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まだ陽が高い中、ハインリヒ様と私は2人で書斎に居た。立ち上がり、窓の外をソワソワと見つめていると、背後からハインリヒ様がぎゅうっと抱きしめてきた。
ゆっくりと背後を伺うと、眉を下げて濡れた瞳の彼が頬を少し染めて私を見ていた。
視線を外そうと顔を背けたら、大きな手が、いとも簡単に顔を正面に向け、そのまま唇が重なった。
「ん········ダメです、ハインリヒ様····っ」
「ティアナ·······ティアナ·········」
「アレクシス様がもうすぐ来てしまいます」
「ああ、そうだな。そんなことより······もっと俺を感じてよ」
少しだけ弾んだ息のまま胸元に顔を埋めたハインリヒ様の髪が肌に触れ、少し震えるとハインリヒ様は微笑った。
「ティアナ······そんな顔して、また俺を誘ってる」
「誘ってなんか······やあ······!」
服ごと胸を揉みしだかれ、ブラウスのボタンが下まで外されて大きく開かれた胸元を何度も吸われ、普段は見えない鎖骨から下はハインリヒ様の所有印だらけになっていた。
ハインリヒ様にお願いをして、アレクシス様に王都のヴァンゲンハイム本邸に来ていただくよう連絡をとったのは一週間前のこと。
彼等に真実を告げるため、3人で合う場を儲けてもらったのだ。
「ハインリヒ様······!いい加減にしないと、本当に来ちゃいますよ!」
全力で押し退けると、不満そうにハインリヒ様は髪を掻き上げて、ため息をついた。
今日は私の断罪の日。
全てを告げる頃には、きっとハインリヒ様は私を視界に入れてくれなくなるだろう。
もし、その場で殺されても私は構わない。
ただハインリヒ様の目に、嫌悪と侮蔑が浮かぶ様を思うと胸が軋んだ。
「アレクシス様がおいでになりました」
書斎で待っていた私達に、案内されたアレクシス様が部屋に入るといつもと同じく少年のように彼は笑った。
「ティアナ。久しぶりだな。会えて本当に嬉しいよ」
視線を交わした瞬間に、今日はアレクシス様から抱きつかれた。
「アレクシス様······わざわざお越し頂いてすみません······」
「君が呼ぶなら嵐でも来るさ」
同じような台詞を、エレオノーラとして聞いたことがある。私はこんなに優しい人まで傷つけてきたのだ。
「師匠、今は俺のティアナです。勝手に触らないでください」
「心が狭いな、ハインリヒ」
べりっとアレクシス様の身体から離されると、すぐさまハインリヒ様は私を抱き締めた。
3人で円上に置かれた椅子に座ると、一人そっと立ち上がり、頭を下げた。
「お二人とも、私の我が儘でお時間を頂いてすみません。今日私がこの場を設けたのは······」
ゆっくりと顔を上げて2人の顔を見た。優しいヴァンゲンハイム家。いつの時代も、あなた達だけが私を受け入れてくれた。
「真実を告げるためです」




