「残りの当主の手記もみんな同じだよ、ティアナ。まさかお前みたいな勉強嫌いの手記が残っているのに、勤勉なうちの一族が手記を残してないとでも思ったのか?」


「僕はまだ7冊目だけどね」


 アレクシス様がニコニコと笑いながら合いの手をいれた。


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